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「ケラリーノ・サンドロヴィッチ自選戯曲集」発売記念!(No.005) 「2番目、或いは3番目」作品紹介

不条理劇からウェルメイド劇まで、振り幅の大きい作品群を精力的に発表し続ける現代劇の鬼才、ケラリーノ・サンドロヴィッチ。
著者初となる自選戯曲集(全2巻)では、広がりのある作品世界を一望する8作品を一挙収録します。

収録作品:
「シャープさんフラットさん 」
「2番目、或いは3番目 」
「社長吸血記」
「ちょっと、まってください」
「睾丸」
(以上[ナイロン100℃篇])

「東京月光魔曲」
「黴菌」
「陥没」
(以上[昭和三部作篇])

解説:徳永京子[ナイロン100℃篇]
   嶋田直哉[昭和三部作篇]
装幀:はらだなおこ
写真:平塚篤史

発売:6月18日
定価:4,600円+税[ナイロン100℃篇] 
   3,800円+税[昭和三部作篇]

*著者直筆サイン入りをお求めの方はこちら!
http://www.e-fanclub.com/cube/webshop/search.asp?search_kwd=%83P%83%89%83%8A%81[%83m


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発売に向けた特別企画として、早川書房のnoteでは、
自選戯曲集に収録する全8作品を、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)のコメントとともに紹介。
今回は「ナイロン100℃篇」収録の「2番目、或いは3番目」の紹介です。


◎「2番目、或いは3番目」作品紹介

男1 だって、辿り着けたわけですから私達は、この町のこの場所に。問題ないじゃないですか。
女1 あたしは辿り着けてないんじゃないかって思い始めてるの。会長さんわかりませんかそれが。
女2 ここですよ。だってひどいもの。一番とはいわないまでも、二番目か三番目にひどいんですよ可哀想に。私達の町よりずううっとひどいんです......。(「2番目、或いは3番目」)


東日本大震災がおこる前年、2010年夏に上演された一作。
舞台となるのは、「なにか」が起きて廃墟と化した世界。自分たちの町も甚大な被害を被ったにもかかわらず、3人の男と2人の女からなる救援隊は、ある町を訪問する。
そこで出会ったのは、双子の姉妹、老人とその妻の一家。
救援隊は、哀れな住民たちを救おうとするが、住民たちはたくましく現状に適応していて、救援隊の方が住民たちの厄介になる。
自分たちより恵まれていない人々を救うことで、自尊心を保とうとしていた救援隊は、想像と異なる展開に戸惑いを隠せない。
それでも救援隊は、一ヶ月の間、この町のために働くことになり……
別役実の不条理、デヴィット・リンチの不穏さ、小津安二郎のアンチドラマを組み合わせた、不条理劇の極北。


◎ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント
(本書収録「あとがき」より)

東日本大震災の前年に、被災した街を訪れる者たちの物語を書いたのは、(好ましくないことなれど)我ながら予見的だった。彼らと街の人々の有り様が描かれる。街の人々を救済しようという態度をとる訪問者たちだが、彼ら彼女らの故郷は、実はもっとずっと甚大な、壊滅的といえる被害に遭っているのだ。しかし彼ら彼女らはその事実を直視しようとしない──。シニカルな不条理劇を狙ったのだと思う。台本の脱稿が、自分史上最も遅かった作品で、すでに劇場入りしているキャスト、スタッフにラストシーンを届け、深夜に稽古した。たしか初日の二日前だ。いつものこととは言え、多くの仲間にひときわ迷惑をかけ、まったく自業自得ながら、苦い思い出に彩られた作品である。一方で難産ゆえの愛着もある。今回、この戯曲を活字で公にできたのは大きな歓びである。

いよいよ戯曲集発売まであと3日! 明日は、「社長吸血記」を紹介します。


◎バックナンバー


◎著者略歴
ケラリーノ・サンドロヴィッチ
劇作家、 演出家、 映画監督、 音楽家。1963年1月3日生まれ。82年、 ニューウェイヴバンド「有頂天」を結成。またインディーズ・レー ベル「ナゴムレコード」を立ち上げ、70を超えるレコード・CDを プロデュースする。85年、「劇団健康」 を旗揚げ、 演劇活動を開 始。92年解散、93年に「ナイロン100°C」を始動。99年、『フロー ズン・ ビーチ』 で第43回岸田國士戯曲賞を受賞し、 現在同賞の選 考委員を務める。2018年秋の紫綬褒章を始め、 第66回芸術選奨文 部科学大臣賞、 第24回読売演劇大賞最優秀演出家賞、 第26回読売 演劇大賞最優秀作品賞(ナイロン100°C『百年の秘密』)、 第4回ハ ヤカワ「悲劇喜劇」 賞(世田谷パブリックシアター+KERA・ M A P # 0 0 7 『 キ ネ マ と 恋 人 』) な ど 受 賞 多 数 。 音 楽 家 と し て は 、 ソ ロ活動の他、「有頂天」(2014年再結成)、鈴木慶一とのユニット 「No Lie-Sense」、ケラ&ザ・シンセサイザーズなどで、ライブや 新譜リリースを活発に展開中。

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