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小学3,4年生におすすめ、幼年童話から小説へのステップアップに最適『見つけ隊と燃える小屋のなぞ』【試し読み】

早川書房の小中学生向けレーベル〈ハヤカワ・ジュニア・ミステリ〉。
古今東西の優れたミステリをお届けする本レーベルの最新作をご紹介します。

その名も、〈五人と一匹見つけ隊〉『見つけ隊と燃える小屋のなぞ』。
20世紀を代表する英国の児童書作家イーニッド・ブライトンによる名作です。

今回は、4月14日(水)の発売に先駆け、第一章と第二章を公開します。

見つけ隊と燃える小屋のなぞ

イーニッド・ブライトン 著/河合祥一郎  訳/旭ハジメ 絵

◆本書の特徴

『見つけ隊と燃える小屋のなぞ』は、小学校3,4年生からたのしめる、初心者向けのミステリです。
今回の試し読みではルビ(ふりがな)は省略していますが、紙の書籍はすべての漢字にルビ付きです。文字組もゆったりしています。

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あらすじやその他のおすすめポイントはこちらの記事をご覧ください。


◆第一章 小屋が燃えている!

あのわくわくする大冒険がはじまったのは、ある四月の暗い夜九時半に起きた事件からだった。
ピーターズウッドの村は、どこかで犬がほえているほかは完ぺきにしーんとしていた。ところが、ふいに村の西のほうで、大きな光がパッとあがったのだ。

ラリー・デイキンは、ちょうどベッドに入ろうとしていたとき、それを目にした。窓からさしこむ朝日で目がさめるようにとカーテンをあけておいたので、西のほうが急に明るくなるのが見えたのだ。
「うわ! なんだ、あれ!」
ラリーは、妹に声をかけた。「デイジー! おい、ここにきて見てみろよ。村のどこかで、おかしな炎があがってるぞ。」
妹がパジャマで寝室に入ってきて、窓から外を見た。
「火事だわ! かなり大きそうね? なんだろう。だれかのおうちが燃えてるのかしら?」
「見に行ってみようぜ。」ラリーが興奮して言った。「また服に着がえちゃおうよ。ママとパパはいそがしくしてるから、火事には気づかないよ。さあ、急げ。」

ラリーとデイジーは急いで着がえて、階段をかけおり、暗い庭へ出た。通りに飛び出し、近所のある家の前を通りかかると、だれかが玄関前へかけだしてくる足音が聞こえた。
「きっとピップだぜ。」
ラリーはそう言って、懐中電灯でその家の前の私道を照らした。光の輪に照らし出されたのは同い年くらいの少年で、そばに八歳ぐらいの少女がいた。

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「まあ、ベッツちゃん! あなたもきたの? もうとっくに寝てると思ったのに。」おどろいたデイジーが声をかけた。
「ラリー!」ピップと呼ばれた子が大声を出した。「火事だろ? だれの家が燃えてるんだと思う? 消防隊を呼ぶのかな?」
「となり町からはるばる消防隊がやってくるころには、燃えつきてるさ。」ラリーは答えた。「行ってみよう――どうやら、ヘイコック通りみたいだぜ。」
みんな、いっしょにかけだした。火の手があがるのを見た村人が何人か、やはり通りを走っている。ちょっとしたさわぎだ。
「ヒックさんのところだ。まちがいなく、あの人ん家だ」と、男の人が言った。
通りのはしに着いてみると、火の手はますます大きく、明るくなっている。
「家じゃない!」ラリーがさけんだ。「ヒックさんが仕事をする庭の小屋が燃えてるんだ。仕事場だ。うへえ、こいつは全焼しちまうな!」
そのとおりだった。むかしふうの、ハーフ・ティンバー〔木造の枠が外壁に見えている様式〕のわらぶきの小屋で、かわいた屋根のわらが勢いよく燃えている。

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グーン巡査という、村のおまわりさんがそこにいて、火にバケツで水をかけるよう指示を出していた。おまわりさんは、子どもたちを見ると、どなりつけた。
「どいてろ、おい、君たち! どいてろ!」
「いつだって、あのおまわりさんは、子どもにああ言うね。」おさないベッツが言った。「ほかになにか言うのを聞いたことないよ。」
バケツで水をかけても、火はびくともしない。おまわりさんは、この家のお抱え運転手を大声で呼んだ。
「トーマスさんはどこだ? 車を洗うのに使うホースを出すようにたのんでくれ。」
「トーマスさんは、だんなさまをおむかえに出ております。」女の人が大声で答えた。「だんなさまがロンドンから列車でお帰りなので、駅までおむかえに行ったんです!」
そう言っているのは、この家の料理係のミンズおばさんだった。ゆったりした感じの人だったが、今はひどくおびえている。水道からバケツに何杯もの水をくんで、両手がふるえていた。

「だめだな」と、村人が言った。「この火はもう消せないぜ。手に負えないほど、はげしくなっちまった。」
「だれかが消防隊に電話したけど、到着するころには、ぜんぶ燃えつきてるな。」別の人が言った。
「まあ、家には燃えうつらんだろう。」おまわりさんが言った。「さいわい、風は逆むきだからな。いやはやまったく、ヒックさんが帰ってきたら、どんなにびっくりなさるだろう。」

四人の子どもたちは、わくわくしながら見守っていた。
「あんなにすてきな小屋が燃えちまうなんて、ひどい話だな。」ラリーが言った。「なんかお手伝いをさせてもらえたら、いいのになあ――水をかけるとか、さ。」
ラリーと同じぐらいの背かっこうの男の子がバケツを持ってかけより、火にむかって水をかけようとしたが、ねらいがはずれて、ラリーにも水がかかってしまった。ラリーは、その子にどなった。
「おい! こっちにもかかったぞ! 気をつけてくれよ、たのむから!」
「ごめんよ、悪かった」と、その子は言った。火がパッと燃えあがって、庭全体がよく見えた。身なりのいい子で、なんだか得意そうにしていた。

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「むかいのホテルに、両親といっしょに泊まりにきてる子だよ。」ピップがラリーに耳打ちした。「しょうもないやつさ。なんでも知ってるつもりで、おこづかいがありあまってて、どう使っていいかもわかんないのさ!」
おまわりさんは、バケツを持ったその子に気づいて、どなった。
「おい、君! どいてろ! 小さい子どもがうろちょろするんじゃない。」
「ぼくは小さい子どもじゃありません。手伝ってるのがわからないんですか。」その子は怒って言った。
「どいてろったら!」グーン巡査はくり返した。
ふいに、犬が現れて、おまわりさんの足もとをぐるぐるまわって、ワンワンとほえたてた。おまわりさんは、めいわくがって、怒ってしまい、犬にむかって足をけりあげた。
「君の犬か? こいつをつれてけ!」
男の子はそれを無視して、また水をくみに行った。犬はグーン巡査のズボンのすその内側のくるぶしあたりにまとわりついて、楽しそうにしていた。
「どいてろ!」おまわりさんがまた、けりあげたので、ラリーたちはくすくす笑った。犬はかわいい小さな黒いスコティッシュ・テリアで、短い脚をしているのに、ちょこまか、すばしこいのだ。
「あの子の犬だ。」ピップが言った。「すてきな犬だ。あんなのが飼えたら、ぜったい楽しいよ。ぼくの犬だったらいいのになあ。」
わらぶきの屋根の一部が焼け落ちて、火粉がたくさんパッと宙に舞った。燃えるにおいとけむりがひどくて、息がつまりそうだった。子どもたちは少しうしろへ下がった。

通りで車の音がした。だれかがさけんでいる。
「ヒックさんが帰ってきた!」
車は、家の前の私道にとまった。男の人がおりてきて、燃えている小屋が建っている庭へ走ってきた。
「ヒックさん、残念ながら、お宅の仕事場はほぼ全焼です。」おまわりさんが言った。「全力で消火に当たったのですが、あまりに勢いが強くて手に負えませんでした。出火の原因に心当たりはありませんか?」
「私にわかるわけないだろう?」ヒックさんは、いらいらと言った。「今、ロンドンから列車でもどったばかりなんだから。なぜ消防隊を呼ばんのだ?」
「まあ、消防隊は、となり町ですからね。」グーン巡査は言った。「火事に気づいたときには、火はすでに屋根をつきやぶって燃えてたんですよ。今朝は、だんろに火を入れたかどうか、ご存じだったりしますか?」
「ええ、火を入れましたよ」と、ヒックさん。「今朝早く、ここで仕事をしてましたからね。一晩じゅう、だんろはつけてました。まきを燃してたんです。私が出たあと、火花が飛んで、なにかに燃えうつったんでしょうな。午後じゅうずっと、だれにも気づかれずにくすぶっていたのかもしれん。うちの料理係のミセズ・ミンズは、どこでしょう?」
「ここにおります」と、かわいそうに、ふるえているミンズおばさんが言った。「ああ、だんなさま、ひどいことになりました! あのお仕事場の小屋へは近づかないように言われておりましたので、なかを見なかったんです。見ていれば、火事に気づいたと思うんですが。」
「ドアには鍵がかかっていました。」おまわりさんは言った。「火がすっかりまわる前に、本官が自分でたしかめました。おっと――小屋が、すっかり燃えつきますよ!」
小屋の壁がたおれるメリメリという音がした。火が高くあがり、だれもがあとずさりした。ものすごい熱気だったのだ。
それから、ヒックさんは急に大あわてをしはじめた。おまわりさんの腕をつかんで、はげしくゆさぶりだしたのだ。
「書類が!」ふるえる声だ。「大切な古い書類が! あそこにあったのに! 取り出してくれ、取り出して!」
「どうか、むちゃを言わんでください。」グーン巡査は、すぐ近くでメラメラと燃えている火を見つめながら言った。「もはやなにも救い出せません。最初からむりだったんです。」

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「私の書類が!」ヒックさんは、そうさけぶと、まるで火のなかにさがしに行こうとするかのように、燃えさかる小屋へむかって突進しようとして、二、三人に引き止められた。
「どうか、たのむから、ばかなことをせんでください。」おまわりさんが心配して言った。「そんなに大事な書類だったんですか?」
「取り返しがつかない!」ヒックさんは、うめいた。「私にとっては、何千ポンドもの価値があるんだ!」
「保険に入っていたんでしょうね」と、近くの男が言った。ヒックさんは目をらんらんとさせて、その人をふり返った。
「ええ――入っていましたよ――でも、金では取り返しがつかないんだ!」
おさないベッツは保険がなんなのか知らなかったので、ラリーがさっと教えてやった。
「なにか大切なものがぬすまれたり燃えたりするといけないから、保険会社に毎年少しずつお金をはらっておくんだ――で、もしその品物がなくなったら、会社がその大切な品物の全額をしはらってくれるんだよ。」
「そうなんだ」と、ベッツは言って、ヒックさんをじっと見つめた。かなりとりみだしているようだった。おかしなおじさんだな、と、ベッツは思った。
背が高くて、背が曲がっていて、前髪がつき出ていた。鼻は長く、目は大きなめがねのおくにかくれている。ベッツは、あまり好きになれなかった。

「あの人たちを、下がらせてください。」ヒックさんは、村人たちや子どもたちを見ながら言った。「うちの庭を一晩じゅう、ふみあらされるのは、かなわない。もうだれにも、どうすることもできないんだから。」
「わかりました。」グーン巡査は、こんなにも大勢の人にいっぺんに「どいてろ」と命じてよいことをよろこんで、野次馬たちにむかって歩きはじめた。
「どいてろ。もうなにもすることはない。そこの子どもたち、どきなさい。みなさん、帰ってください。」
小屋の炎は下火になっていた。もうすぐ燃えつきて、それで終わりになるだろう。興奮がおさまると、子どもたちは急にねむたくなってきた。目がけむりでチクチクする。
「ちぇ! 服がけむりくさいや。」ラリーが、うんざりして言った。「さ、行こう――うちに帰ろう。ママとパパがぼくらをさがしてるかもしれない。」

ラリーとデイジーは、ピップとベッツといっしょに、帰り道を歩いた。うしろから、犬をつれた男の子が口笛を吹きながらやってきて、追いついた。
「なかなかスリル満点だったじゃないか?」その子は言った。「けが人が出なくてよかったよ。ねえ、明日また会って、ゲームとかして遊ばないか? ぼく、ヒックさんの庭のむかいのホテルにいて、ひとりぼっちなんだ――おかあさんとおとうさんは、一日じゅうゴルフに出かけてるから。」
「ええっと――」ラリーは、その子の外見があまり好きになれずに言った。「まあ――どっかで遊んでたら、君をさそうよ。」
「わかった。」男の子は犬に呼びかけた。「おいで、バスター。うちに帰るぞ!」
子どもたちの足のあいだをぐるぐるまわっていた小さなスコッティ〔スコティッシュ・テリアの愛称〕は、男の子のもとへかけより、その子といっしょに暗やみのなかへ消えていった。
「なんだか気どってる子ね!」デイジーが、その子のことをそう言った。「あたしたちが、あんな子と友だちになりたいとでも思ってるのかしら? ねえ、明日は、あんたの家の前で会うことにしない、ピップ? それで、小屋の焼けあとを見に行こうよ、ね?」
「わかった。」ピップは、ベッツといっしょに家の前の私道に入りながら言った。「おいで、ベッツ。おまえ、ねむくてたまらないんだろ!」
ラリーとデイジーは、自分たちの家へつづく道を歩いた。ふたりは、あくびをした。
「かわいそうなヒックさん!」デイジーは言った。「大事な古い書類をなくして、ひどくあたふたしてたわね!」


◆第二章 見つけ隊――五人と一匹

あくる日、ラリーとデイジーは、ピップとベッツがいないかなと思って外へ遊びに出てきて、ふたりが庭で遊んでいるのが聞こえたので、大声で呼んだ。
「ピップ! ベッツちゃん! きたわよ!」
ピップが外へ出てきて、ずっと小さなベッツが、そのあとから息を切らしてやってきた。
「焼けた小屋、今朝見に行った?」ラリーがたずねた。
「うん。でさ、どう思うよ――わざと火をつけたやつがいるんじゃないかって話だよ――事故じゃなかったって!」ピップが興奮して言った。
「わざとだって!」ラリーとデイジーは、びっくりした。「でも、そんなこと、だれがするかな?」
「わかんない。」ピップは言った。「だれかがそう話しているのが聞こえてきたんだ。保険会社の人たちがもう調べにきてて、その人たちがつれてきた火事の専門家が、火をつけるのにガソリンが使われたって言ったんだ。そういうのって、調べるとわかるらしいよ。」
「すごいな!」ラリーが言った。「だけど、だれがやったんだ? ヒックさんがきらいな人ってことだよね?」
「そうさ。」ピップが言った。「あの《どいてろ》のおまわりさんは、本物の犯罪を捜査することになって、興奮してるだろうね。だけど、あいつには、なんもに見つけられないさ!」

「ねえ――また、あの犬だよ」と、ベッツが指さしたのは、庭に入りこんできたあの小さな黒いスコッティだった。その短い脚でどっしりと立って、耳をそばだて、「ぼくがここにいたら、だめ?」というふうにみんなを見上げた。
「やあ、バスター!」ラリーがしゃがんで、自分のひざをパンパンとたたいて、犬を呼びよせた。「いい子だ。うちの犬だったらいいのになあ。うちじゃ、犬を飼ったことがないんだ。」
「うちだって、ないよ。」ピップが言った。「ほら、バスター! 骨がほしいか、バスター? ビスケットがいいか、バスター?」
「ワン。」バスターは、小さな犬にしてはおどろくほど低い声でほえた。
「骨とビスケットの両方をあげなきゃね。」ベッツが言った。「お兄ちゃんを信頼して、なついちゃったよ。おうちに入って、取ってきてあげなよ。」
ピップが家へ入ると、小さなスコッティは、すっかりなついて、ピップのそばをトコトコとついていった。
やがて、もどってくると、スコッティは骨と大きなビスケットをくわえていた。それらを地面に置いて「食べてもいいのかな」というふうにピップを見ている。
「そうだ。おまえにやったんだよ、バスター。」ピップが言った。「こいつは、おあずけができるんだなあ。お食べって言うまで、食べないで待ってるよ!」
バスターは食べていいと言われると、骨をバリバリとかみ、ビスケットをのみこんだ。おいしそうに食べ終わると、子どもたちのまわりをかけまわりはじめ、あとをついてこいというしぐさをした。すてきな小犬だとみんな思った。
「こいつの飼い主があのまぬけやろうだなんて、かわいそうだな。」ラリーがそう言うと、みんな、くすくす笑った。みんなが笑っていると、足音が聞こえて、バスターの飼い主がやってきた。

「やあ。君たちがバスターと遊んでいるのが聞こえたんだ。バスター、なんだって、あんなふうに走っていっちゃったんだ! さあ、ここにおいで!」
バスターはよろこんで、飼い主のところへ飛んでいった。飼い主の男の子のことが大好きなのがよくわかった。
「ねえ、聞いた?」その子は、バスターをなでながら言った。「あの仕事場にだれかがわざと火をつけたって話?」
「うん」と、ラリーが答えた。「ピップが教えてくれた。本当かな?」
「もちろんさ! 実のところ、ぼくは最初からそうじゃないかって、うたがってたんだ。」
「ぬかしてやがらぁ!」ラリーは、相手の声の気どった調子から、本当はそんなことをうたがったことはないとわかって言った。すると、その子は言った。
「いいかい。ぼくはヒックさんの庭のむかいのホテルに泊まってるんだ――そして、ゆうべ、ホームレスがそこをうろついているのを見たんだ! あいつがやったにちがいないよ!」
ほかのみんなは、その子をじっと見つめた。
「なんだって、その人がそんなことをする?」ついにピップがたずねた。「ホームレスの人は、ただいたずらで、人ん家,ちに入ってガソリンをかけて火をつけたりしないよ。」
「えっと」と、その子はいっしょけんめい考えながら言った。「そのホームレスは、ヒックさんにうらみがあったのかもしれない。わからないだろ。ヒックさんがやさしい人だという評判はこのあたりじゃ聞かないからね。年寄りのホームレスを家からけっとばして追い出すとか、したのかもしれないよ、まさにあの日の朝にさ!」
ほかのみんなは、どうかなあと考えてみた。
「サマーハウスへ行って、話そうよ。」ピップが興奮して言った。サマーハウスというのは、庭に作られた小屋のことだ。「こいつは事件だ。ぼくらに解決できたら、すごいと思わないか?」

バスターとその飼い主の子も、呼ばれもしないのに、サマーハウスへやってきた。バスターがラリーのひざにかけあがってきたので、ラリーはうれしそうだった。
「ホームレスを見たのは何時ごろ?」ピップがその子にたずねた。
「六時ごろ。きたないおじいさんで、ぼろぼろのレインコートを着て、すごく古いぼうしをかぶってた。生け垣にそって、こそこそ歩いてた。バスターが見つけて、ほえたてたんだ。」
「手にガソリンの缶とか、持ってなかったか?」ラリーがたずねた。
「持ってなかった。なんか棒みたいなのを持ってただけ。」
「ねえ!」デイジーがふいに言った。「ねえ! 思いついちゃった!」
みんなはデイジーを見た。デイジーは思いつくのが得意な子で、たいていすごいことを思いつくのだ。

「今度は、なんだい?」ラリーがたずねた。
「あたしたちが、探偵になるのよ!」と、デイジーは言った。「だれが小屋を燃やしたのか見つけるの。」
「たんていって、なあに?」八歳のベッツがたずねた。
「なぞを解決する人のことだよ。」ラリーが説明した。「犯人を見つける人だ。」
「へえ、見つける人?」と、ベッツは言った。「あたし、見つけたい。あたし、いい《見つけ隊》の隊員になるよ。」
「いや、おまえは小さすぎるよ。」ピップがそう言ったので、ベッツは泣きそうになった。
「おれたち三人なら、ちゃんとした探偵になれるね。」ラリーは、目をきらきらさせながら言った。「ピップと、デイジーと、おれ――三人の名探偵だ!」
「ぼくも、まぜてよ。」例の子が、さっそく言った。「ぼく、頭いいよ。」
ほかのみんなは、どうかなあという顔でその子を見た。あんまり頭がよさそうな顔をしていなかったのだ。
「君のこと、あんまりよく知らないし。」ラリーが言った。
「ぼくの名前は、フレデリック・アルジェノン・トロットヴィルだよ。君たちは?」
「おれは、ローレンス・デイキン、十三歳だ。」そう言ったのは、ラリーと呼ばれている子だ。ラリーというのはローレンスの愛称なのだ。
「あたしは、マーガレット・デイキン。十二歳よ。」そう言ったのは、マーガレットの愛称デイジーで呼ばれているラリーの妹だ。
「ぼくは、フィリップ・ヒルトン。十二歳。こっちは、エリザベス。ぼくの妹。」そう言ったのは、フィリップをちぢめてピップと呼ばれている子だ。妹のエリザベスの愛称のひとつがベッティ、さらに略してベッツだ。
男の子は、四人をじっと見つめた。
「みんな、名前どおりに呼ばないんだね。ローレンスはラリーって呼ばれてて、フィリップはピップで、マーガレットはデイジーで、エリザベスはベッツなんだね。ぼくは、いつもフレデリックって呼ばれているよ。」
どういうわけか、そんなのはおかしいと四人には思えた。この子に、フレデリック・アルジェノン・トロットヴィルなんて名前はふさわしくないように思えたのだ。
「フレデリックのF、アルジェノンのA、トロットヴィルのTだ。」ふいにピップがにやりと笑って言った。「F、A、T――ファットだ。こりゃ、あだなになるぞ!」

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フレデリック・アルジェノン・トロットヴィルは、最初かなりムッとしたが、やがて、にやりと笑った。
「あんたの両親は、頭文字がFAT〔「太っている」の意味〕になるような名前をあんたにつけたりしちゃいけなかったのよ。」デイジーが言った。「かわいそうなファティ!」
フレデリック・アルジェノンは、ため息をついた。これから自分が「ファティ」と呼ばれることになるとわかったからだ。フレデリックは、この四人の新しい友だちをじっと見つめた。
「ぼくも、探偵クラブにくわわっていい? ホームレスのこと教えてあげたの、ぼくだし。」
「クラブなんかじゃないよ。」ラリーが言った。「ただ三人集まって、なぞを解こうってだけのことだ。」
「あたしも入れて!」ベッツが大声を出した。「ねえ、あたしも入れてよ! 仲間はずれなんて、ずるいよ!」
「入れてやれよ」と、ファティが意外にも言った。「小さいけど、役に立つかもしれない。それに、バスターも仲間にするといいと思う。かくされたものをさがしだすのが、すごくじょうずだぜ。」
「かくされたものって?」ラリーがたずねた。
「わかんないけど」と、ファティはあいまいに答えた。「なぞを解くときは、なにを発見することになるか、わかんないもんさ。」
「ねえ、みんなでやろうよ。ファティもバスターもいっしょに。おねがい!」ベッツがさけんだ。バスターは興奮して、小さな黒い前足でラリーをひっかいて、クーンと鳴いた。
三人は、バスターが入ってくれるなら、ファティも入れてもいいという気になった。バスターのためなら、うぬぼれやのファティを入れてもいいと思ったのだ。バスターは警察犬のように活躍してくれるかもしれない。あらゆるなぞを解く本物の探偵には、犯人を追跡する犬がいなきゃだめだ。
「じゃあ」と、ラリーが言った。「みんな、入れてやる。みんなで焼けた小屋のなぞを解くんだ。」
「《見つけ隊》五人と犬一匹だね」と、ベッツが言った。みんな笑った。
「ばかげた名前だな!」と、ラリーが言った。
それでも、その名前はのこった。そして、春休みのあいだじゅう、そしてそのあともずっと、《見つけ隊》と呼ぶことになった。

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「ぼく、警察と探偵のことはなんでも知ってるから、ぼくが隊長だ。」ファティが言った。
「ばか言うなよ」と、ラリーが言った。「おれたちだって、おまえぐらいには、いろいろ知ってるよ。それに、おまえ、自分のことをずいぶんえらそうに言ってるの、おれたちが気づいてないと思うなよ! おまえのほら話の半分も、おれたちは信じちゃいないってことを、きもにめいじるんだな! 隊長ってことで言えば――おれがなる。おれがいつもリーダーだ。」
「そうだ。」ピップが言った。「ラリーは頭がいい。勇ましき見つけ隊の隊長はラリーだ。」
「わかったよ。」ファティは、しぶしぶ言った。「四対一じゃ、かなわないや。おっと――今の、十二時半の鐘かな。十二時半だ。ぼく、帰らなきゃ。」
「今日の午後二時きっかりに、ここで会おう。」ラリーが言った。「そして、手がかりを見つける相談をする。」
「手がっかり?」ベッツは、そのことばを聞きそこねて言った。「なんか楽しいね。手ががっかりすると、手がだらーんってなるの?」
「ばかだな。」ピップが笑った。「おまえなんかが見つけ隊にいてなんの役に立つのか、さっぱりわからないなあ!」

続きは書籍版でお楽しみください。
『見つけ隊と燃える小屋のなぞ』は、4月14日発売です。

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