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【序文公開】編者・大森望氏が『2010年代SF傑作選1』の読みどころを語る!

 今月発売された国内短篇SFアンソロジー『2010年代SF傑作選』1・2。もうお手にとっていただけましたでしょうか? 気になるけど、SFはあまり読んでいない……という方に耳より情報! 本書の読みどころを編者の大森望氏が解説している序文を公開いたします。

 二〇二〇年というと、なんだか近未来もたけなわというか、空気がめっきり未来めいて、となりは何をする人ぞ的な気分になりますが(一九六一年生まれの個人の感想です)、それはそれとして、この十年、日本ではいったいどんなSF短篇が書かれてきたか。二〇二〇年代を迎えたこの機に、文庫本二冊でざっくり振り返り、一〇年代日本SFの精髄をお目にかけようというのが、本書を含む『2010年代SF傑作選』全二巻の趣旨。SFの場合、令和が始まったからといって平成SFを総括しようという気分にはなかなかなりませんが、西暦で二〇一〇年代が終わったとなると、なんだか急にまとめたくなるのが不思議なところ。やっぱり欧米生まれのジャンルってことでしょうか。まあ、歴史の見通しをよくする意味でも、十年単位でまとめておくことはそれなりに便利なはず。十年分のベストアルバムとして、また"いまの日本SF"のショーケースとして、長くお手元に置いてご参照いただければさいわいです。
 十年前、本書と同じハヤカワ文庫JAからは、早川書房編集部編『ゼロ年代SF傑作選』が刊行されてますが、同書を既読の方はご承知のとおり、あちらはゼロ年代日本SFの一潮流である"リアル・フィクション"系列の傑作選。SFマガジン掲載作を中心に書籍未収録作を集めた新鋭アンソロジーという性格が強かった。対するこちらは、個人短篇集に収録されているかどうかに関係なく、一〇年代SFを代表する(と編者たちが判断する)作品を可能なかぎり網羅することを心がけた。その意味では、創元SF文庫『ゼロ年代日本SFベスト集成』全二巻(大森望編)の流れを汲んでいる。したがって、というわけでもありませんが、こちらには、既刊短篇集の表題作が多く入っている。『1』では小川一水「アリスマ王の愛した魔物」、仁木稔「ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち」、円城塔「文字渦」、『2』では宮内悠介「スペース金融道」、三方行成「流れよわが涙、と孔明は言った」、高山羽根子「うどん キツネつきの」という具合。
 必然的に、SF愛好者諸氏にとっては既読作が多くなるわけですが、ベスト・オブ・ザ・ベストを選ぶというコンセプトをなにとぞご理解のうえ、"なんだよ、読んでるのばっかりじゃないか"とブツブツ文句を言いながらお買い求めください。
 他方、ふだんあんまり日本SFの短篇を読まない人や、最近になって日本SFを"発見"した読者には、現在の日本SFの水準を知るための格好のガイドブックになるはず。この二冊に収められた短篇を手がかりに新しい贔屓作家を発見し、その作家の短篇集や長篇を手にとっていただければ、編者としてこれにまさる喜びはありません。
 さて、この『2010年代SF傑作選』は、ごらんのとおり、全二十篇を二冊に分けて収録している。二冊セットで通読していただくと、この十年の日本SFの動向が(たぶん)手にとるように実感できる仕組みですが、『1』と『2』は、それぞれ独立したアンソロジーとして読めるように作品を配置したつもりなので、どちらを先に読んでいただいても、あるいはどちらか片方だけ読んでいただいても一向にかまいません。
 二冊がどんなふうに分かれているかというと、収録作家の顔ぶれを見ればなんとなくわかるとおり、ざっくり『1』がベテラン篇、『2』が新鋭篇。もっと具体的に言えば、『2』には、二〇〇九年十一月以降に商業デビューした作家(二〇一〇年代になって短篇を発表しはじめた作家)の作品が収められている。一方、本書の陣容は、SF作家歴四十年を超えた神林長平を筆頭に、"日本SF冬の時代"をくぐり抜けてきた飛浩隆、田中啓文、北野勇作のベテラン組と、少女小説/ライトノベル・レーベルから出発した津原泰水(津原やすみ)、小川一水(河出智紀)、長谷敏司の三人、それに小松左京賞出身の上田早夕里、早川書房デビューの仁木稔と円城塔──となる。日本SFの世代で言うと、第三世代~第五世代ですね。
 ともあれ、以下の作品が、十年に一度しか出ないアンソロジーの半分にあたる十篇。じっくりとご賞味ください。  
                           大森 望 (『2010年代SF傑作選1』序文より) 

2010年代SF傑作選1_帯

『2010年代SF傑作選1』

2010年代SF傑作選2_帯

『2010年代SF傑作選2』

収録作家・収録作品についてはこちらの記事をご覧ください。


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