【予約締切5/31!】『アート・アンド・ソウル・オブ・ブレードランナー2049』に、ヴィルヌーヴ監督が寄せた「序文」を全文公開!
映画「ブレードランナー2049」の公式大判ビジュアルブック、『アート・アンド・ソウル・オブ・ブレードランナー2049』。著者でカナダ放送協会の現場レポーターであるタニア・ラポイントの「人生のパートナー」でもあるヴィルヌーヴ監督が本書に寄せた「序文」を全文公開!
本作のオファーを受けたヴィルヌーヴ監督が、どのような意気込みでブレードランナー世界の拡張に挑んだのか、その決意と方針が簡潔にまとめられている、ファン必読の文章である。
【予約締切5/31】『アート・アンド・ソウル・オブ・ブレードランナー2049』はどんな本なのか? その特濃な収録内容を紹介!
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『アート・アンド・ソウル・オブ・ブレードランナー2049』序文
(中原尚哉訳)
“私は夢想家のチームを組み、過去の夢の未来をつくりはじめた”
—ドゥニ・ヴィルヌーヴ(『ブレードランナー2049』監督)
史上最高に影響力のあるSF映画の一つの続篇をつくるなんて、さすがに大それた行為だと思った。その思いになんとか折りあいをつけると、今度は問題に直面した。
リドリー・スコットのオリジナルの『ブレードランナー』は2019年に設定されている。そのパンクでディストピアな未来は、1970年代後半のポップカルチャーに触発されたものだ。『ブレードランナー2049』の最大の困難の一つは、この有名な世界をどのように進化させ、独自のオルタナティブ宇宙を形成するかだ。オリジナルの『ブレードランナー』にスティーブ・ジョブズはいない。ソ連はまだ世界の半分を支配している。その理屈にしばらく悩んだ。この宇宙になにを取りこみ、なにを排除すべきか。
ニューヨークへ行って、初代の脚本家であるハンプトン・ファンチャーとコーヒーを飲んだ。アールデコ調のホテルのロビーで彼はこの映画の鍵について話してくれた。そしてこう言った。「いいかい、あまり重荷に感じることはないんだ。初代の映画は夢だ。私たちは大きな夢を描いただけだ。きみもおなじことをすればいい。理屈を考えすぎずに」
そこで私は夢想家のチームを組み、過去の夢の未来をつくりはじめた。スティーブ・ジョブズはおらず、ソ連がまだある未来を想像してほしいと依頼した。そういう『ブレードランナー』の世界を、冬のカナダの銀色の光のなかでつくってもらいたい。
2015年夏にコンセプト・アーティストの偵察隊が『ブレードランナー』世界の上空を飛び、ビジュアル探索を始めた。率いたのはデザイナーのアーロン・ヘイだ。彼らは夢想家の第一陣で、その仕事の一部はいまも映画のなかで生きている。
その年の秋、モントリオールのホテルの一室に、撮影監督のロジャー・ディーキンスとストーリーボード・アーティストのサム・ハデッキとダリル・ヘンリーを集めて、映画の基礎になるものを描きはじめた。プロダクション・デザイナーのデニス・ガスナーが2015年暮れにチームに加わり、これで出発の準備が整った。ブダペストを遊び場に選んで、最高の人々を集め、夢を現実にしていった。
私にとって映画の一番の素晴らしさは、共同作業の詩作であるところだ。少数精鋭のアーティストたちが暗闇のなかで働き、幻影と感情をつくりだす。そして人間の条件の影と美を探求する。タニヤ・ラポイント記者はその製作プロセス全体を追いかけた。私の人生のパートナーであり、この映画の協力者である彼女は、この映画製作を最前列で見る立場にあった。この本を読者に届けられることをうれしく思う。
では、ようこそ2049年へ!