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【3/18発売】マッカーシー文学の集大成──『ザ・ロード』の巨匠最後の二部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』(黒原敏行訳)

ピュリッツァー賞を受賞した『ザ・ロード』、『すべての美しい馬』に始まる〈国境三部作〉、アカデミー賞四冠のコーエン兄弟監督映画「ノーカントリー」の原作者で現代アメリカ文学を代表する作家として知られ、惜しくも2023年にこの世を去った小説家コーマック・マッカーシー。登場人物の台詞をかぎ括弧でくくらず、地の文に読点をほとんど打たずに淡々と描かれる事物。心理描写を差し引いた独特の文体で暴力と哲学、そして人間の在り方を描き、多くの作品が映画化されました。

そんなマッカーシーの『ザ・ロード』から実に16年ぶりの新作にして、惜しくも遺作となった二部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』の邦訳が2024年3月に刊行となります。今回は、第二次世界大戦中の原爆開発に参加した科学者を父親に持ち、その影を背負うかのような人生を歩んだ兄と妹の物語。まさに、マッカーシー文学の集大成ともいえる二作です。

●喪失と絶望を描き切ったアメリカ文学の巨匠が放つ『通り過ぎゆく者』


装幀:早川書房デザイン室
四六判上製/576ページ

あらすじ:
1980年。ルイジアナ州の沖に小型飛行機が沈んだ。サルベージダイバーのボビー・ウェスタンは、海中の機内で9名の死者を確認する。だがブラックボックスがなくなっており、彼は10人目の乗客がいたのではないかと推測する。
この奇妙な一件の後、彼の周囲を怪しい男たちがうろつきはじめる。徐々に居場所を失った彼は、追われるように各地を転々とする。
テネシー州の故郷の家、メキシコ湾の海辺の小屋、雪に閉ざされた古い農家――原爆の開発チームにいた父の影を振り払えないまま、そして亡き妹への思いを胸底に秘め、苦悶しながら。

●『通り過ぎゆく者』の裏面を描いた異色の対話篇『ステラ・マリス』


装幀:早川書房デザイン室
四六判上製/272ページ

あらすじ:
1972年秋。20歳のアリシア・ウェスタンは、自ら望んで精神科病棟へ入院する。医師に問われ、彼女は語る。異常な聡明さのため白眼視された子供時代。数学との出会い。物理と哲学。狂人の境界線。常に惹かれる死というものについて。そして家族――原爆の開発チームにいた物理学者の父、早世した母、慈しんでくれた祖母について。唯一話したくないのは、今この場所に彼女が行き着いた理由である、兄ボビーのこと。

静かな対話から孤高の魂の痛みと渇望が浮かび上がる、巨匠の遺作となる二部作完結篇。

●コーマック・マッカーシー

©Beowulf Sheehan

1933年、ロードアイランド州生まれ。大学を中退すると、1953年に空軍に入隊し四年間の従軍を経験。その後作家に転じ、『チャイルド・オブ・ゴッド』(1973)、『ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤』(1985)の発表などにより着々と評価を高め、〈国境三部作〉の第一作となる『すべての美しい馬』(1992)で全米図書賞、全米批評家協会賞をダブル受賞した。その後、三部作の第二作『越境』(1994)、第三作『平原の町』(1998)を発表。第十長篇である『ザ・ロード』(2006)はピュリッツァー賞を受賞し、世界的なベストセラーを記録。2022年には、実に16年ぶりの新作となった二部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』(以上、すべて早川書房刊)がアメリカで刊行され、惜しくも翌年にマッカーシーはこの世を旅立った。名実ともに、現代アメリカ文学の巨匠であった。

●既刊詳細

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『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』は3月18日に早川書房より刊行予定です。



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