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話題の新刊『NSA』読者モニターの感想紹介、第一弾! 「とにかくすべてが衝撃的」「作者の筆力を確かに感じさせる傑作」「歴史改変ものとして満点の出来」

アンドレアス・エシュバッハのクルト・ラスヴィッツ賞受賞作『NSA』、多くの皆様からの反響をいただいております。今回は本日は本作のゲラ先読みキャンペーンに参加された読者モニターの方々から寄せられた感想の一部をご紹介します! 

アンドレアス・エシュバッハ『NSA』上巻


読者のみなさまの感想

想像以上に読みやすかったのは、科学的要素の解説がさり気なく物語内に組み込まれ、登場人物たちの心情の変遷、相互の息詰まるようなやり取りがメインとなって、物語がドラマチックに展開していた点です。最後にはディストピア的結末で、最近読んだ中では一番衝撃的でした。未来世紀ブラジルを思い起こしました。プログラムニッターという職種が物語を暗示していた気がします。操っていた方が実際は家族制度や風習、体制に組み込まれ、実は巧みな全体構造の中で踊らされていた……そのような印象でした。どこで間違えたのか……と途中ヘレーネが呟くシーンが、全編に渡って頭の中で鳴り響いていました。当時の時代背景や社会情勢が巧みに織り込まれ(時折上手くハマり過ぎだろ!とツッコミつつも)最後まで一気読みでした。(読者の方より)

並行して読んでいた作品が同時代を舞台にしていたので、「同志少女が敵を撃っていた」ときにドイツでは、このような状況だったのかなどと、思ってしまいました。第2次世界大戦中のドイツを舞台にしたパラレルワールドSFというよりも、現代にナチ政権下のドイツが現れたタイムスリップSFと捉えたほうが適当なように思いました。日本のインターネットの黎明期に、日本初の商用IXの立ち上げに関わり、(誰も言ってくれないので自分で言いますが)おそらく日本初の「インタネットの趣味としての個人利用」をテーマにした書籍を書いた私としては、あの時代にインターネットが実現できた技術史(偽術史?)に期待したのですが、そこは触れらていませんでした。残念だったのですが、インターネットならぬワールドネットありきのシミュレーションということで、納得しています。作品は、主人公(だと思います)の二人にとっては、おそらく幸福なエンディングを迎えます。もちろん、読者としては、辛く、悲しく、なんともやるせない、ディストピアそのものの終わり方で、重い読後感(作品的には素晴らしい)読後感が残りました。たいへんなボリュームで、読みきれるかプレッシャーを感じましたが、結果的には杞憂でした。素晴らしい作品を、先行して読む機会をいただき、ありがとうございました。(読者の方より)

とにかくすべてが衝撃的で、読み切ったあと、しばらく茫然としていました。初っ端からナチスドイツ+超監視社会という組み合わせの恐ろしさを目のあたりにし、そこからはもう一気読みです。データを駆使して問題を解決したとたんにそれがもたらす結果を突きつけられたり、大切な人を守るために危ない橋を渡ったり。気持ちを振りまわされながらどんどん進んでいくと、1000ページなんてあっというまに終わってしまいました。インターネットや携帯電話といった身近なものが登場するためか、(歴史改変ものとはいえ)何十年も昔を舞台にしているとは思えないほど臨場感があったのも驚きです。現代的な問題も描かれていて、国内外のニュースが脳裏をよぎることもしばしば。ふと我に返って、こんなに怖い物語に現実味があっていいのかと考えてしまうと、よけいに怖くなります。スピード感のあるエンタメ作品としての魅力を十分に備えつつ、現代社会に警鐘を鳴らし、あたりまえに利用している技術にあらためて目を向けさせてくれる作品でした。(女性の読者の方より)

素晴らしかったです。当時のジェンダーや人種政策など、史実に違和感なくインターネットが絡められているほか、アンネ・フランクやショル兄妹といった実在した人物の出し方もツボをおさえていて歴史改変ものとして満点の出来だと思いました。結末は予想外の展開でしたが、ナチスとインターネットを組み合わせて現代を諷刺している本作の結末としてはこれ以上のものはないでしょう。主要人物であるヘレーネ・ボーデンカンプとオイゲン・レトケの生涯を丹念に描いたからこそ胸に迫るラストとなっています。「第二次世界大戦下のドイツでインターネットが発達していたらどうなっていたか」というアイデア止まりではない、作者の筆力を確かに感じさせる傑作として強くお薦めしたい作品です。(男性の読者の方より)

『NSA』は第二次大戦期ドイツにコンピュータや携帯端末があったら、という所謂”歴史IFもの”としてアナウンスされていましたが、読んでみればむしろ近未来SFのようでした。 現実でもネットワーク技術の高度化により他国からのサイバー攻撃や情報流出が恐れられており、さらに自国政府による監視などテクノロジーの暴走を危惧する声も聞かれるようになりました。これらの問題を考えるとき、人々の頭には「政府がナチスのようであったら悪用されどうにかなってしまうのでは」という最悪のシナリオが確実に浮かんでいると思いますが、この作品はまさにそんな近未来を描いたかのようでした。 作品中ではどんどんと私たちの知る史実が変わっていく様子も描かれており、一層ストーリーに”ありえそう”という恐ろしさを感じさせます。さらに、ラストにはもう一段階、背筋が寒くなるような展開もあり、合計1000ページ超、非常に面白く読ませていただきました。(男性の読者の方より)

アンドレアス・エシュバッハ『NSA』下巻

アンドレアス・エシュバッハ『NSA』(上下) 赤坂桃子訳
  解説:山形浩生(評論家)
  装幀:土井宏明(POSITRON)
  ハヤカワ文庫 SF 2022年1月6日刊行 各1364円(税込)

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