炎の色文庫上

ピエール・ルメートル最新刊『炎の色』発売! 『天国でまた会おう』3部作第2弾の壮大な面白さ:訳者あとがき公開

『その女アレックス』のピエール・ルメートルが著した、傑作歴史小説にしてピカレスク・ロマンのゴンクール賞受賞作『天国でまた会おう』。同作の続篇にあたる『炎の色』がいよいよ発売されました。

(書影はAmazonにリンクされています)
『炎の色』ピエール・ルメートル、平岡敦訳
単行本・文庫(上下巻)同時発売!

発売を記念して、平岡敦さんによる訳者あとがきを特別公開いたします!

***

 本書は2013年度ゴンクール賞、2016年度英国推理作家協会(CWA)賞インターナショナル・タガー賞を受賞し、わが国でも高い評価を得た『天国でまた会おう』の待望の続篇である。
『天国でまた会おう』は第一次大戦を辛くも生き抜いた二人の若い復員兵エドゥアールとアルベールが、疲弊した戦後のフランス社会で失意の日々を送りながらも、人々の意表を突いた詐欺計画で一発逆転の大勝負にのり出すという物語だった。
 本書で主人公となるのは、エドゥアールの姉マドレーヌ。『天国でまた会おう』で何とも憎々しい悪役を演じて強烈な印象を残したプラデルと離婚し、7歳になる息子のポールとともに実家の邸宅で暮らしている。マドレーヌの父親で大銀行家のマルセル・ペリクール氏が、数々の心労の末、ある晩静かに息を引き取ったことは、前作のエピローグで触れられていた。


『炎の色』は、その葬儀の場面から幕が開く。大勢の参列者たちが見守るなかで起きた、あるとんでもない出来事をきっかけにして、マドレーヌの運命は大きく揺れ始める。戦後の復興は遅々として進まず、政治家や役人は私腹を肥やすことばかりを考えて、大衆は重税に喘いでいる。隣国ドイツではヒトラーの率いるナチ党が台頭し、ヨーロッパは再び不穏な空気に包まれ始めた。新たな戦火の脅威が刻々と迫る不安な時代を舞台にして、人間の欲、愛と憎しみが絡み合って展開する壮大な群像劇の面白さは『天国でまた会おう』に勝るとも劣らないが、ストーリーは完全に独立しているので、前作をお読みでない方でも充分に楽しめるはずだ。登場人物もマドレーヌを除けばほとんどが新たな顔ぶればかりだが、『天国でまた会おう』ではプラデルの部下として端役ながらもいい味を出していたデュプレが、本作では思いがけない活躍をするという心憎い仕掛けもある。
 タイトルの由来は最後の「謝辞」にもあるとおり、“抵抗の詩人”ルイ・アラゴンが1941年に発表した詩「リラと薔薇」の、次のような一節から取ったものである。

最初の日の花束よ リラよ フランドルのリラよ
そのやさしい影は 死者の頬を色どる
そして君たち隠れ家の花束 やさしいばらたち
はるか遠い戦火の色をしたアンジウのばらたちよ(大島博光訳)

 1940年、ドイツ軍との激戦に立ち合ったアラゴンの体験が色濃くあらわれている詩だ。三部作の完結篇となる次作では、フランス軍の敗退とドイツ軍のフランス侵攻、ナチス占領下へと至るこの1940年代が描かれることになるだろうと、ルメートルはインタビューのなかで語っている。『天国でまた会おう』でエドゥアールの仮面造りを手伝った少女ルイーズが主人公だというから、今から楽しみなところだ。


『炎の色』の原書は今年1月、フランスで刊行されるやベストセラーの1位を独占し続け、あらためてルメートル人気の高さを感じさせた。また去年の10月にはアルベール・デュポンテル監督・主演による『天国でまた会おう』の映画化作品も公開されて大ヒットを記録し、セザール賞5部門で受賞するなど好評を博した。今年6月に横浜で開催された「フランス映画祭2018」で上映された折に、ご覧になった方もおられるだろう。訳者も試写を観せてもらったが、長い原作小説のストーリーを手際よくまとめ、映画的な見どころもたっぷり詰めこんだ傑作だった。来年には一般公開される予定なので、ぜひ映画館に足を運んでいただければと思う。


 本書の原作には、フランスの新聞、雑誌に数多くの書評が寄せられたが、そのなかからいくつか抜粋を紹介しておこう。

『炎の色』には、偉大なる物語作家の才能がはっきりとあらわれている。――《エクスプレス》
 
ピエール・ルメートルは19世紀の小説家たちをもっとも忠実に受け継ぐ作家である。彼らが500ページにわたって語る世界を、われわれは2日間で読み切るのだ。――《ヌーヴォー・マガジーヌ・リテレール》
 
けばけばしいまでに個性的な登場人物と、息もつかせぬサスペンスに彩られた文学的叙事詩。――《フィガロ・マガジーヌ》
 
ピエール・ルメートルは歴史(イストワール)のなかに物語(イストワール)を疾走させる才を有している。――《レ・ゼコー》
 
見事に組み立てられた人間喜劇。――《ジュルナル・デュ・ディマンシュ》
 
ピエール・ルメートルは『炎の色』のなかで、思う存分にペンを振るっている。――《リベラシオン》
 
読み出したら止まらない、読者を夢中にさせるすばらしい作品。――《マダム・フィガロ》
 
ついに、ついに『天国でまた会おう』の続篇きたる。読者の期待を裏切らない、感涙ものの作品だ。――《パリ・マッチ》

『炎の色』ピエール・ルメートル、平岡敦訳、早川書房
46判上製単行本
ハヤカワ・ミステリ文庫上巻下巻
好評発売中

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