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2065年、フェイスブックは永眠アカウントが半分以上に……? ベストセラー『ホワット・イフ?』から

 『ホワット・イフ?』文庫から一部抜粋でお送りするミニ連載も、3回目になりました。(第1回第2回

 NASAのロボット技術者の経歴を持つウェブコミック作家、ランドール・マンローによる『ホワット・イフ?』。自身のウェブサイトに集まってくるトンデモ質問に、マジメな科学と並外れた調査能力、そしてたっぷりのユーモアで答えていく本書の文庫版は、あす12月4日発売です。

ホワット・イフ_文庫2冊セット

(書影はAmazonにリンクしています)
(『ホワット・イフ? Q1&Q2』ランドール・マンロー
吉田三知世訳/早川書房/12月4日発売)


 こんなに訳に立たない暮らしの解説書、見たことない! と話題のマンローの新作『ハウ・トゥー』も、1月23日刊行予定! 

ハウ・トゥー(仮)

『ハウ・トゥー――バカバカしくて役にたたない暮らしの科学』
(ランドール・マンロー/吉田三知世訳
/早川書房/1月23日発売予定)


 今日は、盛り上がっては消えていくウェブサイトたちを偲ぶ、ちょっと切ないQ&Aをご紹介。ユーザーが亡くなるなどの理由で使用されなくなった、SNSアカウントの未来についてです。


死者のFacebook

質問. Facebookのプロフィールのうち、死んだ人のものが生きている人のものより多くなることがあるでしょうか? あるとすればそれはいつごろでしょう? ――エミリー・ダナム

文庫ホワット・イフ下0173

答. 2060年代もしくは2130年代だろう。

 Facebookには死んだ人はあまりいない(1)。その主な理由は、Facebookもそのユーザーたちも、若いことにある。Facebookは、ユーザーの平均年齢こそここ2、3年で上がったが、年配の人よりも若者のほうが依然として使用率が高い。

文庫ホワット・イフ下0174

過去
 Facebookの成長率と、Facebookのユーザーの年齢構成が時とともにどう変化してきたかに基づいて推測すると(2)、Facebookのプロフィールを作成したあと死亡した人は1000万から2000万人ほどだと思われる。

 この死者たちは、現時点では、あらゆる年齢層にわたりほぼ均等に分布している。60代、70代の人に比べ若者の死亡率ははるかに低いにもかかわらず、Facebook上の死者全体に若者がそこそこの割合を占めているのは、Facebookのユーザーには若者が圧倒的に多いという単純な事実ゆえだ。

未来
 2013年に死亡したアメリカ人のFacebookユーザーは約29万人と推定される。2013年に世界全体で死亡したFacebookユーザーは数百万人にのぼると思われる(3)。Facebookユーザーの年間死者数はたった7年のうちに2倍になり、さらに7年経つと、そのまた2倍になるだろう。

 仮にFacebookが明日登録を締め切ったとしても、2000年から2020年までの期間に大学生だった世代が年を取るにつれて、年間死亡者数は今後何十年にもわたって増加しつづけるだろう。

 死者が生者を上回るようになるのはいつかを決める最大の要因は、死者が増加しているというこの傾向をしばらくのあいだ抑えるに十分速いペースで、生きたユーザー――若者なら申し分なし――をFacebookが新たに獲得できるかどうかだ。

2100年のFacebook
 そんなわけで、Facebookの未来について検討してみよう。

 私たちは、Facebookがいつまで存続するか、確実なことを何か言えるほどにはまだソーシャルネットワークを経験していない。たいていのウェブサイトは、いっとき急に盛り上がって、その後徐々に人気がなくなってしまうので、Facebookもこのパターンをたどると仮定するのは理にかなっていると思われる(4)。

 このシナリオでは、今世紀後半にFacebookが市場シェアを失いはじめ、その後決して回復しなくなる時点、すなわち、Facebookの転換点――死者が生者を上回る日でもある――は、2065年ごろ訪れるだろう。

画像5

 だが、そうはならないかもしれない。もしかしたら、TCPプロトコルのように、その上にほかのものがいろいろ構築される一種のインフラのようなものになって、Facebookは不動の支持を得るようになるかもしれない。

 もしもFacebookが何世代も使われつづけるなら、転換点は2100年代半ばまでずれ込むかもしれない。

画像6

 とはいえやはりそれはなさそうだ。永遠に続くものなど存在しないし、コンピュータ・テクノロジーの上に築かれたものはどれも、急速に変化するのがお決まりだ。10年前には永続的なものと思われたウェブサイトやテクノロジーの残骸が、そこらへんにごろごろ転がっている。

 実際の転換点は、この2つの予測のあいだのどこかに来そうだ(5)。私たちは成り行きを見守るしかないだろう。

私たちのアカウントの運命
 Facebookには、私たちのページやデータをすべて無期限に保存できるだけの金銭的余裕がある。生きているユーザーは常に、死んだユーザーよりも多くのデータを作り出すし(6)、頻繁に更新するユーザーこそ容易にアクセスできなければならない。したがってたとえ死んだ(あるいは、まったく更新しない)人たちのアカウントがFacebookのユーザーの大部分を占めるようになったとしても、フェイスブックのインフラ予算全体のなかで大きな割合を占めることはおそらくないだろう。

 それよりも重要になると思われるのは、私たちの意思決定だ。これらの亡くなった人々のページを、私たちはどうしたいのか? 私たちがFacebookに削除してくれと要求しないかぎり、デフォルト設定ではおそらく、Facebookはすべてのもののコピーを永遠に保存するだろう。仮にFacebookは保存しないとしても、ほかのデータ吸い上げ組織が保存するだろう。

 今では、死んだ人のFacebookプロフィールを最近親者がメモリアル・ページに模様替えして故人の記念にすることができるようになっている。しかし、パスワードやプライベートなデータへのアクセスをめぐっては、まだ「こうすればいい」という社会規範が定まっていない問題点がたくさんある。故人のアカウントにいつまでもアクセスできていいのか? どんなものをプライベートにすべきなのか? 最近親者はメールにアクセスする権利を持つべきか? メモリアル・ページにコメントを書き込めるようにすべきだろうか? 「トローリング(釣り)」や「荒らし」にはどう対処すればいいのか? 人々は死んだユーザーのアカウントと交流できるべきなのか? 死者のアカウントを載せたほうがいいのは、「友だち」が持っているどんなリストだろうか? などなど。

 これらは、私たちが目下試行錯誤を重ねて整理しようとしている最中の問題だ。死というものは、これまでも感情を掻(か)き立てる、難しい大きな問題だったのであり、それにどう対処するかについては、それぞれの社会が独自の規範を作ってきた。

 人間の生活を形作る基本的な要素は変化しない。私たちはこれまでもずっと、食べ、学び、成長し、恋に落ち、戦い、死んできた。私たちは、これら1組の不変の行為の周辺に、場所、文化、テクノロジーの進み具合に応じて、異なる行動規範を作ってきたのだ。

 私たちの前に存在したすべての集団と同じく、私たちも、私たちの独特の活動の場で、これら不変のゲームを行なうにはどうすればいいかを学びつつある。私たちは、混乱に陥ることもある試行錯誤をとおして、デート、議論、学習、インターネットでの成長に関する新しい社会規範を構築しつつある最中なのだ。いかにしてインターネット上で故人をしのぶかについても、私たちはまもなくはっきりさせることができるだろう。

文庫ホワット・イフ下179


(1) ともかく、本書執筆の時点では、まだロボット流血革命も起こっ
ていなかったので。
(2) 各年齢層のユーザー数は、Facebook の「広告を作成」から知る
ことができる。ただし、Facebook には年齢制限があるために、一部の
人々は自分の年齢を偽っていることを考慮せねばならないだろう。
(3) おことわり:これらの予測のうちいくつかで、私はアメリカの年
齢層別利用状況のデータを、Facebook のユーザーベース全体に拡張し
て当てはめた。というのも、国ごとのデータを使って、Facebook 利用
者の世界全体を把握するよりも、アメリカの国勢調査の結果と実際の数を
見出すほうが簡単だったからだ。アメリカが世界の理想的なモデルだとい
うわけではないが、「利用者数は今後しばらく増えつづけ、その後頭打ち
になるが、若者のFacebook 利用がFacebook の成功・不成功を決め
る」などの基本的な動向は、ほぼ世界全体で共通だと思われる。現在、国
民がより若く、より急速に人口増加している発展途上国では、Facebook
の利用も急速に飽和状態に近づくと仮定すると、重要なことが起こる時期
は数年ずつぐらいずれるだろうが、全体像は、みなさんが期待されるほど
には変わらないだろう。
(4) これら人気を失ったサイトは、過去のデータを消去してはいない
ものと私は踏んでいる。これまでのところ、これは無理のない仮定のよう
だ。したがって、あなたがFacebook のプロフィールを作成したことが
あるなら、そのデータは今なお存在しているだろうし、何かのインターネ
ット・サービスをかつて利用していたが今はもう使っていない人の大部分
は、わざわざ自分のプロフィールを消したりしないだろう。このような行
動が変化したり、あるいはFacebook がアーカイブを大掃除して使われ
ていないアカウントを削除したりしたなら、バランスは急激に、予測でき
ない変化を起こすだろう。
(5) もちろん、Facebook ユーザーの死亡率が急激に上昇したなら――おそらく、人類全体の死亡率上昇に伴って──、転換点は明日にも訪れ
るだろう。
(6) そうであることを私は願っている。


あす12月4日からは『ハウ・トゥー』へと引き継ぎます。お楽しみに!


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