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大好評発売中! 表からも裏から読める本『ターングラス 鏡映しの殺人』の制作秘話!? 装幀担当のデザイナーと担当編集者がこだわった五つのポイント

大好評発売中の『ターングラス 鏡映しの殺人』(ガレス・ルービン/越前敏弥 訳)。本日は、この表側からも裏側からも読むことのできる摩訶不思議な一冊の、装幀を担当された柳川貴代さんと、担当編集者がこだわったポイントをご紹介いたします!

『ターングラス 鏡映しの殺人』表1(表紙側)書影
『ターングラス 鏡映しの殺人』表4(裏表紙側)書影

●あらすじ

・エセックス篇

1881年、エセックス沿岸のレイ島。医師シメオンは、体調不良に悩む叔父オリヴァーが住む島唯一の建物ターングラス館を訪れ、オリヴァーから衝撃的なことを告げられる。彼の義理の妹で、とある事情から館に監禁されている女性フローレンスが、オリヴァー毒殺を画策しているというのだ。なぜフローレンスは監禁されることになったのか、そしてオリヴァーが感じる殺意の正体とは。謎を解き明かす鍵は、1939年のカリフォルニア、デューム岬にあるガラスでできた屋敷に住む一家の物語が書かれた小説の中にあるというが……。

・カリフォルニア篇

1939年、カリフォルニアのデューム岬。州知事の息子で作家のオリヴァーが、ガラスでできた屋敷ターングラス館の敷地内にある執筆小屋で死体となって発見された。警察の捜査によって自殺だと結論付けられたが、オリヴァーの友人ケンはその死に疑問を抱く。死の間際のオリヴァーが書いた、1881年のエセックスを舞台にした小説に真相が隠されていると直感し、捜査を始める。その中でケンはオリヴァーの弟が25年前に誘拐され、殺されていたことを知り、エセックスのレイ島にあるもうひとつのターングラス館へと向かうが……。

●こだわりポイント

先日のnote記事でもご紹介したように、本作は表と裏の両方から読むことの出来る本です。これは、原書からそのような形になっており、私(=担当編集者)は企画段階から「絶対に日本語版でも同じ形にしてやる!」と心に決めていました。
でも、こういった変わった本を作るのってものすごく大変なんです。それでも、この作品の仕掛けを日本の読者の皆さまにも十全に味わっていただくことができるよう、本書の装幀を担当されたデザイナーの柳川貴代さんと、担当編集者がこだわりぬいたポイントをご紹介していきます。

・こだわりポイントその1

表も裏も、どっちも表紙になるデザイン!

本作のキモである「表からも裏からも読める」という仕掛けが活きるように、カバーは表側と裏側で上下逆になるようにしました。

さらに、帯も表裏で上下逆にすることで、帯も含めて一冊の本で二冊分楽しめるようにしました。

・こだわりポイントその2

見返しの色が表裏で違う!

表紙と本文の紙を連結させて補強するための紙を「見返し」といいます。本来は、この見返しの色は表と裏で同じ色(同じ紙)を使うのが普通。でも、本作は別の色を使用して、表裏で違う物語であることを表現しました。
ちなみに、カバー袖にあるあらすじも表裏で違うものにしています。

・こだわりポイントその3

扉を表裏それぞれにつけている!

表紙をめくっていちばん最初に現れる紙のことを「扉」といいます。これは、普通なら表側だけに入れるのですが、本作では、表裏のどちらにも扉を入れました。小説を読むぞ! というワクワク感を、一冊で二度味わえるようにしています。

・こだわりポイントその4

花布(はなぎれ)の色が上下で違う!

本を補強するために、本の背の上下につける小さな布のことを花布(はなぎれ)といいます。これも、本来なら上下で同じ色のものをつけるのですが、本作では上下で別の色のものをつけています。とても細かいところですが、こんなところにもこだわっているのです!

・こだわりポイントその5

見開きで物語が切り替わるようにページ数を調整!

見開きで物語が切り替わるように、小説の本文と、訳者なかがき、そして解説が終わるところがピッタリになるように調整しました。なぜそうしたのかというと、パラっとめくったときにもう一方の話のことが見えてしまって、ネタバレを食らってしまう可能性を少しでも削りたかったからです。
これがいちばん大変だった……。


デザイナーの柳川貴代さんと担当編集者がこだわった五つのポイントのご紹介でした。知らなくても本書は面白い! でも、知っているともうちょっと面白くなるかも? ぜひ、小説部分だけではなく、物としての本にも注目して楽しんでください!

●著者情報

ガレス・ルービン
イギリス在住。ジャーナリスト、作家。2019年にソ連占領下のロンドンを舞台にした Liberation Square で作家デビュー。本作は三作目に当たる。最新作は、シャーロック・ホームズのパロディ作品の Holmes and Moriarty であり、現在、本作の続篇となる The Waterfall を執筆中。

●書誌情報

タイトル:『ターングラス 鏡映しの殺人』
著訳者:ガレス・ルービン
訳者:越前敏弥
発売日:2024年9月19日
判型:四六判上製
本体価格:2,500円(+税)
ISBN:978-4-15-210362-8