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「感染症対策におけるアベンジャーズ」「魅力的な異能の人々」と話題沸騰! マイケル・ルイス『最悪の予感』が描くコロナ戦の英雄たち

感染症対策の砦であるはずのCDC(疾病対策センター)が平時の「常識」に囚われ機能不全に陥るなか、独自に行動した英雄たちがいた。

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世界健康安全保障指数1位(2019年)のアメリカは、なぜ最大の「コロナ敗戦国」となったのか?

2020年1月。世界が小さな“波”にはほとんど目を向けていなかった一方で、ごく一部の人々はパンデミックを予感し、独自に動き出していた。「何か、もっと大きなものがやってくる……!」

コロナ禍を戦った英雄の素顔とは?

グラス親子

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2003年に13歳の少女ローラが科学研究コンテストのために取り上げた課題は、新型のインフルエンザ。人の行動や移動、社会的ネットワークは、病原体の拡散にどう影響するのか。そのコンピュータモデルを、科学者である父ボブ・グラスの手を借りて構築していく。過去に多くの死者を出したパンデミックの記録データを使うことで、娘と父は試算と現実に共通する重大な事実を発見する――致死性の高いウイルスに対して、ワクチンの完成前にできることとは? 学術界で評価されなかった研究論文について、問い合わせを寄越してきたのはホワイトハウスだった。グラス親子のプロジェクトの中核をなす考察は、その後アメリカ政府の公式方針となり、世界各国へ急速に広まっていく。

カーター・メシャー

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2005年、それまでの実行力に乏しいパンデミック対策計画を練り直すために、ブッシュ政権下では既存の枠にとらわれない斬新な発想ができる人々が招集される――その一人がカーターだ。型破りの異才と評価されてきた彼にとって最大の焦点は、ワクチン製造までの間いかに感染拡大を遅らせるか。実効性が高いプランとして着目したのが、ソーシャル・ディスタンスを活用する「ある一策」だった。だが政権交代を経て、この計画は重要視されなくなってしまう。2020年1月、トランプ大統領は事態を軽視する声明を出すが、カーターたちのチームは新型ウイルスの本当の患者数、致死率は推定以上に膨れ上がることにいち早く気づく。彼らの計画が採用されれば、多くの人が死なずに済む。国家政策に大きな影響を与えるCDCに連絡を取ろうと模索するが……。

チャリティ・ディーン

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サンタバーバラ郡の保険衛生官であるチャリティが、着任したての上司から頼まれたのは美容院やクリーニング店を探すことだった。こんなのわたしの仕事じゃない……無力感を感じる彼女の周りでは、同時に不思議な出来事が多数起きていた。事件が彼女に降りかかっているのではない、彼女がいるから問題が表面化するのだ。彼女には特殊な観察力と、問題解決のための実行力がある。そして彼女が感知する限り、2020年1月の時点でウイルスはすでに加速度的に広まっている。脇目も振らず努力して自分の使命をやり遂げることが、自分の務めなのだろう。そう決意する彼女のもとにホワイトハウスからの連絡が不意に訪れる。「こんな小さなグループが、パンデミックという緊急事態に立ち向かおうとしているの?」

ジョー・デリシ

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ジョーの外見はいかにも若い研究者の一人。研究室を指揮しウイルス特定の新兵器を操るとはとても見えない。最新型チップを開発した彼が2003年に特定した新型ウイルスがSARSだった。彼が数時間で成果を出したのに対し、CDCでは何週間もかかる見通しだった。ウイルスハンターと評されるようになった彼が次に目標としたのは治療法だったが、医学・薬学という分野には感覚が麻痺するほどの金銭問題が関わる。企業は金になるものにしか興味がないし、学者やCDCは新しい論文にならなければ興味がない。彼の研究室にコンタクトを取れば救える命があるはずなのに、そういった事情で多くの場合は間に合わないのだ。2020年1月、アジアからの帰国便を中国・広東省で乗り換えたジョーは、空港内のただならぬ様子に瞬間的に違和感を覚えるが……。

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本文の試し読み(冒頭40頁)はこちらから

池上彰氏解説「アメリカがコロナに負けた理由…」

著訳者紹介

■著者略歴
マイケル・ルイス
(Michael Lewis)
1960年ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。プリンストン大学で美術史の学士号、ロンドン・スクール・オブエコノミクスで経済学の修士号を得たあと、ソロモン・ブラザーズに入社。債権セールスマンとしての3年間の経験をもとに執筆した『ライアーズ・ポーカー』で作家デビューした。ブラッド・ピット主演で映画化された『マネー・ボール』をはじめ、『世紀の空売り』『フラッシュ・ボーイズ』『かくて行動経済学は生まれり』などベストセラー多数しており、著書累計は1000万部を超える。

■訳者略歴
中山 宥
(なかやま・ゆう)
翻訳家。1964年生まれ。訳書にルイス『マネー・ボール〔完全版〕』、チャンギージー『〈脳と文明〉の暗号』(以上ハヤカワ・ノンフィクション文庫)、デフォー『新訳 ペスト』、ウィンズロウ『失踪』など多数。


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