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「二十年後の光の子どもたちへ……」村石宏實(監督)×小中千昭(脚本)×権藤俊輔(アクター)× 中村浩二(アクター)×切通理作『ウルトラマンティガ』スペシャルトーク冒頭公開

去る6月20日(木)新宿ロフトプラスワンにて、小中千昭による小説ウルトラマンティガ 輝けるものたちへの刊行を記念して「ウルトラマンティガ トーク&上映会」が開催されました。


チケットが発売日に完売、大盛況となった同イベントのスペシャルトーク、その冒頭部分の採録を公開いたします。

トークイベント登壇者(敬称略)
村石宏實(『ウルトラマンティガ』監督)
小中千昭(『ウルトラマンティガ』脚本/『ウルトラマンティガ 輝けるものたちへ』著者)
権藤俊輔(スーツアクター/ウルトラマンティガ他)
中村浩二(スーツアクター/ウルトラマンティガ、イーヴィルティガ他)
切通理作(司会/『地球はウルトラマンの星』著者)

村石宏實(以下、村石) 監督の村石です。今日はすごい熱気ですね! 感激しています。何しゃべろうかな(笑)。みなさん、楽しんで帰ってくださいね。

小中千昭(以下、小中) 脚本を担当しておりました小中です。『ウルトラマンティガ』は公式イベントってあまりなかったと思います。今日はこういう機会があって、みなさんに来ていただいて、感謝しています。すごいイベントになると思うので楽しみです。よろしくお願いします。

権藤俊輔(以下、権藤) こういう場に出るのが二十年以上ぶりなので、みなさんの視線が河童やツチノコを見るようですね(笑)。特撮界のUMAこと権藤です。

中村浩二(以下、中村) 本当に二十年ぶりですね。ご無沙汰しています。あの頃よりは太っていません! だいぶ年齢も重ねましたので、身体のあちこちにいろんなものが出てくる今日このごろです。楽しんで帰ってください。よろしくお願いします。

切通理作(以下、切通) ウルトラマンティガ、ダイナ、ガイアの魅力を再発信するという「TDGプロジェクト」が円谷プロでスタートしています。今日は、『ウルトラマンティガ』に関して時間の許すかぎり、登壇者のみなさまにお話をうかがっていきたいと思っています。もうひとつ、ロフトプラスワンという場所でイベントをやらせていただくことにも意義があるのです。『ウルトラマンガイア』の頃が中心だったのですけど、平成ウルトラマン三部作の放映中に、よくロフトプラスワンでイベントをやっておりましたので。今日のみなさんも登壇されていましたね。僕がよくおぼえているのは、当時の女子ファンが、アクターの中村さんにお姫様抱っこをしてもらって写真を撮ってもらっていたことです。今日のイベントはチケットを売り出したその日に完売したと聞いています。二十年前と負けず劣らず、すごい盛り上がりですね……!

切通 さて、まずは村石監督から、『ティガ』の第三話「悪魔の預言」に関わられた頃のお話をおうかがいしたいと思います。

村石 ティガを撮ることになったのは、今話題になっている『電光超人グリッドマン』の監督をやっていたことがきっかけなんです。そのときも、途中からメイン監督になって最終回を撮りました。『ティガ』の場合も、三話から入りました。私の前に松原信吾さんという方が監督をやっていたんですけど、松原さんのスケジュールが過密になってしまって。結局、私にメイン監督を任せるということになりました。

切通
 村石監督が入った三話、それが小中さんにとっても最初の『ティガ』だったわけですね。

村石 そうですね。知っている人は知っているだろうけど、最初に小中さんからもらった本(編集部注 脚本のこと)というのは、キリエルの話ではなかったんです。自分はもともと、円谷プロの光学撮影部というところにいて、技術屋でした。ずっとウルトラマンを撮りたいという思いがあって、円谷英二さんの門を叩いて入れてもらいました。技術屋時代からウルトラマンへの思いが強かったので、最初に小中さんからもらった『ティガ』の本が、思い描いていたウルトラマンじゃないと感じてしまったんですね。やっぱり、強い怪獣を倒すウルトラマンの活劇を観てスカっとする、そんなお話を撮ってみたいという思いがありました。なので、もうちょっと違う話をと小中さんに話したら、二日間で書きあげてくれたのがキリエルの物語でした。それを撮ったおかげで『ティガ』の新しい道が開けて、最終的にはメイン監督になれたのかなと思っています。

切通 ティガとキリエロイドが戦う第三話を、僕自身もすごく興奮して観ていました。撮影現場で、権藤さんと中村さんにはティガとキリエロイドの頃の戦いの記憶はありますか?

権藤 『ティガ』の撮影に入る、ちょっと前からお話しますね。当時25歳だったんですが、いろんな仕事をやっているなかでのオーディションだったんです。アクションを学んでいる人間にとって、特撮ヒーローを演じるというのはステータスなので、やってみたいと思いました。いざオーディション会場に入ったら、倉田プロ(編集部注 中村浩二をはじめアクション俳優が数多く所属する芸能事務所)の人がズラっと並んでいてビックリしましたね。

中村 とりあえず身長の高い人を選びたいというので、僕らが集められて。

村石 昔は、身長の低い人を選んでいたらしいですね。そのほうがスーツに入りやすいからだそうです。逆に、『ティガ』は、撮影前に東宝ビルト(編集部注 かつて世田谷区大蔵に存在したテレビや映画の撮影スタジオ)の天井を高くして、アオリ撮影をして、しっかりと巨大にみえるティガを撮れるようにしたので、高身長のアクターが求められたんだと思います。

権藤 オーディションに合格するまではよかったんですけど、撮影に入ってからは、もうけちょんけちょんにダメ出しを食らいまして。たとえば、走ってきてからの急制動とか、ステップの踏み方とかですね。ウルトラマンというのはちゃんとした定義があって線引きして創られているんだなと、感銘を受けました。

切通 ウルトラマンらしさというのはどういうところだったんですか。

権藤 やはり僕が思っていたのは、”台詞なき芝居”ですね。あとはドタコロといって、特撮のドタっと転ぶドタコロシーンがあるんですけど、甲冑的なものを着ていたらゴロゴロできないですよね。ウルトラマンにはそういったものが無い。

中村 あとはオンエアを確認して、ウルトラマンの動きを自分なりにチェックしました。撮影が進むに従って、慣れとか、監督の指示もあったりしながら、ウルトラマンらしさを徐々に創っていきました。作品と同時進行ですね、僕らも成長しながらやっていた部分はかなり大きいです。

小中 権藤さんのウルトラマンらしさの話に関係しますが、脚本ライターとしては執筆にあたって、ウルトラマンはこういうふうに動くんだろうなと、過去の作品を意識してシーンをつくるわけです。けれど、ティガのドタコロで、ビル群のなかに倒れるというのが出てくるのですが……あれはどうみても痛そうなんですけど、痛いですよね?

中村 痛いです!

権藤 スタッフさんに全然痛くないからといわれて、飛びこんだらめちゃくちゃ痛い! 立ち上がりができないぐらいでしたよ!

小中 そうですよね。たぶん、第四十四話「影を継ぐもの」あたりで脚本を書いている意識が変わっているんです。ウルトラマンも生きているんだ、痛さを感じるんだというふうに。古谷敏さんの初代ウルトラマンは、痛そうな芝居をしないじゃないですか。でもティガは、ダイゴという人間のキャラクターとかなり重なるように、自分のなかでも見えてくるようになったんです。

権藤 僕も演じる上で、ダイゴを知ろうとは思っていましたね。一度だけ長野(博)さんとお話したことがあって。スタジオに入って歩いていたら「おはようございます」と、車から腰をあげて丁寧におじぎをされたことが記憶に残っています。アクターの自分のことを、ちゃんと知っていらっしゃると、驚きましたね。

村石 権ちゃんのティガ、やっぱりかっこよかったよねえ、あのスリムさがよかった。芝居というか感情というか、そういうものって本来は着ぐるみから出ないはずなんだけど、ティガはそれを見事に演じているんだよね。

権藤 ほめ過ぎですよ(笑)。まあ、あの当時はダイゴを知ろうダイゴを知ろうと思って必死でやっていました。でも、台本の活字から読み取れるものだけでは、足りないんですよね。1クール目が終わったぐらいに映像を観て、長野さんの、ダイゴのあのなんともいえない憂いを帯びた表情をみて、「あっ、ティガってこれだ」とようやく理解しました。そこからは、これをなんとか表現したいと思って演っていたんです。

切通 権藤さんと中村さんは、特技監督としての村石さんとティガではじめて仕事をされるようになったわけですけど、そのお仕事ぶりはいかがだったでしょうか?

村石 二人の話の前にね、雑誌のインタビューか何かで、「村石監督が細かくてさ」というの読んだ記憶があるんだけど(笑)。

切通 誰が言ってたんですか?(笑)

村石 中村くんだね(笑)。撮影に入って最初の頃に、ワンアクションをワンカットみたいな撮り方をしたの。その所為かな。

中村 自分は正直な話、ウルトラマンのことを最初はナメていたかもしれないです。昔のウルトラマンは長まわしの取っ組み合いのイメージがあったので、そういうものだと思い込んでいた。村石監督が細かく撮られるということ自体は、香港映画やアクション映画をすごく観ていたというので全然大丈夫だったんですけどね。スーツの動きに慣れていなかったので、最初の内は、撮影についていけない部分があったかもしれないですね。

村石 細かいのは、俺がフィルム育ちだからかもね。いまやビデオだから、それこそ時間の許すかぎりまわしちゃうけど、当時フィルムってものすごく高いといわれていましたから。テストを何回も重ねて、本番は「フィルムを無駄にするなよ」「NGを出すなよ」と言われているなかで育っていたので、長まわしをすると結局NGが多くなっちゃうので、短いカットで撮ってしまうんです。

中村 撮影の度に厳しい要求をされていたので、僕らもやっぱり、一発でOKしようと思ってカットごとにめいっぱいやるわけですけど……非常に疲れた記憶がありますね。

村石 流して撮るよりは、集中してワンカット、短いなかにいろいろ演らせると、クオリティが高いものが撮れるんですよね。時間はかかるから現場的には大変ですけど。

切通 ということで、これからティガのなかでのウルトラマンの性格分けがたっぷり観られる回ということで、第四十四話「影を継ぐもの」を上映します。

村石 メンバー的には脂の乗り切った頃だよね。アクションをやりながら、格闘をやりながら、それぞれの心情みたいなものをうまく表現できていたなと。

小中 第三話「悪魔の預言」で、私と村石監督がぶつかった話は有名だと思います。その解答が「影を継ぐもの」。ウルトラマンはしゃべらずにすべての感情を表現するということは成立するんだということを、確信して書いている。権藤さんと中村さんの二人でないとできないことです。二人がこういうウルトラマンだと、わかってから書いているのが大きいですね。そこを是非観てほしいです。

イベントはこの後、第四十四話「影を継ぐもの」上映会を経て、よりディープなティガの秘話や裏話へと進んでいきました。トークイベント全体は、近日中に円谷プロダクションで公開予定です。

同日発売となった小中千昭『ウルトラマンティガ 輝けるものたちへ』は、本篇の全史にあたる地球平和連合(TPC)とGUTS設立の物語からはじまり、光の巨人「ティガ」の熱き闘いの日々を小中千昭が小説として書き下ろした一大叙事詩です。第四十四話「影を継ぐもの」でのティガとイーヴィルティガの死闘も、作中で描かれています。全国の書店で絶賛発売中! 今回のイベントで司会をつとめられた切通理作の地球はウルトラマンの星と共に、是非お読みください。
(インタビュー構成・文 早川書房編集部)



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