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ゆく年くる年、何を読む?早川書房2019海外文芸総ざらい

年の瀬が迫ってまいりました。みなさん、年末年始の読書の予定はお決まりですか? 「読みたい本がほかにもたくさんあるから長すぎず、でも読み応えのあるものを読みたい」「海外文学を読みはじめたいけど長すぎると心が折れる」「時間があるから長篇の世界にじっくり浸りたい」などなどあらゆる要望に応えるべく、2019年に早川書房が刊行した海外文芸を、ページ数と独断と偏見でライト級、ミドル級、ヘヴィー級の3階級に分類しました。各作品、担当編集の激推しおすすめコメントつきです!


ライト級

ビール・ストリートの恋人たち


ビール・ストリートの恋人たち
ジェイムズ・ボールドウィン/川副智子訳
四六判上製 本体価格2,200円+税
288ページ

恋人が冤罪で収監されてしまったら。そんなむごい状況を描いた小説ですが、詩的な文章にとにかくうっとり。60~70年代の音楽を聴きながら読むのもいいですね。すばらしい映画版もぜひチェックしてみてください。(担当編集N)



荒野にて

荒野にて
ウィリー・ヴローティン/北田絵里子訳
四六判上製 本体価格2,000円+税
344ページ

とんでもなく孤独な少年が、荒野のなかをひたすら、親戚の叔母さんに会いに歩んでいく。少年のけなげさ、出会う人々のやさしさ(悪い人もいますが……)。旅の小説、胸を打つ小説を探しているならこの一冊。(担当編集N)



三つ編み

三つ編み
レティシア・コロンバニ/齋藤可津子訳
四六判並製 本体価格1,600円+税
256ページ

3つの大陸、3人の女性、3通りの人生。まったく境遇が異なる3篇の物語が思わぬかたちでつながる――その構成の妙にうならされるとともに、彼女たちがつながれたことに胸をうたれる1冊です。(担当編集K)



穴の町

穴の町
ショーン・プレスコット/北田絵里子訳
四六判上製 本体価格2500円+税
272ページ

登場人物は基本無気力、起こる出来事に脈絡なし。町に穴が空いても驚きのローテンション。カフカ、安部公房、J.G.バラードをサンプリングしたような、ノスタルジックでチルな読書体験をあなたに。(担当編集H)



エレベーター

エレベーター
ジェイソン・レナルズ/青木千鶴訳
四六判並製 本体価格1,800円+税
320ページ

まずはどんどん読める文体(左開き横書き、ポエトリー!)に驚いてください。それから、兄を殺されて悲しみと復讐の連鎖に足を突っ込みかけている少年の物語に打ちのめされてください。最後の1文、あなたならどうする? (担当編集H)


ミドル級

三人の逞しい女

三人の逞しい女
マリー・ンディアイ/小野正嗣訳
四六判上製 本体価格2,900円+税
339ページ

人生に抗える人間なんてそもそも恵まれた立場にいる者だけなのでは? 本書に出てくる女たちの逞しさとはなにか? サイズはミドル級ですが、読み応えはスーパー・ヘヴィー級の仏最高峰ゴンクール賞受賞作。(担当編集Y)



マンハッタン・ビーチ_修正済み

マンハッタン・ビーチ
ジェニファー・イーガン/中谷友紀子訳
四六判上製 本体価格3,500円+税
533ページ

潜水士をめざす若い女性の物語。なんですが、特におすすめなのは後半に展開する海での遭難エピソード! 難破した者同士のあいだではぐくまれる絆、険しくも美しい大海の景色。読後の充実感は保証します。(担当編集N)



レス

レス
アンドリュー・ショーン・グリア/上岡伸雄訳
四六判上製 本体価格2,600円+税
325ページ

元恋人の結婚式になんて出たくない! という理由で世界漫遊の旅に出た売れない作家は新たな愛を見つけるのか? 感動と驚きのラストが待ち受ける、ピュリッツァー賞受賞作。作家ものの小説が好きな人におすすめ。(担当編集Y)



赤い髪の女

赤い髪の女
オルハン・パムク/宮下遼訳
四六判上製 本体価格2.300円+税
296ページ

オルハン・パムクというと、『わたしの名は赤』『無垢の博物館』といった上下巻の大長篇をものするヘヴィー級作家ですが、本作『赤い髪の女』はなんと1巻で300ページ以下。さらに内容も、運命の女性との恋、文学への憧れ、イスタンブールの変貌といったパムク作品を通底するテーマばかり。入門にうってつけの1冊。(担当編集K)



サブリナ

サブリナ
ニック・ドルナソ/藤井光訳
B5判変形並製 本体価格3,600円+税
208ページ

淡々としたタッチで描かれる漫画はちょっと癖になります(猫がかわいい)。しかも、その淡々としたタッチで描かれるのは、現代の闇。どこまでも淡々としているものの、破壊力抜群。何度読んでも発見がある一冊です。(担当編集N)




ベル・カント

ベル・カント
アン・パチェット/山本やよい訳
ハヤカワepi文庫 本体価格1,240円+税
528ページ

実際に起こった監禁事件から着想を得ているのに、人質とゲリラの交流はとき笑えてときにロマンティック。読み終わったあと、「わたしたち」と「かれら」を何が隔てるのか、考えずにいられなくなります。(担当編集H)


へヴィー級

ニックス


ニックス
ネイサン・ヒル/佐々田雅子訳
四六判上製 本体価格3,500円+税
712ページ 2段組

とほほな主人公なのですが、その母フェイの肝の据わりっぷりたるや! 頑固な老婦人が好きな方なら絶対気に入るはず。実現しそうにないドラマ化企画では、メリル・ストリープが彼女を演じるはずだったそうです。(担当編集N)



逃れる者と留まる者

逃れる者と留まる者
エレナ・フェッランテ/飯田亮介訳
四六判並製 本体価格2,600円+税
527ページ

失われた女の子

失われた女の子
エレナ・フェッランテ/飯田亮介訳
四六判並製 本体価格3,000円+税
608ページ

〈ナポリの物語〉シリーズ
ジュンパ・ラヒリは、この著者の本を原文で読みたくてイタリア語を習い始めたそうです。ページターナーであり、毎回叫びたくなるクリフハンガーのラスト。それが四冊も。お得としか言いようがありません。(担当編集N)
※第1巻『リラとわたし』、第2巻『新しい名字』へのリンクは書名をクリック



ピュリティ

ピュリティ
ジョナサン・フランゼン/岩瀬徳子訳
四六判上製 本体4,200円+税
832ページ

いろんな意味で個性の強い作家フランゼン。本書はフランゼン入門篇としておすすめです。『大いなる遺産』オマージュで、後味もよく、舞台は壮大。本書の次は『コレクションズ』、その次は『フリーダム』へどうぞ。(担当編集N)



モスクワの伯爵

モスクワの伯爵
エイモア・トールズ/宇佐川晶子訳
四六判上製 本体価格3,600円+税
624ページ

舞台は、今もモスクワにある超高級ホテル、メトロポール。ほぼ室内劇で、登場するのは美しいものばかり。悲しみさえ甘やかです。伯爵を中心とした上流階級のドラマに一度ひたれば、本を閉じるのが惜しくなる600ページ。(担当編集K)



七つの殺人に関する簡潔な記録

七つの殺人に関する簡潔な記録
マーロン・ジェイムズ/旦敬介訳
A5判上製 本体価格6,000円+税
720ページ 2段組

A5判2段組700ページ、文字通りヘヴィーな1冊。レゲエ・スターであるボブ・マーリーの暗殺未遂事件を核に、ギャング、CIA、さらには亡霊まで、70名以上の人物が事件の真相を語りまくる! 一人ひとりの証言は短いので、ちびちび読むのがおすすめ。(担当編集K)


昏き目の暗殺者(上)

昏き目の暗殺者(下)

昏き目の暗殺者 上・下
マーガレット・アトウッド/鴻巣友季子訳
ハヤカワepi文庫 本体 各1,200円+税
上巻461ページ 下巻414ページ

2019年のノーベル賞受賞確実と思っていたのに受賞ならず。しかし2020年こそはアトウッドだ! 発表までに読んでおくと、まわりに自慢できるブッカー賞&ハメット賞W受賞作。文学、ミステリ、SFファンも楽しめる! (担当編集Y)


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秋だ! 読書だ! ミステリだ! 
早川書房2018-2019海外ミステリ総ざらいPart1

秋だ! 読書だ! ミステリだ! 
早川書房2018-2019海外ミステリ総ざらいPart2



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