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8月18日『機龍警察 白骨街道』発売記念【著者メッセージ】

8月18日の『機龍警察 白骨街道』発売を記念して、著者の月村了衛さんが読者のみなさまにメッセージを寄せてくださいました。

月村さん20170915_八重洲ブックセンター本店

庶民の怨念と文学の強度

月村了衛

『白骨街道』のタイトルと内容は、前作『狼眼殺手』刊行直後には決めていた。ミャンマーのロヒンギャ虐殺に材を取ろうと。オリンピック開催は決定していたが、コロナ禍などまだ存在しなかった頃である。それがいざ連載を始めてみると、日本の状況をインパール作戦の「白骨街道」に喩える言説が日ごとに目に付くようになっていった。予想もしていなかった事態であった。さらには政府による代理店への丸投げと中抜きの実態など、以前から存在したこととはいえ、誰も責任を取らぬまま放置される構図が可視化された。
 決定的 だったのは連載中に勃発したクーデターだ。これには参った。この連載を一体どうすべきか。最初から書き直そうかとも考えたが、思案の末、そんな必要などないことに気が付いた。結局、物語は当初の構想をほぼ変えることなく着地した。そうだ、『白骨街道』という物語は現実の変容に耐え抜いたのだ。
 現代を 照射する物語として構想した「機龍警察」が、ようやくその本質を実証できたように思う。この上は、白骨と化した怨念と文学の強度を堪能して頂きたいと願うばかりである。

月村了衛(つきむら・りょうえ)
1963年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年に『機龍警察』で小説家デビュー。2012年に本作『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、2013年に『機龍警察 暗黒市場』(以上ハヤカワ文庫JA)で第34回吉川英治文学新人賞、2015年に『コルトM1851残月』(文春文庫)で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』(幻冬舎文庫)で第68回日本推理作家協会賞、2019年に『欺す衆生』(新潮社)で第10回山田風太郎賞を受賞。2017年に上梓したシリーズ長篇第5作『機龍警察 狼眼殺手』(ハヤカワ・ミステリワールド)は、「ミステリが読みたい! 2018年版』国内篇の1位を獲得。

©Hayakawa Publishing Corporation


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