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さまざまな地下をめぐる、文学、神話、思索にあふれた旅。ガーディアン紙「21世紀ベスト・ブック100」に選ばれた『アンダーランド 記憶、隠喩、禁忌の地下空間』試し読み公開中

『アンダーランド 記憶、隠喩、禁忌の地下空間』は英国人作家ロバート・マクファーレンが、さまざまな地下をめぐったノンフィクション。ナショナル・アウトドア・ブック・アワードをはじめ、ウェインライト賞、スタンフォード・ドルマン紀行文学賞を受賞し、英ガーディアン紙が選ぶ「21世紀ベスト・ブック100」に選出されました。

ロバート・マクファーレンは1976年、英国ハラム生まれの冒険家・作家。自身が登山や探検を行うネイチャーライターであり、自然や探検を描く筆致に定評がある作家として活躍するかたわら、ケンブリッジ大学大学院のフェローとして人新世についての講義を受け持つなど教鞭をとっています。

本書で扱われているのは、自然の洞窟から、鉱山の地下という意外な場所に設けられたダークマター観測所、大都市パリの下で独特の発展をつづける地下都市、地下深くを流れる川、北の極限の洞窟に残る古代の人々の痕跡、核廃棄物の保存所まで多岐にわたっています。
ここでは、グリーンランドで解けつつある氷と、そこに生きる人々を著者らしい冷静かつ愛情あるまなざしで描いた、第10章「時の青(グリーンランド、クルスク)」の前半を公開します。

アンダーランド_帯

『アンダーランド 記憶、隠喩、禁忌の地下空間』
UNDERLAND: A Deep Time Journey
ロバート・マクファーレン、岩崎晋也訳。早川書房より発売中

―――

 夏の終わり、グリーンランド南東部のクルスク島の沖、海峡に浮かぶ氷山が汗をかいている。その氷山は大きく、おそらく海面から頂上まで30メートルほどで、先の丸い帆のような形をしている。白い輝きは濡れた蝋のようだ。海面の下にある塊が暗緑色のオーラを放っている。
 海峡の濃い青と、雲ひとつない空の淡い青。昼の月が盾の形をした山の上に出ている。海峡の反対側では、氷河が水面まで落ちている。そこまでの距離は10キロほどで、氷山の分離した表面がわずかに見える。
 潮は引いている。村の浜辺で男がひとり、何かをのぞきこんでいる。脚をまっすぐ伸ばし、腰は曲げている。袖をまくり上げていて、腕は肘まで赤い。蛍光イエローのジャケットと、防水の作業服を着ている。ネズミイルカの死骸が海藻のついた岩に横たわっている。男は片手でネズミイルカの黒いヒレをつかみ、反対の手に持った解体用ナイフで肉を引き裂きながら、ヒレを手前に引いて皮を剥がす。ウェットスーツを脱ぐネズミイルカの手伝いをしているかのようだ。
 100軒ほどの木造住宅が氷河で均された片麻岩の上に建っている。これがクルスクだ。村というより、鳥小屋の集まりのように思える。家には赤や青、黄色など明るい色の外板が張られ、その釘の頭には錆び止め用の白いペンキが塗られている。たいていの家は冬の嵐に備えて鉄のケーブルで固定されている。極冠を吹きおろすピテラクというカタバ風がここでは猛烈な強さになり、地表から岩以外のすべてを引きはがす。建物の陰に何メートルもの吹きだまりを作り、海岸沿いの海氷を砕く。
 今日は風がない。空気は暖かい。前例がないほどの暖かさだ。氷山は汗をかいている。男がネズミイルカを解体している。防波堤の30センチほど下には白っぽい丸々とした物体がうなりでわずかに揺れながら浮かんでいて、防波堤に打ちこまれた鉄の梯子の下のほうにロープで結びつけられている。それはワモンアザラシの死骸で、頭と前ひれは切り落とされ、尾ひれで縛られている。死骸はしばらく置かれたままで、いくぶん緑色に光っている。内臓は昆布のあいだを漂っている。クルスクはこのひと月、不漁が続いている。
 湾の東側、岩山の陰に、いくつもの白い木製の十字架が満潮線のあたりまでちらばっている。大きさはまちまちだ。横木がぐらついているものもある。遠くからだと、まだらに降った雪か、急な斜面を滑り降りた氷河のかけらのように見える。それは墓地だった。そこは村では貴重な、遺体を埋葬するだけの土壌がある場所なのだ。
 高い遠吠えが空気を切り裂き、すぐに数十の遠吠えが加わってコーラスになる。クルスクのハスキー犬たちがすわり、空に向かって声を上げている。背筋を伸ばし、声のかぎり、オオカミのように吠えている。1頭はあまりの強さで引くために鎖が棒のように張り、吠えるたびに首輪で首を絞められる。
 4人の子供と1匹の子犬が大きなトランポリンに乗って一緒に跳ねている。着地のときには子供たちの足がトランポリンの下の岩盤に届きそうになる。犬は脚を投げだし、身体を丸めている。遠吠えが始まると子犬も吠え、やがて子供たちまで吠えて、一緒に飛び跳ねながら声を上げる。
 氷河は汗をかき、男はネズミイルカを解体し、子供と犬は跳ねながら吠えている。

 わたしがグリーンランドに行った2016年の夏は暑く、世界のあちこちで、氷に長く守られてきた秘密が露わになっていた。雪氷圏の氷が解け、埋まっていたほうがよかったものが表面に出てきた。
 カラ海とオビ湾に挟まれたヤマル半島では、1万1千平方キロメートルもの永久凍土が融解した。共同墓地や動物の死骸が埋まった場所がぬかるみに変わった。70年前に炭疽によって死んだトナカイの死骸が大気に晒された。23人がそれに感染し、皮膚に黒い傷ができた。子供がひとり亡くなった。ロシアの獣医は白い汚染防護服を着てその地域に入り、トナカイとその飼育者にワクチンを接種した。ロシアの軍隊は感染者や動物の死体を高温の炉で火葬した。ロシアの農学者は、その土地にはもう何も育たないだろうと語った。ロシアの疫学者は、北極圏の動物の死骸が埋まったほかの場所や浅い墓地から、1800年代後半に亡くなった人の身体に残っていた天然痘や、マンモスの凍った死骸で長らく休眠状態にあった巨大ウィルス、さらに病原菌が放出されるだろうと予想した。(*1)
 1984年以来インドとパキスタンが「忘れられた紛争」を続けてきたカラコルム山脈のシアチェン氷河では、氷河の後退により、使用済みの薬莢やピッケル、弾丸、捨てられた軍服、車のタイヤ、ラジオセット──さらには虐殺された人の死体などが地表に出てきている。(*2)
 グリーンランド北西部では、氷に閉ざされた冷戦時代のアメリカ軍基地とそこに残された有毒の廃棄物が表出しはじめている。キャンプ・センチュリーは1959年にアメリカ陸軍工兵隊によって地下に造られた。極冠に掘られた坑道のなかの隠れた町だ。長さ3キロに及ぶ通路のネットワークには研究所や店、病院、映画館、教会があり、200人の兵士が生活することが可能で、動力源には世界初の移動式原子力発電装置が用いられていた。基地は1967年に廃棄された。そこを去るとき、兵士たちは原子炉を搬出した。だがそれ以外の設備はそのまま、生物的、化学的、そして放射性廃棄物も含めて、国防総省により開示された文書によれば、グリーンランド北部の降りやまない雪によって「永遠に保存される」(*3)ものとして氷の下に残された。およそ20万リットルのディーゼル燃料、どれだけの量があるかわからない原子炉冷却材やポリ塩化ビフェニルなどの汚染物質は、いまもそこに埋められている。ところが地球温暖化に伴い、予測によれば、今後キャンプ・センチュリーのある地域では積雪を上回る速さで融解が進む。わたしが地底の国で何度も見てきたことがここでも繰りかえされ、永久に葬られたと思われていた不都合な歴史がまたしてもその姿を晒そうとしている。
 その夏の北極圏は記録的な暑さで、融解量もまた膨大だった。北極圏を覆う海氷の量は最低記録を更新した。グリーンランドの首都ヌークでは気温が摂氏24度にまで上昇した。デンマークの気象学者は温度計をもう一度確認したが、間違いではなかった。過去10年間、北極圏では前世紀の2倍の速さで氷河が失われている。その年はさらに、例年よりもひと月早く氷が解けはじめ、融解水はとてつもない速度で流れた。氷河学者は数理モデルを見直したが、間違いではなかった。
 融解水の流出は4月から激しく、極冠に青と緑の湖が生じ、氷河の上に川をなして流れた。極冠で融解水が増えたことによって日光の反射率まで変化した。より多くの太陽光が吸収されて気温が上昇し、その結果さらに氷河は解け、するとさらに多くの光が吸収され──この典型的なフィードバック・ループを止められるのは冬の到来だけだった。
 グリーンランドの氷河は轟音を立てて分離した。氷山はフィヨルドで汗を滴らせた。極地研究者は北極海の氷がすべて解けてなくなる時期を予測した。最も多くの氷が失われたのは北西部と、わたしが行くことになる南東部だった。
 氷の消失に関しては、不気味な話が広まっていた。ひとりのロシア人ビジネスマンがラクダ革のコートを着て、ブリーフケースを持って東海岸にやって来たが、帰った痕跡がない。日本人ハイカーがひとり国の西側で消え、何週間も行方知れずのままだった。地元の人々は冗談半分に、氷河をさまよい、不用心な旅人を捕まえるという野生動物キスワクが出たのだと語った。それは氷河のクレバスや薄い海氷などを動物として表現したものだ。
 その地域にはそのとき、人が世界の表面から落ちてしまう場所はいくつもあっただろう。(*4)

「あんな年はめったにないよ」とマットは言う。「6月にはフィヨルドから海氷が消えてしまった。冬になっても積雪はごくわずかだった。そんな年は誰も見たことがない。2週間前には、クルスクの沖でクマが1頭泳いでいた。自暴自棄になってたんだろう。誰も撃とうとしなかったよ」
 マットは19歳のときからクルスクで暮らしていて、今年で16年目だ。パートナーのヘレンと、店と学校のすぐ上にある青い外板の家に住んでいる。ふたりともクライマーで、スキーヤーで、危険な場所でガイドをしている。ふたりから感じられる静かな自信は、厳しい自然のなかで発揮される高い能力を持っているが、必要な場面にならないかぎり自分の能力をあえて誇示しようとしない人に特有のものだ。自分の意志で加わったグリーンランドのコミュニティとの関わりは深く、そのことはマットが村で過ごしてきた時間の長さやそこで彼が築いた友情の厚さからもわかる。
「わが家へようこそ!」到着すると、マットは言う。家のなかは明るく風通しがよく、床は淡い色の木材で、壁は白い。縮尺の大きなこのあたりの地図が一枚壁に張られている。海岸線はサンゴのように複雑な形だ。席に着き、紅茶を飲む。マットとヘレンに、たがいに友人の3人の訪問者。わたしと、作曲家で指揮者であり、物腰が柔らかく愛嬌があり、知りあって20年になるビル・カースレイク、そしてもうひとりのヘレン。ヘレン・モートとは知りあってまだ2年ほどだが、知り合いのなかでも最高の才能を持っているひとりだ。もうひとりのヘレンと区別するために山ではヘレン・Mと呼ばれ、クライマーでランナーで、類い稀な才能を持つ作家だ。謙虚すぎるほどで、恐るべき天賦の才に恵まれ、人や景観と接するときはいつも繊細だ。わたしたちは南極大陸のほかでは最大の氷河を持つグリーンランドの東海岸の山々に登り、その氷のなかにある地底の国を探検するためにここに来ていた。
 わたしは西側の窓辺に行く。そこから湾が見渡せる。母親たちと子供たちの集団が海沿いの道を歩いている。みな黒い虫除けのヘッドネットをかぶり首できつく留めている。まるで葬式へ向かう一行か遠足中の養蜂家たちのようだ。
「最近クルスクでよく見られる光景だよ」マットがわたしの近くに来て言う。「20年前には蚊はいなかった。でもいまは、暖かくなったせいで蚊やブヨがやってきた。夏のあいだじゅう頭にネットをかぶっている人もいる」
 クルスクはグリーンランド東海岸にある5つの居住地──この巨大な島にかけた5本の指──のひとつだ。3千人に満たない人々がおよそ2千5百キロに及ぶ海岸に住んでいる。グリーンランドの小さな居住地の多くと同じように、クルスクの社会は時代の変化によって切り裂かれている──遊牧と暮らしていけるだけの狩猟というかつての文化に近代的な生活が入りこみ、停滞やアルコール依存症などの問題を引き起こしている。
 ヘレンはわたしに頑丈な体つきをした60代前半のグリーンランド人、ジオを紹介してくれる。
「ジオは僕の父親だ」とマットは言う。「感傷で言ってるわけじゃない。ジオは僕の父親になり、僕はジオの息子になったんだ」
 ジオはよく笑うが、そのとき目のまわりの笑い皺はほとんど耳から耳までつながる。とても腕のいいハンターで、船と犬の扱いのうまさで知られており、伝説的な体力の持ち主だ。
「ふた冬まえ、大嵐が吹いて、猟をしていた男たちはみな引きあげることになった。嵐はすぐに激しくなり、犬がそりを引けないほど雪が積もった。村に戻るには峠を越える必要があるが、みんな尻込みしていた。状況はとても深刻だった。そんなときにジオはみんなの前に出て、黙々と6時間道を切り拓きつづけた。そして無事に帰ってきた」
 ジオは片肘をついてローマ人のようにソファに横たわり、静かに微笑みながら話を聞いている。彼とマットとヘレンは片言の英語と片言のグリーンランド語で話している。流暢に話せる共通の言語がなくても、親密な関係を築く妨げにはならない。彼らは心を許して身体に触れあっている。すわるときはしばしばたがいの肩に手をまわし、脚を密着させている。
 ジオは子供のころ、1960年代に行われていた「北部デンマーク人」計画という問題のある企画の一環として、1年間デンマークに連れていかれたことがある。グリーンランド人の子供をデンマーク人家庭で生活させ、デンマーク人に同化させるためのものだった。
「そのことを尋ねると、ジオはいまだに身体を震わせるわ」とヘレンは言う。
 ジオはマットとヘレンの招きで2度イギリスに行ったことがあり、そのたびに片腕にひとつずつタトゥーを彫った。彼は腕をまくり、それを見せてくれる。「これはグラスゴーで」と言って、右の前腕の十字を示す。「これはケンダルで」今度は左手の錨を指さす。
「ジオを連れてひと晩グラスゴーの街に出たんだ」とマットが言う。「かなり荒っぽいパブに入った。ジオはそこではちょっと異質だった。その薄汚れた店にいた客たちはジオを見て、からかってやろうと思った──でも改めてジオを見て、やめたほうがいいと気づいたらしい。金曜の晩にグラスゴーにたむろするやんちゃな連中でも敵わない相手だと見てとったんだろう」
 ジオは部屋の隅に立てられていたギターを取り、静かでもの悲しいグリーンランド東部の歌をうたう。
 ドアにノックの音がする。かつてマットと一緒に海岸沿いに北へ船旅をしたことがあるアイスランドの船乗りのシギーだ。手に入れたばかりの美しい木造の古い船でレイキャビクから来たところだった。緑色のモールスキンのズボンを着ていて、静かに話す。
「今年は氷がないね」とシギーは言う。「どこへでも行けるし、自由に探検できる。デッキではTシャツ姿だよ」
 彼は肩をすくめる。
「こんな天候であるべきではないが、僕ら船乗りには過ごしやすい」
 わたしは古い英語のunweder ──現代の綴りではunweather ──という言葉を思い起こす。それはあまりにひどく、まるでほかの気候やまったく異なる時代から来たのではないかと思われる天候を意味する。グリーンランドはいまそれに見舞われている。
 ジオは演奏をやめ、ギターを置き、ごく当たり前のことのように言う。「10年後には雪も氷も、狩りも犬もみんななくなるさ」
 海氷は減り、グリーンランドを訪れる船乗りには優しいが、そのためにグリーンランド人は狩猟ができなくなっている。海氷は1年をかけて、晶氷、グリース・アイス、ニラス、板状軟氷という各段階を経てしだいに固く凍っていくが、それが多くの場所で見られなかった。海水温が海水の氷点であるマイナス1.9度を上回っているためだ。海氷の上を安全に移動することができなければ、狩猟はむずかしい。アザラシはさらに沖に出てしまい、クマは弾丸ではなく飢えのために死んでしまう。峡谷やフィヨルドを渡るのは危険だ。スノーモービルに乗ると、薄い氷を突き破ってしまう危険がある。狩猟は居住地でいまだに続いている数少ない伝統的なグリーンランド人の生活様式だが、この世界的な気候変動のために消え去ろうとしている。
 氷は社会生活に関わっている(*5)。氷が変わることで、近隣の人々の文化や言語、物語もまた変わる。クルスクでは、近年の変化は明らかだ。村の住民は不安定で歪みの生じやすいこの惑星に振りまわされている。氷の融解や強制移住、さらにはほかの要因によって、グリーンランドで暮らす人々の精神的、身体的健康は深刻な影響を受け、うつ病やアルコール依存症、肥満、自殺などの発生率は、小さなコミュニティでとくに高まっている。グリーンランドのうつ病患者の割合を調べたアンドリュー・ソロモンは、「この土地の氷の消失は、環境だけでなく、文化に対する災害なのだ」(*6)と書いている。カナダ北極圏のバフィン島のイヌクティトゥット語の話者たちのあいだでは、気候と氷の変化、そしてそれに伴う人々の変化を同時に表す言葉が使われはじめている。その言葉、「ウギアナクツク」(*7)は、「奇妙な、予測できないふるまいをする」ことを意味する。だが、どうなるか予測不可能な氷とともに暮らすとはどのようなことかを知っている人々がもしいるとすれば、千年ものあいだその変化に合わせて生きてきたイヌイットをおいてほかにいないだろう。
 そのあと、ヘレンがわたしにクルスクのコミュニティを代表するふたり、フレデリックとクリスティーナを紹介してくれる。クリスティーナはクルスクで生まれ育ち、村の学校の先生をしている。フレデリックは西グリーンランド出身だが、かつてクルスクに移住してきてクリスティーナとともに暮らしている。ふたりとも深い教養を持ち、自分たちの置かれた状況を理解していて、幻想は抱かず、ここでの生活が耐えられる限界に近づいていることを強く意識しているけれども、同時にクルスクがずっと存続していることで証明されている人々のねばり強さを誇りに思っている。
「気候変動はここで生活していると強く感じられるよ」とフレデリックは言う。「新たな生物の種がやってきて、古くからの種が消えてしまった。秋に雷が落ちる。海氷は昔はこんなに厚かったんだ」彼は2メートル数十センチの床から天井までを示して言う。「でも毎年薄くなってきて、この春にはこんなに薄くなってしまった」彼は両手で前腕くらいの長さを表す。「これでは、危険で犬ぞりを出せない。狩りはしづらくなった。遠出もできない」
 彼は肩をすくめる。「生活だけでなく、気持ちも変わりつつある」クリスティーナはそばで聞いている。隣の部屋に行き、60センチほどの長さの派手な色に塗られた木のカヌーを抱えて戻ってくる。その上にはシマウマとライオン、トラ、キリンが一列に並んでいる。
「息子が学校で作ったの」とクリスティーナは言う。「ノアのカヤックと呼んでいて、地球温暖化による洪水から動物たちを守るために作ったそうよ」
 そのカヤックに人間は乗っていない。
 氷が解けることを喪失ではなくチャンスだとみなす人々もいる。氷河が後退すると、外国の投資家が集まり、グリーンランドの豊富な鉱物資源は採掘しやすくなった。「融解によって大金持ちがたくさん生まれるだろう」グリーンランドに来るまえ、ある地質学者が言っていた言葉だ。「グリーンランドでは大規模な鉱業が盛んになるだろう。それまでは地下を掘るといえば、せいぜい採石場くらいしかなかったのに」
 ここ2、3年で、グリーンランドでは50件以上の鉱業権が認められ、金、ルビー、ダイヤモンド、ニッケルや銅などの試掘が行われようとしている。グリーンランドの南端に位置する、失業率の高いナルサークの町には、世界最大級のウラン鉱床がある。ノーベル物理学賞の受賞者でマンハッタン計画に参加していたニールス・ボーアは、鉱床が発見されて間もない1957年にナルサークを訪れた。現在、中国とオーストラリアの合弁企業が、ナルサークの背後に露天掘りの採掘場を造り、ウランだけではなく、風力タービンや携帯電話、ハイブリッド車、レーザー機器などに使われるレアアースを採取する採掘計画を提案している。
 クルスクでのその日の夕方、村の上空は日没で真っ赤に染まり、のこぎりの歯のような尾根に背後から薄紫とオレンジの光が当たって、燃えるようなうね雲がかかっている。山頂光が信じられないほど明るい。
「こうした夕焼けを生んでいるのは極冠なんだ」とマットが説明してくれる。「おそらく世界でいちばん大きい鏡だからね。何十万平方キロメートルにも張りめぐらされた氷が地平線に沈む太陽光を反射するんだ」
 みなで歩き、村の中心にある露出した岩山の頂へ、つづら折りの道を登っていく。わたしは岩の西側の端まで行ってフィヨルドに沈む夕焼けをよく見ようとして、足を止める。
 その下の入り江は村のゴミ捨て場だった。大量のゴミ袋やプラスティックの箱、割れたカヤック、合成樹脂の食器棚や白い冷蔵庫などが崖から投げ落とされ山のように積まれている。この薄暗さだと、まるで海岸線に向かって氷が舌を伸ばしているように見える。後退ではなく、前進する氷河だ。

 氷は憶えている。その記憶は詳細で、100万年、あるいはそれ以上保たれる。
 氷は森の火事や海面上昇を憶えている。11万年前に最後の氷河期が始まったころの大気の化学組成を憶えている。5万年前の夏に太陽光が何日間降りそそいだかを憶えている。完新世が始まったころ、雪が降っているときの雲の温度が何度だったかを憶えている。1815年のタンボラ山、1783年のラキ火山、1482年のセント・ヘレンズ山、1453年のクワエ火山の噴火を憶えている。古代ローマで盛んに金属の精錬が行われたことや、第二次世界大戦ののち数十年にわたって石油に致死量の鉛が含まれていたことを憶えている。それは、わたしたちの住む地球がすぐに変化し、またすぐに元に戻ることのできる気まぐれな惑星であることを憶えていて、わたしたちに告げる。
 氷は憶えている。その記憶は青い。
 極冠に雪が降ると、フィルンと呼ばれる柔らかい層となって積もる。フィルンが形成されるとき、空気や埃、あるいはほかの分子が雪の結晶に閉じこめられる。さらに雪が降り、すでにあるフィルンの層の上に積もると、空気はそのなかに封じこめられる。その上にさらに、そしてさらに雪が降る。重い雪がはじめの層の上に積みあがり、それを圧縮して、雪の構造を変化させる。結晶の複雑な構造は崩れていく。雪は氷に変わっていく。氷の結晶が形成されるとき、封じこめられた空気は小さな泡に押しこめられる。こうして空気は保存される。その気泡のひとつひとつが博物館であり、はじめに雪が降ったときの大気のしるしを残す銀の聖遺物箱なのだ。できたばかりのとき、気泡は球体をしている。氷の上に厚く層が積みあがると圧力が高まり、気泡は長い棒や平らな円盤、あるいは薄い輪になる。
 深みにある氷は青い。それは世界にあるどの青とも似ていない──時の青だ。
 時の青はクレバスの奥にわずかに見える。
 時の青は氷河の分離面にわずかに見える。10万年前にできた氷がはるか下からフィヨルドの海面に浮かびあがってくる。
 時の青はその美しさで人の心と身体を引き寄せる。
 氷は記録の媒体であり、貯蔵の媒体だ。数千年にわたるデータを集め、保存している。ハードディスクもテラバイトのデータを処理するブロックチェーンも、すぐにアップデートされるか時代遅れになるのに対して、氷のテクノロジーは何百万年も変わることがない。その記録を読む方法を身につけさえすれば、氷があるかぎりどれだけ過去へ──下の層へ──でも遡ることができる。閉じこめられた気泡は大気の組成を細かい点まで保っている。雪に含まれる水分子の同位体含有量から気温がわかる。雪に混じった硫酸や過酸化水素などの不純物は、過去の噴火や大気汚染の程度、バイオマス燃焼、海氷の範囲やそこからの距離を表している。過酸化水素の濃度は雪にどれだけの太陽光が降りそそいだかを示している。こうした意味で氷は「媒体(ミディアム)」だとみなすなら、氷は超自然的な意味の「霊媒(ミディアム)」でもあると考えられるかもしれない。それは悠久の時間を隔てて死者や埋葬された者と意思疎通することを可能にし、それを通じて更新世の遠い言葉を聞くことができる。
 氷は多くのことを憶えている──それでも、失われてしまった記憶もある。(*8)
 2千年前の氷にかかる重みはときに80キログラム毎平方センチメートル近くに達する。この氷のなかの空気は強く圧縮されているため、ドリルで深い場所から掘り出した氷は空気の膨張によって音を立てて割れる。氷河から射撃練習場のような音がするのはこのためだ。またとても古い青い氷を水やウィスキーに落とすと、グラスが割れてしまうことがあるのもこのためだ。
 さらに深く、8千年から1万2千年の氷では、気泡は氷の構造に含まれる空洞に留まっていられないほど高い圧力を受けている。気泡はもはや目に見えず、氷と結びついてクラスレートと呼ばれる氷と空気の化合物になる。クラスレートは媒体として読みとるのはむずかしく、そこに含まれるメッセージは微かで、わかりにくい。
 1マイルの深さにある氷はただ「灰色の幽霊のような帯として(中略)光ファイバーの照明を当てたときにのみ」(*9)見分けられる。そして氷は流れるため──氷は強烈な圧力のもとでも流れつづける──記録は歪められ、層は折れて滑り、つながりはほとんど読みとることができなくなる。
 グリーンランドと北極圏の極冠の最も深いところには、何十キロもの深さの数十万年前の氷が存在し、その重みで底の基盤岩を地殻へと押しさげている。その底では、圧縮された氷は毛布のように基盤岩から放出される地熱を封じこめている。いちばん深い場所の氷はその熱のいくぶんかを吸収し、ゆっくりと解けて水になっている。そのため、北極圏の極冠の地下数キロのところには真水の湖がある。そうした氷河の下に埋まった貯水池は500カ所を超え、地図には光線の屈折という形で現れている。何百万年ものあいだそれは隠れたままで、まるで土星の月エンケラドスに存在すると考えられている氷で覆われた海のように馴染みのないものだった。
 人間の心が、人生の後半になると子供のころの出来事を──それらはあとに続く記憶が積み重なった底に埋められている──思いだすのに苦労するように、氷の最古の記憶は取りだしにくく、失われやすい。

 わたしたちは潮が満ちてくるなか、昆布の絡まった岩に足を滑らせながら、クマよけのための青い桶や武器、荷物を運び、船に載せる。
「物を置くときは下に注意して」とヘレンが言う。「アザラシの内臓とかタラの頭とか、何でもかんでも岩にこびりついているから」
 荷物を載せ、確認するのに30分かかる。それからジオはヤマハ1200のエンジンをふかし、ドックの外へ向け、海峡へと船出し、「小さな氷」を意味するアプシアジク氷河を目指す。
 高い鳴き声がする──耳に残り、やんでからまた繰りかえされる音で、色で表すなら金や銀だ。首筋がぞくっとする。
 1羽のアビ、いや、3羽のアビが隊列を組んで海峡を渡り、わたしたちと同様に北へ向かっている。大きな鳥だが身体の線は美しく、シルエットは滑らかで、羽でできているのではなく、水が鳥の形を取ったようだ。アビの鳴き声は10年前に、スコットランド北西部のスイルヴェンの湖で狩りをしたとき以来聞いていなかった。そのまえはさらに10年前、ブリティッシュコロンビア州の森に囲まれた湖でのときまで遡る。
「まさに北の鳥だね」とマットが言う。
 アビの姿が見えなくなってからも、ずっと声だけが聞こえている。
 船は逆巻く波をかき分けて進む。潮水がしぶきを上げ、空気は冷たく、顔を突き刺す。すべての方向に峰がせり上がっている。深くえぐれたフィヨルド。この景観の規模は、わたしがこれまでに経験や想像したあらゆるものを超えているという思いが湧きあがってくる。海岸線ははるか遠くまで続き、その西側には極冠が張りついていて、そのあまりの広さにそれ以外のあらゆる特徴、そして白と青以外の色はすべて消えてしまう。身体のなかに気力がみなぎり、とてつもない旅が始まったという興奮がこみあげてくる。クルスクに戻ってくるのは数週間後になる。
 低い山には雪がかかっている。露出した岩は金と茶色、赤、白が混じっている。それは地表に出ている世界最古の岩石のひとつで、大昔にはアウター・ヘブリディーズの片麻岩と、引き裂かれた本のページのようにつながっていた。数億年前には、そのふたつの海岸線は結びついていたのだ。このひどく馴染みのない土地とわたしにとってわが家とも思えるスコットランドの島々は、悠久の時間のなかでは近い関係にある。
 クルスクからアプシアジクまでは海峡を挟んで10キロほどだが、泳いで渡れそうに見える。8キロほどの道のりの氷河には、ポケットに手を入れたまま2、3時間で登れそうに思える。ただどちらも、実際にやれば命はないだろう。
 景観を小さく見せるこの強烈な幻想はグリーンランドの澄み渡った空気によるもので、このときをはじめとして、わたしはここで何度も規模を取りちがえることになる。ここは人に錯覚を起こさせ、目をだまし、一見明瞭だがじつは幻想にすぎない光景を見せる場所なのだ。岩と氷の壁は音を反射して間違いを誘う。前のほうで起こっている出来事が、後ろで起きているように聞こえる。普段見慣れているものが存在しない。建物も車もなければ、遠くに見える人もいない。この地形を構成するのは岩や氷、水などわずかな要素のみで、その本当の大きさが定かではなくなる。
 ジオは巧みに片手で船の向きを変え、海峡の中央あたりにある黒い岩の島々をよける。
「何日かまえにこのあたりにシャチがいた」とマットが言う。「それからイワシクジラも。姿が見えなくても、噴気孔から潮を噴く音でわかる」
 アプシアジクに近づくと、海水には青白い気泡が浮かび、大きな氷が船体にぶつかってくる。ジオは鮮やかにコースを取るが、やがて厚い氷を避けることができなくなり、速度を落としてそのあいだを進んでいく。ドス、ドカ、ドサ、ドシンとぶつかり、氷河の鼻先に近づく。
 アプシアジク氷河は海に浸かっている。その壁は幅8百メートルほどもあり、分離したばかりのところは淡い青色だ。この面の上は氷が崖のように切りたっているが、その先の中央では岩が氷を突き破るようにそびえており、溶けた水の黒い筋を見せている。
「あれは最近のものだ」とマットが言う。「2年前にはなかった──以前は一面凍っていたんだ」
 わたしはその露出した岩を、のちに氷河に覆われたべつの島で眠ることになったときに、もっと大きな氷河の高所がやはり解けて露出しているのを見て思いだすことになる。
 ジオは船の速度を落とし、エンジンをアイドリングさせる。氷の面と4百メートルほどの距離を保って平行に進み、大きな氷山の分離が起きたかどうかをたしかめる。ジオは氷河を指さし、それからクルスクと、氷河の端から突きでた岩の露出した半島がある海峡のほうへ向きなおる。
「50年前、わたしが子供だったころは」と、彼は海峡のなかに見える半島を示しながら言う。「あそこには氷があった」
 それから、海峡のさらに先にある島を指さす。
「親父の時代には、あそこに氷があった」
 彼はクルスクを指さし、指先を揃えて両手を耳にあててからぱっと離し、どこかで爆発があったような身振りをする。
「かつて、クルスクでは、氷河の轟きが聞こえたんだ。いまはなんの音もしない」
 ジオの人生とともに、アプシアジク氷河ははるかに後退してしまい、いまでは村まで分離の音は届かない。氷山の融解は日々の生活を包む音を変えてしまった。氷河は静かなものになった。
 引き潮のなかで、白い石英と黒い雲母の岩と砂が混じりあった海岸に船から装備を降ろす。引いた潮が残していった氷山のかけらが海岸沿いの砂の上にある。遅い午後の日差しで青みがかった銀色に光っている。それはどこか疲れきったようだ。海に漂ってゆっくりと打ち寄せたり、沖の海流で回転している氷山のかけらもある。
 荷物を担ぎ、そこから270メートルほどのところまで4往復して運ぶ。岩に挟まれた浅い谷間を登っていくと平地があり、土にはコケが生え、あたりには岩が転がり、海に向かって緩やかな川が流れている。
 平地は消えた氷河が流れていった道だ。海に向かっている氷堆石がかつての氷河の規模を表している。わたしたちは氷の幽霊のなかにキャンプを設営する。
 少しまえに読んだ記事のことを思いだす。小型飛行機がグリーンランドの海岸沿いを飛んでいると、GPSのナビゲーションシステムから衝突の危険を告げる警告音が鳴ることがあるという。それはかつて氷河があった場所が地図に入力されていて、氷河の後退の速さに修正が追いついていないため、氷が残したデジタルの幽霊に飛行機が突っこみ、それを通過しているとシステムが判断するためだ。
 テントのまわりの空気に何か白いものが混じっている。それは雪でも埃でもなく、大気に電気が流れ、火花が放たれているように見える。
 灰色のカモメが2羽、上昇しながら東へ、翼を曲げて頭上を飛んでいく。1羽のカラスが旋回し、鳴き声を上げ、それからわたしたちが荷物を積みあげた迷子石のあたりに着地する。つややかな翼を畳みながら下ろし、頭を傾かせて興味深そうにこちらを見る。
 テントは一列に並べてそれぞれ2メートルほど離して張る。それから、クマが侵入できないように境界線を設置する。ホッキョクグマは最大で30キロメートル以上離れたところからも食べもののにおいを嗅ぎつける。もしクマに遭遇したら、クマは間違いなくそのはるか以前から人間の存在に気づいていて、調べに来たのだと考えられる。どちらにとっても、ばったり出くわすのは避けたい。武器はふたつある。散弾ではなく一発の弾丸を発射するように改造した大口径のライフルと、各自がいつも身につけている照明弾だ。
 キャンプのまわりに長方形に仕掛け線を張る。触れると地面に向けて空砲が発射され、詮索好きなクマを追い払うことができる。食糧を漁りに来たホッキョクギツネが引っかからないように、線は高さ60センチほどのところに仕掛ける。
 2時間かけて、ようやくマットが納得するだけのキャンプを設営する。歌いながら作業をする。プロの歌手であるビルは低音がよく響く。わたしは陽気に高音で歌う。太陽は西に沈んでいく。氷山がふたつ湾内を左から右へ動いていく。
 北極圏のような広大な土地では、目は小さなことに驚きを見いだす。キャンプのまわりの土壌の厚さは10センチほどしかないが、多様なコケや植物が生えている。ヒカゲノカズラが迷子石の陰に繁茂し、岩は地衣類で彩られている。オレンジ色のオオロウソクゴケに、複雑な模様のチズゴケ、わたしには名前のわからない、色は淡い緑で触ると硬さのあるパリパリのレタスのような地衣類。
 あちこちに背の低いドワーフウィローのエメラルド色の葉がある。大きさが指の爪の半分ほどしかない葉を一枚つまみ、太陽にかざしてみる。緑色に輝き、繊細な赤い葉脈がある。わたしはこのヤナギを、イギリスの北極圏とも言えるケアンゴーム山地で、台地の最も高いところにまばらに生えているのを見たことがあるだけだ。ここではそれは地を覆い、横へ這うように伸びている。真っ黒な枝は最大でも数ミリほどの太さしかない。
 テントを張ったのは森のだったのだと気づく。わたしたちは林冠に宿をとっているのだ。
 レイキャビクで聞いたジョークを思いだす。問い──アイスランドではどうやって森の出口を探せばいい? 答え──立ちあがる。
 ときどきくぐもった轟きがあたりを通っていく。柔らかい音が耳たぶを押し、震わせる。それは氷が分離する音で、アプシアジク氷河の表面から分離した氷が、山のまわりの海水を打つ音だ。音とは空気によって運ばれる風であり、耳を通って脳と血に達し、魂へと伝わる……(*10)。
 大きな氷山が湾をゆっくりと動いていく。役目を終えたUボートか、クルーズ船、モノポリーの駒のスコティッシュ・テリアのように白く汚れなく、上下に揺れながら、日が暮れるまでずっと漂っている。
「幻日よ!」とヘレンが笑顔で上のほうを指さして声を上げる。輝く虹色の弧が本物の太陽の丸みのほうへ膨らみを向けている。
 入り江の氷、遠くの空の氷、湾の氷。頭上の空気の氷。氷河から聞こえる氷の音。わたしたちが眠っているのは、かつて氷があった場所だ。
 その夜、はじめてオーロラが現れる。レーダーのような緑のスカーフが空に広がっている。山々は翡翠のサーチライトを宇宙に向けて放っている。
 冷たく黒い空気に包まれて仰向けに寝ころがり、黙ってそのショーに見入る。

―――

原注
1 次の優れたエッセイを参照。Noah Sneider, ‘Cursed Fields’, Harper’s Magazine (April 2018), 40–51.
2 次の文献に引用されたアルンダティ・ロイの言葉を参照。Rob Nixon, ‘The Swiftness of Glaciers: Language in a Time of Climate Change’, Aeon Magazine, 19 March 2018 <https://aeon.co/ideas/ the-swiftness‑of‑glaciers-language‑in‑a‑time‑of‑climate-change>.
3 L. K. Clark et al., ‘Sanitary Waste Disposal for Navy Camps in Polar Regions’, Journal of the Water Pollution Control Federation 34:12 (1962), 1229.
4 Cymene Howe, ‘“Timely”: Theorizing the Contemporary’, 21 January 2016 <https://culanth.org/fieldsights/800-timely>.
5 サイミン・ハウの進行中のプロジェクトMelt: The Social Life of Ice at the Top of the Worldを参照。このプロジェクトは氷と人間の相互関係や気候変動が引き起こした北極圏の地下水の変化による影響などを調査している。
6 Andrew Solomon, Far and Away: How Travel Can Change the World (London: Scribner, 2016), p. 259.
7 S. Gearheard, ‘When the Weather is Uggianaqtuq: Inuit Observations of Environmental Changes, Version 1’ (Boulder, Colorado: NSIDC – National Snow and Ice Data Center, 2004) <http://nsidc.org/data/ NSIDC-0650>.
8 わたしはここでとりわけ以下を参考にしている。Richard B. Alley, The Two-Mile Time Machine (Princeton: Princeton University Press, 2000), pp. 41–58. [邦訳:リチャード・B・アレイ『氷に刻まれた地球11万年の記憶 温暖化は氷河期を招く』山崎淳訳、ソニーマガジンズ、2004年]
9 Alley, The Two-Mile Time Machine, p. 50.[同上]
10 Plato, Timaeus and Critias, trans. Robin Waterfield (Oxford: Oxford University Press, 2008), p. 65. [邦訳:プラトン『プラトン全集12 ティマイオス・クリティアス』種山恭子・田之頭安彦訳、岩波書店、1975年]

(c)Robert Macfarlane (c)Shinya Iwasaki


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