【8月21日発売】ガラス張りの監視社会で、誰にも見られず一家が消えた『透明都市』刊行のお知らせ
早川書房は、2024年8月21日に、リリア・アセンヌ『透明都市』(原題:Panorama)を刊行いたします。
◆あらすじ
2029年、フランスで「新革命」が起きた。
ひとりの男性が性暴力被害を告発。
時効のため法は頼れず、自ら加害者を殺害した。
世間は彼に共感し、取りこぼされた被害者たちは各地で一斉に行動を起こした。
これを機に、黙殺されてきた暴力の可視化と予防のため、あらゆる建物をガラス張りに改装し、市民が監視し合う都市計画が進んでいった。
――それから20年。
プライバシーを犠牲に都市計画を受け入れた地区の犯罪は激減。
警察官は役割を終え、平和な街を見守る「安全管理人」となった。
そんななか、街きっての富裕地区で暮らす一家三人が忽然と消えた。
事件を担当する元警察官のエレーヌ・デュベルヌは、捜査をとおして、社会への疑念を抱きはじめる。
私たちはこんな世界を望んでいたのだろうか――
「透明性」の理念と実情の狭間で、悩み、傷つき、すれ違う人々を描いた衝撃作。
◆みどころ
本書の舞台は2049年のフランス。
「透明性の時代」と呼ばれるこの時代の暮らしを一部紹介します。
・民家、学校、刑務所、教会……すべての建物がガラス張り
・インフルエンサー業は健在。スポンサーから提供された家具や家電を使った生活を大衆に見せることで収入を得る
・トイレもシャワーも曇りガラスのボックス内にあり、中の人が見える
・ガラス張りを拒否した地区は24時間監視カメラで監視される。事件が起きても助けてもらえない
・機密事項を扱う警察署や国防省は、外から見えない代わりに建物の中央にガラス張りの監視室「エレベーター・オフィス」が設置され、役職者が一日中ビルを上下しながら各階を監視している
プライバシーもなにもあったもんじゃありません……。
そんな中、透明な家から一家三人が忽然と姿を消します。
いったいどうやって?
消失事件の裏に隠された真実とは?
相互監視社会を描いたディストピア、一家消失事件を追うミステリ、「完璧な社会」で亀裂を抱えて生きる人々を描いた純文学、と様々な魅力を持つ一冊です。
2023年にフランスの高校生から支持を集め〈高校生が選ぶルノードー賞〉に輝いた本書。ぜひお楽しみください!
◆著者紹介
リリア・アセンヌ
1991年生まれ。ジャーナリスト、小説家。文学を学んだのち、ジャーナリズムの学位を取得。新聞社やテレビ局で経験を積む。その後、2019年に小説家デビュー。三作目となる本書『透明都市』は、2023年〈高校生が選ぶルノードー賞〉を受賞した。
◆書誌
タイトル:『透明都市』
著訳者:リリア・アセンヌ/齋藤可津子(訳)
2024年8月21日発売予定
四六判並製
本体価格:2,200円(+税)
ISBN:978-4-15-210356-7