穴の町

町が消える。『穴の町』あらすじ&登場人物紹介

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カフカ、カルヴィーノ、安部公房、星新一……。奇想小説の新星、ショーン・プレスコット『穴の町』が7月4日に発売されました。
タダジュンさんのクールな装画がSNSで話題を呼んだ『穴の町』、この記事ではあらすじと、普通に生きているだけなのにどこかおかしな登場人物たちを、カバー装画から抜粋した画像付きでご紹介します。ぜひ、書籍のカバーでも彼らを見つけてみてくださいね。

○あらすじ

『ニューサウスウェールズ中西部の消えゆく町々』という本を執筆中の「ぼく」。取材のためにとある町を訪れ、スーパーマーケットで商品陳列係をしながら住人に話を聞いていく。

寂れたバーをたんたんと営む女性や乗客のいない循環バスの運転手、誰も聴かないコミュニティラジオで送り主不明の音楽テープを流し続けるDJらと交流するうち、いつしか「ぼく」は陽炎に閉ざされた町の閉塞感になじみ、本の執筆をやめようとしていた。そんなある日、突如として地面に大穴が空き、町は文字通り消滅しはじめる……
奇想小説の正統、滑稽で不気味な黙示録

○登場人物

「ぼく」

ある種の町のなかにいるとき、そこ以外の世界は消えている。ならばそこ以外の世界にとっても、ある種の町は消えたままになっていると考えなくては理屈に合わない。

主人公。『ニューサウスウェールズ中西部の消えゆく町々』という本を執筆しようとしている。とある、ありふれた町に辿り着き、住人の家に居候しながら、スーパーマーケット〈ウールワース〉で商品陳列係として働いている。自分がどこから来たのかは覚えていない。町の境界線を探そうと線路をたどって歩いていっても、陽炎に阻まれる。

シアラ

町全体がすっかり消えてしまったら、もうここには残れない。そんなことしたら、自分も消えちゃうに決まってるから。


町の、おそらく誰も聴いていないコミュニティラジオのDJ。町はずれの空き家を不法占拠して勝手に電気を引き、そこで暮らしている。番組で架空の音楽ジャンルをでっちあげて紹介したところ、そのジャンルのサウンドが録音された送り主不明のカセットテープが、毎日大量に自宅に届くようになってしまう。自宅とその地下にある秘密の通路をテープが埋め尽くしてしまったので、持て余したテープを町のいたるところに隠すのを日課にしている。ZINEを作るのも趣味。恋が何かはよくわからないけど、メタル・バンドのヴォーカルとか、変な男とかと付き合うのは楽しい。気まぐれな性格で、町の外に出て都市へ行くことを夢見ている。


ロブ

都市から来た客は都市の汚れをつけている。指でこそげとれるくらいべったりとな。

シアラの恋人で、「ぼく」が居候する家の住人。ガソリンスタンドで働いている。町での平凡な暮らしに満足していて、向上心がない。シアラ曰く「毎晩テレビの前で一、二本ビールを飲むのが好きなオーストラリア男」。平凡すぎてシアラに振られる。

トム

おれに町のことを細かく訊かれても困るよ、だってもう住んでないんだから。

町唯一の、そして誰も乗らない路線バスの運転手。もともとは町で一番人気のロックバンドで歌っていたが、あるときライブのブッキング詐欺にあい、引退。家と家財を引き払い、バスの中で暮らしている。バスは移動するので、特定の住所を持たないため、町の住人ではない。
毎日時刻表通りに、触手状の道を一本一本走行する。触手状の道はとてもたくさんあり、すべてが陽炎によって行き止まりになっているので、すべてを走るのにはとても長い時間がかかるが、丁寧に一本一本走行する。
かつてライブハウスで、他の観客とともに、単調なドローンミュージックを演奏する3人組バンドの演奏に何昼夜も恍惚としていたことがある。

リック

〈ウールワース〉はどこでもない場所とあらゆる場所の大使館なのだ。

〈ウールワース〉を徘徊する無職の男。大人になりたくなかったのに大人になってしまった。就職にも失敗し、無職のままで結婚して父になり、一念発起して隣町で就職しようとするが、引っ越しの道中で事故に遭い、妻とおさない娘を喪う。いまは町の貧困地域で母とともに暮らし、幼い日の幸せな思い出を追い求めて、今日も陳列棚の間を徘徊する。
商品陳列係になりたくて仕方ない。

ジェニー

この町に〝インフラ〟なんてものはないし、あの駅がいつできたのかも、いつ閉鎖されたのかもだれも知らない。

「ぼく」行きつけのパブの店主兼ウェイトレス。「ぼく」以外に客はなく、年に一度の祭「タウンズ・デイ」におけるビールの売り上げで生計を立てている。無気力で無関心、「ぼく」に対してとても辛辣。「町の過激派」なる一派を憎んでおり、町に穴をあけて回っているのも「町の過激派」だと考えている。

スティーヴ・サンダーズ

4人のスティーヴ・サンダーズはふざけたうめき声で同情を示した。ひとりがぼくに、おれたちがおまえをぶちのめしたいのは挨拶をしないからだと言った。別のひとりが、この町じゃみんな挨拶する、と付け加えた。

町に35、6人はいる、同姓同名の男たち。おそらく全員が、「ぼく」をぶちのめしたがっており、なぜかそのことは町中で周知の事実となっている。いろいろな性格のスティーヴ・サンダーズがいる模様。

図書館員

この町に関する本は一冊もありません。われわれに必要なのはそうした本を書くあなたのような人ですが、書いたところでベストセラーになるとは思えません。この町では注目すべきことなど起こったためしがないし、そういうことが起こるのはきっと、それを記憶にとどめる意味がもはやなくなったときでしょう。

町の図書館の職員。かつて町についての本を執筆しようとしていたが、断念した。ときどき、昼休みに「ぼく」とショッピングモールのカフェ〈ミシェルズ・パティスリー〉でお茶をする。町の歴史のことはよくわからない。

 こんな人々の暮らす町が、ある日突然、地面に空きはじめた穴に飲み込まれていきます。

現実と異界がシームレスにつながる『穴の町』の作品世界で、あなたもぜひ、「ぼく」と一緒に途方に暮れてみては。

***

ショーン・プレスコット/北田絵里子訳『穴の町
四六判上製 本体2500円+税
早川書房より好評発売中

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