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幻の作家が早川書房noteに寄稿!?

 さきごろ刊行された『夏の王国で目覚めない』(彩坂美月・著/JA文庫)。
 作中に登場する、幻の作家、正体を現さない謎の作家・三島加深の作品の一部が、ついに発見されました!? カルティックな魅力に満ちたその作品をどうぞ肌で感じてください。


「お前は真正の悪食なのだわ」
 蔑むようにサド姫は言った。
「どうしてそんなことがわかるんです? あなたは、私ではないのに」
 反発よりというよりも戸惑いを含んだ声で尋ねる犬山を、「わかるわ」と冷ややかに一蹴する。
「中で操縦している者よりも、港から眺めている人間の方が、船全体が見えるものよ。そうじゃなくて?」
 サド姫は、残酷な真理を告げるように囁いた。
「お前よりも、お前を知ってる」
 勝ち誇った表情になり、高らかに口にする。
「感謝しなさい、犬山。お前のことを世界中でいちばん知っているのは、この私なのだから」
 愛の告白のように、獲物を捕食する獣のように、苛烈な瞳で彼女は断じた。
 首をお切り! 首をお切り! どこかで誰かが叫んでいる。加害者は誰で、被害者は誰だったのだろう。
 合言葉はMURDER。狂った時間は終わらない。
 ……どちらかが、息絶えるまで。
          
                  ――『ピリッシュノイズ』三島加深


『夏の王国で目覚めない』彩坂美月/ハヤカワ文庫JA

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