【8/21刊行】『法治の獣』の春暮康一氏による初長篇『一億年のテレスコープ』刊行記念! 著者自身による内容紹介「刊行に寄せて」を公開!
デビュー作「オーラリメイカー」以来、国産ハードSF史に新風を吹き込み続けてきた春暮康一氏。
中篇集『法治の獣』はベストSF2022国内篇第1位、さらに表題作が星雲賞国内短編部門を受賞しました。
今回、満を持して放つ初長篇『一億年のテレスコープ』もまた、日本のハードSF史に刻まれる大作です。
本書の読みどころ・注目ポイントを、著者に無理言って書いてもらった紹介文「刊行に寄せて」を特別公開いたします!
刊行に寄せて
春暮康一
2019年にデビューして5年、ようやく長篇を書き上げることができました。といっても、最初は長篇のつもりではありませんでした。もともと出来上がり分量の見積りが下手なのですが、こんな感じのプロットで大体10万字くらいかな、と書き出して、蓋を開けてみれば24万字でした。見積りが下手どころの騒ぎではありません。
そういうわけで、『一億年のテレスコープ』は私のはじめての長篇小説です。自分の作品をお勧めする文章を書く(しかもネタバレなしで)というのは、私にとって小説を書き切ることに匹敵する難事なのですが、なんとかやってみたいと思います。
この作品を構成する要素はいくつかあり、大きい順に挙げると、ひとつめは「異文明との交流」です。私の小説では大抵そうなのですが、この世界でも〝フェルミのパラドックス〟がある時点で破られていて、宇宙には知的文明がひしめいています。主人公たち地球人はそうした文明と出会い、または出会わず、ときには痛い目を見たり途方に暮れたりしながらも関係性を築いていきます。
大きな要素のふたつめは「旅」です。全篇を通してなんらかの旅が描かれていて、これは主人公の行動原理にも関わってきます。砂漠から密林、宇宙空間、さらに一層エキゾチックな場所まで、舞台は目まぐるしく移り変わります。多彩な風景を渡り歩くロードムービーのような作品にしたいという思いがありました。
みっつめは「変な生き物」です。地球とは異なる環境や、地球人と異なる生態的地位で進化した生き物はどんな社会を作るか、といったことを考えるのは私の習性のひとつです。この作品においても、メインテーマとまではいきませんが、依然大きな要素ではあります。
そのほかの要素を大小関係なくランダムにピックアップするなら、「天体観測」「メガストラクチャー」「過去と未来」「ポストヒューマン」「滅亡」といったところです。並べると節操がない感じもしてきますが、どうでしょうか。どんな話か気になった方は、ぜひ手に取ってみてください。
◎8/23発売の《SFマガジン》誌2024年10月号137ページにも、別バージョン・短めの「著者の言葉」を寄稿いただいています。併せてご覧ください。