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6月1日公開! 映画「ビューティフル・デイ」監督リン・ラムジー、原作を語る

監督・脚本・製作:リン・ラムジー/ Lynne Ramsay
1969年12月5日、スコットランド・グラスゴー出身。
イギリス国立映画テレビ学校の卒業制作として制作した短編『Small Deathes』(未)で、96年度カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。長編映画デビューとなったボクと空と麦畑(99)はカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映され、エディンバラ国際映画祭ではオープニングを飾り、ガーディアン新人監督賞を受賞。批評家を中心に絶賛され、数多くの賞を獲得し華々しい監督デビューを飾った。長編2作目のモーヴァン(02)では、02年度カンヌ国際映画祭のCICAE賞とユース賞を獲得。美しき母子の歪んだ関係性をサスペンスフルに描いた長編第3作目少年は残酷な弓を射る(12)でもロンドン映画祭作品賞受賞を始め、主演を務めたティルダ・スウィントンのヨーロッパ映画賞とナショナル・ボード・オブ・レビュー賞での主演女優賞受賞、さらには英国アカデミー賞での各賞ノミネートなど話題を呼んだ。本作ビューティフル・デイは『少年は残酷な弓を射る』以来6年ぶりの新作となる。


——原作との出会いについて聞かせてください。

フランスの友人に薦められたのがきっかけでした。その人は、私がこういうジャンルを好きだと知っていたんです。読んですぐ気に入ったのですが、まだ映画化権は取得していなかった。そういう状況でしたが、自分なりのアプローチ法を考えながら4週間で脚本の第一稿を書き上げたんです。前作少年は残酷な弓を射るの原作は500ページ以上もありましたので、エッセンスを抜き出すのに苦労しました。でも今回は自由度が高く、いろんな方向に進んでいけたんです。まったく違う創作プロセスでしたね。

原作者のジョナサン(・エイムズ)は、TVドラマの『ボアード・トゥ・デス』を作った人です。このドラマは、小説家志望で探偵小説オタクの青年が素人探偵になるという話です。ジャンルものなのに、主人公はジャンルのお約束から少しずれています。ビューティフル・デイを最初に読んだときに、その点が共通していて面白いと感じました。ジョーもジェームズ・ボンド的なヒーローではありませんからね。読みながらすぐにホアキン(・フェニックス)のことが頭に浮かびました。それで付箋に名前を書いて、脚本を仕上げるまでコンピューターに貼っておいたんです。

脚色するにあたっては、だいぶ内容を変えました。エンディングのほか、体が大きくぽっちゃりしているという主人公の身体性も原作とは異なります。母親との関係についても踏み込みました。暗くて重いだけのものにしたくなくて持ち込んだ、ブラックユーモアもそうです。原作に登場するマフィアのあり方にも手を加えました。

そういう変更点はありますが、この小説の持っている展開のスピーディーさは残したいと考えました。それから、いちばん引きつけられたのは、ジョーが真実に迫ろうとすればするほど、謎がどんどん深まっていくという点です。まるで、ウサギの穴に落ちていくアリスのようにね。この世界は不確かなもので、白と黒には割り切れない場所なんです。

——ニーナの役割も、原作とはだいぶ変わりましたね。

映画では、より自律した自我を持った人間にしたかったんです。だから、もし続編があるなら、ニーナの視点にすると面白いかもしれませんね。ジョーは彼女の想像の中にしか存在しなかったという(笑)。実際、ジョーは自分自身すら救えていないわけです。強いヒーローが弱い少女を救うという図式が逆転していて、誰が誰を救ったのかわかりません。むしろ、ニーナがジョーを救ったようにも見えます。自殺願望を抱えながら過去の中で生きている男を、現在という時制にまで引き戻すわけですから。そこには、ある種の希望が感じられます。その意味では、イエスによって死から蘇ったラザロの物語でもありますね。


——映画版を見たジョナサン・エイムズの反応はどうでした?

ジョナサンは、映画版をとても気に入ってくれました。かれこれ7回以上も見ているのに、その度に新しい発見があるそうです。


——ところで、映像も印象的ですが、音楽とSE(音響効果)が境目なく融合することで独特の効果を上げていますね。

映像と音響については、脚本に書き込んでいる要素もあります。執筆段階から、撮影監督とは映画のルックについて、サウンド・デザイナーのポール・デイヴィーズとは音響について話し合いながら進めたんです。実は、以前からそういうやり方をしてきました。しかもこの作品では、音楽のジョニー・グリーンウッドも初期段階から関わってくれただけでなく、レディオヘッドのサウンド・エンジニアがポールと一緒に作業をしてくれたんです。
私にとって、映画とは視覚的なものであると同時に聴覚的なものです。だから、両方とも同じくらい大切なんです。時として音響は、映像以上に物語る力を持つことがありますからね。

インタビュアー/品川亮(文筆業)

映画ビューティフル・デイ
2018年6月1日、新宿バルト9他、全国ロードショー
監督/リン・ラムジー 主演/ホアキン・フェニックス

原作ビューティフル・デイ(ジョナサン・エイムズ/唐木田みゆき ハヤカワ文庫 好評発売中)

写真/Copyright © Why Not Productions, Channel Four Television Corporation, and The British Film Institute 2017. All Rights Reserved.
© Alison Cohen Rosa / Why Not Productions

ありがとうございます!今日のおすすめは『三体』です。
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