コースト_オブ_ユートピア

【イギリス現代演劇編】ハヤカワ演劇文庫50冊を一挙紹介!~本を読んだら劇場へ、舞台を観たら本を手に。~

早川書房は演劇青年だった創業者・早川清の「自由に本が読みたい」という決意のもと、1945年8月15日に設立された出版社です。その創業の志をつなぐ演劇専門レーベル「ハヤカワ演劇文庫」は2006年に創刊。15年にわたり国内外の優れた戯曲をご紹介してきました。そしてハヤカワ文庫50周年にあたる今年、50冊目の演劇文庫「ピーター・シェーファーⅠ」を刊行いたします。この節目に、ハヤカワ演劇文庫の既刊をご紹介!今回は才気溢れる台詞が魅力のイギリス現代演劇編です。息を詰めて緊密なドラマの展開を追うもよし、詩情あふれる台詞に陶酔するもよし。あなただけの戯曲の楽しみ方を探してみてください。

ピーター・シェーファー1


1.「トム・ストッパードⅠ コースト・オブ・ユートピア」 広田敦郎訳

ゲルツェン 人々をお菓子の生地のように一個の型にはめるようでは、マルクスとたいして変わらない。

混迷の19世紀ロシア。若き知識人ゲルツェンは、民衆をさいなむ専制政と農奴制の転覆を決意し、祖国を飛び出す。亡命先は革命の嵐吹き荒れる約束の地、パリ。だがそこで彼が目にしたのは、あまりにも無情な「ユートピア」の現実だった……。人間の生きる意味とは? 〈歴史〉に目的はあるのか? 時代を拓いた革命家たちの生涯を等身大に描き切り、トニー賞7部門を制覇した、英国演劇界の巨人渾身の一大歴史叙事詩。

解説/長縄光男 本体1500円。


2.「トム・ストッパードⅡ ロックンロール」 小田島恒志訳

ヤン ぐっとこらえて黙ってる以外は、全部反体制的運動ってことになるんだ。僕もギターを習っとけばよかった、もう手遅れだけど。ペンある?

「で、ケンブリッジでは、どうして本当の君ではない人間の振りをしてたんだ?」1968年、留学生ヤンは愛するロックを守るため、ソ連軍の侵攻にゆれる故郷プラハに舞い戻る。数年後、そんな彼の元にかつて訣別した恩師の英国人、マックスが現われ……。世界に〈解放〉をもたらすのはロックか、それとも共産主義か。激動の20年を経て、2人の運命は数奇に絡み合ってゆく。ピンク・フロイド、ストーンズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、U2ほか時代を抉る名盤で綴る、異色の政治叙事詩。

本体900円。


3.「トム・ストッパードⅢ ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」 小川絵梨子訳

ロズ 突発的! すべてがただ、突発的にしか起きてない! ああ神様、もう少し全体に繋がりをつけて下さいとお願いするのは欲張りすぎですか!?

「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」。シェークスピアの『ハムレット』の終幕、こんな一言で片付けられてしまう憐れな脇役の二人。本作は、ハムレットの学友であるが故に、玉座争いに巻き込まれ、死すべき運命に流される彼らの運命を描く。果たして「筋書き」通りの行く末なのか……。イギリス最高峰と称される劇作家、トム・ストッパードの出世作が気鋭の演出家・小川絵梨子の新訳で甦る。

解説/河合祥一郎 本体1200円。


4.「トム・ストッパードⅣ アルカディア」 小田島恒志訳

トマシナ じゃあどうしてあなたの出す方程式はいつも工業生産品の形にしかならないの?

著名な詩人バイロンが長逗留している、19世紀の英国貴族の屋敷。そこには、魅力的な女主人、天才的頭脳の令嬢、皮肉な家庭教師、三流詩人と浮気な妻、大佐、執事と庭番などあらゆる人間の織り成すカオスな関係が渦巻く――。ある時、屋敷の庭園の設計図に、トマシナは何の気なしに書き込みをしてしまう。その行動が、約200年の時を経た世界に大きな波紋を広げることになる。現代のバイロン研究者らはその謎を解き明かせるのか。はたして決闘で死んだのは誰? 隠者の庵で終生過ごしたのは? トマシナの書き残した理論の意味は?同じ屋敷を舞台に、二つの時代の人々のドラマが交錯し、ある思いもかけない「真実」を浮かび上がらせる。

解説/谷岡健彦 本体1200円。


5.「マイケル・フレインⅠ コペンハーゲン」 小田島恒志訳

ボーア そうは言っても、常に問題はこうだ、そもそも数学に何の意味があるのか? そこにどんな哲学的含意があるのか?

「説明すればするほど曖昧に――不確定性が深まっていった」1941年秋、ナチス占領下の北欧コペンハーゲン。ドイツ人の物理学者ハイゼンベルクは、かつて師と仰ぎ、親同然に慕っていたボーア夫妻を訪ねる。折しも原爆開発競争のさなか、互いに敵国人となり、新兵器を巡る暗闘の渦中にあった2人の天才は何を語ったのか? 謎に包まれた会談を、史実を踏まえて大胆に描き出す。トニー賞を受賞したスリリングな思想劇の傑作。

本体900円。


6.「ピーター・シェーファーⅠ ピサロ/アマデウス」 伊丹十三、倉橋健、甲斐萬里江訳

ピサロ 俺の齢でそんなことに何の意味がある? 剣が単なる金属の棒に過ぎぬと同様に、王の持つ笏もまた俺にとっては金属の棒に過ぎぬ。王になるより、もっと大事なものがあるはずだ。(ピサロ)

二人の人物のスリリングな対立構造から人間の根源的な葛藤を浮き彫りにする、ピーター・シェーファーの緻密な劇構造の醍醐味が詰まった名作二篇。 スペインの将軍ピサロは、過酷な行軍の末に自らを太陽の子と称する王アタウアルパを生け捕りにするが……インカ帝国征服を題材にした「ピサロ」。 モーツァルトの死は自分の仕業だ!老宮廷楽長サリエーリは衝撃的な告白と回想を始める――アカデミー賞に輝いた映画版でも知られる、トニー賞受賞作「アマデウス」。

解説/鴻上尚史 本体1900円。


>第一回【アメリカ現代演劇編】

>第二回【渡辺えり編】

>第三回【フランス近代演劇編】

>第四回【三好十郎と秋元松代編】

>第五回【別役実とケラリーノ・サンドロヴィッチ編】


今後も【ニール・サイモン】【ハロルド・ピンター】【アーサー・ミラー】【岸田國士】など、随時アップしていきます。

みんなにも読んでほしいですか?

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