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尾原和啓さんも「心に沁みわたり元気になる本」と太鼓判! トニー・ファデル『BUILD』の魅力とは

5月23日発売の新刊『BUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック』(トニー・ファデル、土方奈美訳、早川書房)。アップル社でiPodとiPhoneの開発チームを率いた伝説のエンジニア、トニー・ファデルの初めての著書であるこの本は、あらゆるビジネスパーソンに役立つ、価値あるプロダクトを生み出すためのヒントが詰まった「メンター本」として世界的ベストセラーとなっています。
『プロセスエコノミー』『モチベーション革命』などの著書を持つIT批評家の尾原和啓さんも、そんな本書に魅せられた一人。その魅力を熱くご紹介いただきます!

『BUILD(ビルド) 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック』トニー・ファデル、土方奈美訳、早川書房
『BUILD』早川書房

BUILDのすすめ:尾原和啓(IT批評家)

トニー・ファデル著『BUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック』は、実は空港で見かけた原書を購入し翻訳前に読んでいました。とても好きな本だったので、早川書房にお願いしてこうして感想を書いています。すごく心に沁みわたり元気になる本なので、ものづくりやサービスにたずさわる方以外にもぜひおすすめしたい1冊です。

著者であるトニ―・ファデルさんは「iPodの父」であり、第3世代までのiPhoneの開発を担当するなどAppleで活躍した後、「ネスト」というベンチャーを立ち上げてGoogleに3,000億円以上の価格で売却した実績を持つ、すご腕の連続起業家です。

高度に情報化した社会では、ものづくりの世界は良い意味で高止まりになり、高水準で競争するようになりました。どの製品もそこそこ良くて、なかなか差がつきにくい。そんな時代に、どのようにすれば「本当に良いもの」を生み出し、人々に届けることができるのか。そのことが、著者の起業家としての経験を交えながら、ものすごく真摯に、謙虚に、そして心に響く形で書かれています。

特に若い方にこの本を読んでいただきたいです。ものづくりに向き合うこと、サービスづくりに向き合うことは、そこに向き合う「自分」をどのようにBUILDしていくかを考えることにほかなりません。だからこの本は6つのステップについて書かれています。まずは「自分」をつくる。その上で、キャリア(仕事・人生)、プロダクト、ビジネス、チームをつくり、最終的にはCEOとしてより大きなものを生み出していく。

この6つの段階の一つひとつについて、著者自身の具体的な経験がぎゅっと詰め込まれているので、全体を通して一気にも読めるし、自分が興味を持ったパートから「つまみ読み」することもできます。私も移動中などに、自分が今抱えている悩みに対応するパートを読み返してはヒントを得たり、そして何よりも元気をもらったりしています。

とは言っても、選ばれるサービスやモノのつくり方について、なにも突飛な秘訣が書かれているわけではありません。本当に価値あるものを提供するには何をしたらいいのか。ペインキラー(顧客の「痛み」=課題を解決するポイント)は何なのか。お客様の心をどうつかむのか。そしてそれを実施するチームをどうサポートしていけばいいのか。著者はこうしたことを徹底して考え抜きます。重層的に語られるエピソードの数々からは、著者トニー・ファデルが持つ情熱や人間くささといったものがあふれ出し、読んでいてついつい引き込まれます。

良いサービスをつくろうとするときの最大の障害は「孤独」です。他の人にできないようなサービスを提供するためには、「本当にこの道を歩み続けていいのだろうか」という孤独に向き合う必要があるからです。他の人が成功したやり方をコピーしたくなる誘惑に耐え、お客様の課題にどこまで真剣に向き合い、情熱を注ぎ込めるかが勝負です。

そこで重要になるのが、時に困難さえも一緒に楽しむことのできるチームの存在です。仲間とともに険しい道をワクワクしながら歩む中で、創造性や才能が花開き、それがメンバー一人ひとりの人生にも彩りを与えていく。そうしたチームの価値が描かれていることも本書の大きな魅力になっています。

とにかく読みやすい本ですし、翻訳もすばらしいです。この機会に、ぜひ多くの方に手に取っていただきたいと願っています。


本書の内容が気になった方は▶こちら

◆楠木建氏(一橋大学特任教授)による本書解説を特別公開中

◆本書概要

『BUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック』
著者:トニー・ファデル
訳者: 土方 奈美
本体価格: 2,600円(税込2,860円)
発売日: 2023年5月23日(早川書房)

◆著訳者略歴

トニー・ファデル(Tony Fadell)
1969年生まれ。スタートアップ企業ゼネラルマジックで30年にわたるシリコンバレーのキャリアをスタート。2001年iPodの開発責任者としてアップルに入社。2007年にiPod部門シニアバイスプレジデントに就任、また初代iPhoneのハードウェアと基本的ソフトウェアの開発チームを率いる。2010年にアップル退社後ネスト社を立ち上げ、AI搭載の「学習する」サーモスタットを開発しスマートホームのエコシステム構築に乗り出す。2014年にグーグルが32億ドルで同社を買収。2016年にネスト退社後、現在は投資・アドバイザリー会社フューチャー・シェイプを率い、約200のスタートアップ企業にコンサルティングとサポートを行っている。本書は初の著書。

土方 奈美(ひじかた・なみ)
翻訳家。日本経済新聞記者を経て独立。訳書にケルトン『財政赤字の神話』、スローマン&ファーンバック『知ってるつもり』、バデリー『〔エッセンシャル版〕行動経済学』、​テトロック&ガードナー『超予測力』(以上早川書房刊)など多数。

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