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「がんばりすぎ」にご用心――『NO HARD WORK ! 』が教える「無理しない」働き方

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『NO HARD WORK!──無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』(ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン/久保美代子訳/好評発売中)

押し寄せる仕事、難しい課題、それらに夢中で取り組むうちに、いつしか毎日が「仕事漬け」に? そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。規模は小さくても、世界中に顧客を持つソフトウェア会社「ベースキャンプ」の経営者たちが、試行錯誤の末にたどり着いた本質をつくアドバイスが満載の新著『NO HARD WORK! 』より、こんな言葉をお届けします。

『NO HARD WORK !』の序文はこちら。

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(『NO HARD WORK!』より)

がんばりすぎるな

 がんばり屋は、仕事のアイデアが頭のなかで渦巻いている。この終わりなきやる気の波は、骨の髄まで仕事にどっぷり浸かっていることを示している。そろそろ、そこから脱出すべきだ。

 インスタグラムで「♯起業家(アントレプレナー)」というハッシュタグを検索してみてほしい。「伝説は努力の谷に生まれる」だの、「とんでもない天才である必要はない。とんでもなく入れこめばいいだけだ」だの、「感情は抜きにして、とにかくゴールにたどり着け」だの、さまざまな〝格言〟がヒットするはずだ。こんな調子でがんばりつづけたら、しまいには血ヘドを吐くことになる。

「ハッスル」という言葉は、裕福な人を出し抜く貧しい勝負師をあらわす「ハスラー」と同じ語源だが、いまでは「仕事中毒」と同義になっている。

 なかには、苦しくつまらない仕事をしているうちに求めていたものを見つける人が、ほんのひとにぎりくらいはいるかもしれない。でも、大半の人は、苦しい奮闘のすえに、努力がむくわれず、身体を壊したり、疲弊したり、燃えつきたりする。それはなんのためだろう?

 何もかも犠牲にしてきたのだから、勝敗以上の目的がなければ見合わない。痛みや疲労をこらえながら無理をしてきたのは、もっと大きな見返り(ニンジン)のためのはずだ。人間の経験というものは、二四時間、年中無休で限界までがんばること以上の価値があるはずだ。

「がんばれ」というのは、助言としてもまちがっている。一日がはじまって一四時間を超えると、重要なヒントやひらめきはわきにくくなる。創造性や進歩、斬新なアイデアは力
業(ちからわざ)では生まれない。

 とはいえ、これとは逆の考えが主にクリエイティブな人びとの世界に焦点を絞ったレンズをのぞくと見えてくる。作家やプログラマー、デザイナーや職人など、ものをつくる人びとの世界だ。その世界にはおそらく、手作業で仕事をする人びとの領域があり、そこでは、少なくともある一定の期間は、たくさんインプットすればするほど、たくさんアウトプットできる。

 けれども、生活のために低賃金の仕事を三つ掛けもちしている人が、仕事中毒を自慢する話はほとんど聞いたことがない。聞こえてくるのは、そのふりをしている人たちの声ばかりで、そういう人は生きていくために必死で努力しているわけではない。どれほど大きな犠牲を払っているかを、ひけらかしたいだけだ。

 起業家には、生き残りをかけた勇壮な話は必要ない。大半の時間はそれよりもっと退屈だ。爆発している車を飛びこえてワイルド・チェイスするような心の躍る時間はほとんどなくて、レンガを積み、ペンキを塗りつけるような地味な作業が多い。

 だから、がんばることをやめる許可を、ここであなたに与える。毎日毎日きちんと働くけれど、長く働きすぎないこと。子どもと遊ぶ時間を取っても、起業家として成功できる。趣味を楽しんでもいい。自分の身体を大切にしてもいい。本を読んでもいい。パートナーとバカげた映画を見たっていい。時間をかけてちゃんとした食事を料理してもいい。長い散歩に出かけてもいい。ときどきまったく普通の人になってもいいのだ。

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■著者紹介■ 
ジェイソン・フリード Jason Fried

©Justin Stephens

世界的に著名なソフトウェア開発会社「ベースキャンプ」の共同創設者兼CEO(2014年に「37シグナルズ」から社名変更)。1999年に会社を立ちあげて以来、毎年利益を出し続けている。デイヴィッドとの共著に『小さなチーム、大きな仕事』、『強いチームはオフィスを捨てる』(ともに早川書房刊)、Getting Realがある。フリードいわく、ビジネスは、あなたがややこしくしないかぎりシンプルなもの。人生は、生きているうちにだんだんわかってくるもの。

デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン  David Heinemeier Hansson

 ©Peter Adams

「ベースキャンプ」の共同創設者で《ニューヨーク・タイムズ》のベストセラー『小さなチーム、大きな仕事』、『強いチームはオフィスを捨てる』の共著者。ソフトウェアのツールキットRuby on Railsの作成者。Ruby on Railsはツイッター、Shopify、GitHub、Airbnb、Squareなど100万を超えるウェブ・アプリケーションに使用されている。デンマーク出身で、2005年にシカゴに移住。現在は妻とふたりの息子とともに米国とスペインを行ったり来たりして暮らしている。

『NO HARD WORK!──無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』(ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン/久保美代子訳/好評発売中)

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