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日本統治下の台湾と現代日本を往還しながら描かれる、日本人の娘と原住民の青年の恋――『台湾文学コレクション2 風の前の塵』(施叔青/池上貞子訳)

早川書房から、台湾の選りすぐりの文芸作品を集めた《台湾文学コレクション》が刊行開始されました(呉佩珍、白水紀子、山口守編)。第一弾の『近未来短篇集』に続き、7月下旬には『台湾コレクション2 風の前の塵』(施叔青/池上貞子訳)、8月上旬には『台湾コレクション3 二階のいい人』(陳思宏/白水紀子訳)が続けて刊行。夏の始まりに、台湾の風を感じる文学体験を! 本記事では第二弾の『風の前の塵』についてご紹介します。

『台湾文学コレクション2 風の前の塵』


装画:中島梨絵 装幀:田中久子


●あらすじ


険しい山々に抱かれた花蓮の町の近くで、あたしの級友の真子さんは原住民の青年ハロクに恋をしたのよ――日本統治下の東台湾で生まれ育った亡き母が、一人娘の琴子に語った古い恋物語。そのどこまでが真実だったのか? 戦前の台湾と戦後の日本を生きる人々の歩む道と思いが交錯する、幻惑に満ちた文芸長篇

●著者について


 施叔青(シー シューチン)

1945年、台湾生まれの作家。姉の施淑は文芸評論家で、妹の李昂は作家である。1964年に現在の淡江大学フランス語学科に入学し、文学活動にいそしむ。その後、米国から台湾に研究に来ていた大学院生と結婚し、70年に渡米。77年に夫の仕事の関係で香港に移り住み、香港芸術センターに勤める。94年に台湾に戻った後、2000年からニューヨークに在住。その間も、一貫して創作(執筆)活動を続けていた。本作は2008年に刊行。


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