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『三つ編み』『彼女たちの部屋』著者レティシア・コロンバニの特別インタビュー(『読書の秋2020』)

2019年4月刊行の『三つ編み』、2020年6月の『彼女たちの部屋』。どちらも読者から大きな支持を得て、海外文芸としては異例のロングセラーとなっています。
その著者のレティシア・コロンバニが、アンスティチュ・フランセによる催し「読書の秋2020」の一環として、特別にビデオインタビューに応えました。映画監督として知られるコロンバニさんが小説を書くことになったきっかけ、『彼女たちの部屋』の舞台となる実在の施設、「共感(エンパシー)」の大切さ、そして日本の読者へのメッセージ。
YouTubeの動画をお届けするとともに、その言葉を書き起こしました。

Q1.デビュー作『三つ編み』が世界中でヒットしました。小説を書きはじめたきっかけは?

脚本家、監督、女優として15年間活動してきましたが、より自由な文学に挑戦したくなり、小説を書きたくなりました。

観客、読者として実感したのですが、感動的で刺激的なすぐれた作品にはいつも個性的なヒロインが登場します。意欲と勇気のある女性です。そんな現代的なヒロインを描くためテーマを探しました。

2015年1月 癌の化学療法を始める友人に頼まれ、彼女と一緒にカツラを選びました。強烈な体験でした。カツラを試着する友人を見た時、髪を媒介に繋がる3人の女性の物語が浮かび、すぐに筆をとって『三つ編み』が生まれました。

Q2.『彼女たちの部屋』には女性保護施設と創設者が登場します。どのようにしてこの施設を知ったのですか?

『彼女たちの部屋』は偶然の産物です。

『三つ編み』を書いていたころ、打ち合わせのために馴染みのないパリ11区に行き、道に迷っていると、女性会館という名前の大きな建物がありました。女性会館という名前の大きな建物がありました。

この建物が何なのか、その歴史にも興味を持ちました。これは欧州で最大級の女性保護施設で、ブランシュ・ペイロンが1926年に創設したものです。そして彼女について調べました。彼女がトップを務めた救世軍がこの建物を購入しています。

ここで暮らす女性たちにも興味を持ちました。現在も450人近い女性がこの会館で暮らしています。出身地や話す言葉はさまざまで共通点は ただひとつ。安心できる居場所を求めていること。

小説を書くために、館長に手紙を書くと温かく迎えてくれました。入居者たちや救世軍の職員たちボランティアを紹介してもらい、会館での仕事や生活について話を聞くことができました。

そして女性会館を主役にした小説が生まれたのです。


Q3.『彼女たちの部屋』で重要な感情として描かれる“共感”。どのようにお考えですか?

この小説のカギとなるのが、“共感(エンパシー)”です。

共感があったから、ペイロンは17歳で救世軍に入ったのです。彼女は幼い頃から人の苦しみに敏感でした。共感こそが彼女の原動力、エネルギー源になりました。生涯、恵まれない人々のために働きました。その驚くべき人生を小説に描くことで、敬意を表したかったのです。

もう1人のヒロイン、弁護士のソレーヌは共感をあまり知りません。燃え尽き症候群により、ボランティアで女性会館の代書人になりますが、初めはまるで他人事です。自分の悩みで頭がいっぱいなんです。でも少しずつ他者に心を開き始め、本当の自分も知っていきます。

この共感という感情は非常に重要だと思います。他者に身を重ね、手を差し伸べる感情ですから。この感情には大きな力があります。共感が人を行動に駆りたて、より平等で公正な世界を実現できるかもしれません。

Q4.日本の読者にメッセージをいただけますか?

私の小説が日本まで旅をし、読者の方々に喜んでいただき大変うれしく光栄です。

日本には数年前に『愛してる、愛してない…』の監督として行きました。女性観客や記者の方々と意見を交わし、日本での女性の地位が話題に上りました。日本社会には女性にとって大きな障壁があり、女性たちは仕事でも家庭でも多くの問題に直面していると聞きました。本当に大変だと思います。

状況が許せば近いうちに日本へ行って皆さんとお話ししたいです。それまで幸運と健闘をお祈りします。より平等で公正な社会になりますように。

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【告知】レティシア・コロンバニ×中江有里 オンラインイベント

レティシア・コロンバニさんがオンラインで登壇するイベントが11月21日(土)に行われます。対談のお相手は、女優・作家の中江有里さんです。
質疑応答の時間もたっぷりご用意しています。

レティシア・コロンバニと中江有里はそれぞれ映画とテレビのために脚本を書き、中江は演じ、コロンバニは監督を務めました。彼女たちの映画をめぐる絆はとても強いものですが、本と読書は彼女たちにとって必須のものであり、二人とも小説を書こうと決心したのです。この対談で二人の作家は文学、映画、そして自身の経験を通して、女性たちの勇気を人々に理解させ、それを知らしめることの重要さについて話し合います。本イベントは「ヨーロッパ文芸フェスティバル2020」と連携しています。

オンライン対談 レティシア・コロンバニと中江有里
11月21日(土) 18:00-19:30 (最長20時まで)
対談は、アンスティチュ・フランセ日本のYouTubeのページにてご覧いただけます。日本語でのご視聴は、下記のURLにて、対談と同時にユーチューブ中継がはじまります。
https://www.youtube.com/user/instituttokyo/featured

フランス語でのご視聴は、アンスティチュ・フランセ日本の下記のフェイスブックページURLにて、対談と同時にフェイスブック中継がはじまります。
https://www.facebook.com/IFJTokyo

* 当日アンスティチュ・フランセ横浜にて、イベントのライブ配信も予定しています(入場無料/要予約/先着15名)。




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