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戦争ノンフィクションの名作が、いま甦る。大木毅監修・シリーズ〈人間と戦争〉創刊!

早川書房は2022年8月、戦争ノンフィクション連続復刊企画としてシリーズ〈人間と戦争〉を創刊します。

シリーズ監修は、2020年新書大賞『独ソ戦』(岩波書店)などで知られる現代史家の大木毅氏。いまこそ読むべき名作の数々を、大木氏の監修のもと、本シリーズに取り揃えていきます。

復刊にあたっては各巻、専門家の監訳によって訳文を全面的に見直すとともに、時代背景や作品の今日的価値を論じる解説を付します。史料写真も新たに加えるなど、末永く読み継いで頂ける決定版としてお届けします。

第1期は、今年8月から10月にかけて以下の3点を刊行します。

第1期ラインナップ

第1巻:
ルイ・アレン『日本軍が銃をおいた日

ルイス・アレン『日本軍が銃をおいた日』早川書房
ルイ・アレン『日本軍が銃をおいた日』

訳:長尾睦也・寺村誠一
監訳・解説:笠井亮平(岐阜女子大学南アジア研究センター特別客員准教授)
2022年8月11日発売予定
四六判上製、432頁、本体予価4000円

その軍隊は降伏の仕方を知らなかった
1945年8月15日、太平洋戦争は終わった。だが海外各地の数百万の日本軍兵士にとって、それは新たな戦いの始まりだった。迷路に惑う和平交渉、各地で狼煙を上げる民族独立運動。帰還か、それとも残留継戦か。――そして、現代アジアが形成された。当時語学将校として数多くの降伏交渉に立ち会った日本研究の第一人者が活写する、いちばん熱い夏の物語。

第2巻:
スティーヴン・E・アンブローズ『ワイルド・ブルー

スティーヴン・E・アンブローズ『ワイルド・ブルー』早川書房
スティーヴン・E・アンブローズ『ワイルド・ブルー』

訳:鈴木主税
監訳・解説:源田孝(元防衛大学校教授)
2022年9月14日発売予定
四六判上製、432頁、本体予価4000円

真白の雲海に映るは誇りか、絶望か
第二次大戦中に活躍した米国の爆撃機、B-24。その操縦士を務めた当時22歳のジョージ・マクガヴァンと仲間たちの姿を、膨大な資料と証言から描く。援護なし、敵対空砲多数、邀撃必至――決死の出撃任務の最中、彼らは何を思ったのか? 極限状況におけるリーダシップとチームワークとは? 傑作『バンド・オブ・ブラザーズ』の著者による全米100万部のベストセラー。


第3巻:
ジョン・トーランド『バルジ大作戦

ジョン・トーランド『バルジ大作戦』早川書房
ジョン・トーランド『バルジ大作戦』

訳:向後英一
監訳・解説:大木毅
2022年10月18日発売予定
四六判上製、704頁、本体予価4500円

狂瀾を既倒にめぐらさんと ヒトラーは最後の戦略攻勢を命じた
1944年12月16日午前5時30分、アルデンヌの森の静寂は突然の砲声によって破られた。敗色濃いドイツ軍の最後の賭け、ヒトラー自ら構想した「バルジ大作戦」が開始されたのだ。悪天候に乗じた奇襲は奏功し、連合軍戦線に危険な突出部(バルジ)が広がるが――。ピュリッツァー賞作家が1000人以上の関係者に取材し、欧州戦線の決定的戦闘を描破する。

*以下、続刊予定
*仕様は変更となる可能性がございます。

大木毅氏による刊行のことばを、以下に掲載します。

刊行のことば

 かつて、わが国には豊穣ほうじょうなる翻訳文化があった。世界の古典はもとより、読まれるに足る新たな文学作品、重厚なノンフィクションも速やかに邦訳され、読書人を楽しませ、その教養のかてとなったのだ。人類の宿痾しゅくあであり、しかし、それゆえに顔をそむけているわけにはいかない戦争という分野も、その例外ではなかった。「戦争とは何か」を問うた諸外国のジャーナリストや文学者の仕事は、ほぼ共時的に日本語で読むことができたのである。

 しかしながら、戦争を経験した世代が去り、出版が傾くにつれ、それらの諸作も忘れられていった。あるいは、戦後日本に根強かった「臭いものにはふた」式の戦争忌避もあずかっていたのかもしれぬ。

 いずれにしても、多くの価値ある翻訳書は絶版となり、古書市場でも入手困難になっていった。遺産は放棄されたのだ。だが、こと「戦争」という分野に限定しても、武力による紛争がリアルとなり、その本質を考えることが喫緊きっきんの要となった現在、このままでよいわけがない。

 かかる状況を変える試みとして、われわれは「人間と戦争」という枠組みを立て、本来ならば読み継がれるべきだった諸作の復刻刊行を決めた。死を命じる司令官から現場で血と泥にまみれる無名の兵士まで、さまざまなレベルで人間と戦争の関わりを活写した傑作群を再び読者に提供せんと企図したのである。

 もっとも、なかにはおよそ半世紀前のものもあるから、訳語、訳文、訳註などを大幅に検討し、増補改訂を加えた決定版とすることをこころがけた。また、各巻の校閲と解説には、それぞれのテーマに即した専門家の出馬を仰いでいる。

 ささやかで、しかも「人間と戦争」という限られた範疇はんちゅうでの努力にすぎないが、願わくは読者よ、この叢書をよみし、支援を授けたまえ。

大木 毅(現代史家)


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