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「目標なし、競争なし、徹夜なし」――無茶をやめれば、成果はついてくる! 最新刊『NO HARD WORK ! ――無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』の著者たちが贈る、超まっとうな仕事論。

(画像はAmazonにリンクしています)

『NO HARD WORK!──無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』(ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン/久保美代子訳/好評発売中)

「働き方改革」の掛け声のもと、4月からは関連法が施行され、残業規制が導入されます。それでも、残業がなかなか減らず、週末に仕事を持ち帰ったり、日曜に仕事メールに返信したりしていませんか? あるいは、未達の目標にプレッシャーを感じたり、メールやチャットのやり取りに忙殺されている方も多いのでは? そんな皆さんに吉報なのが、新刊『NO HARD WORK(ノー・ハード・ワーク) ! ――無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』です。著者は、世界的に知られるソフトウェア開発会社「ベースキャンプ」の創業者コンビ。競争の激しい業界で、創業以来20年にわたり、毎年利益を上げ続けている異端の経営者たちが、自ら実践するシンプルで無理のないワーク・スタイルを惜しげもなく披露します。「働き方」に悩むあなたにも、きっと役立つヒントが見つかるはず。彼らのストレートなメッセージに、ぜひ耳を傾けてみてください。

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(『NO HARD WORK』本文より)
仕事でテンパる

 最近「仕事でテンパる」という言葉をよく耳にするのではないだろうか? もしかして、あなた自身もいったことがあるのでは? 多くの人にとって「仕事でテンパる」ことが日常茶飯事になっている。でも、なぜそんなに忙しいのだろう?

 理由は大きく分けてふたつある。(1)集中力をとぎれさせる邪魔、つまりメールや電話などのバーチャルなものから会議などの物理的なものまで、さまざまな雑用で仕事の時間がぶつ切りになり、細切れの時間に働いているから。(2)何がなんでもビジネスを拡大していかねば、という不健全な強迫観念に駆られて、非現実的なバカ高い目標が立てられ、そのせいでストレスを感じているから。

 人びとは、どんどん長く働くようになっている。それはまちがいない。朝早く出社したり、夜遅くまで居残ったり、週末に働いたり、あいた時間はとにかく働いているという人もいる。もはや、会社の就業時間に仕事を完了することができなくなっている。そうなるとプライベートは二の次になる。仕事のあとのオマケ、残飯のつまった袋(ドギーバッグ)みたいに味気ないものになる。

 さらにマズいことに、このところ、そういう長時間の労働や、過密スケジュールや睡眠不足を名誉の勲章みたいに考える人が増えている。でも、慢性的な疲労は勲章なんかじゃない。クレイジーな状態の象徴だ。

 これは組織にかぎった話じゃない。ひとりひとりの労働者や委託業者、自営業者もみな、まったく同じ。自分で自分を追いこみ、疲れはてている。

 人びとが仕事に費やしている時間や新たな技術の進歩などを考えると、仕事の負荷は減っていくはずだと思うかもしれない。だが、そうじゃない。負荷はますます増えているのだ。

 仕事の量が急に増えたからというわけじゃない。邪魔されずに仕事に打ちこめる時間がほとんどないせいだ。働く時間は増えているけれど、やりとげられる仕事が減っている。そんなのおかしい、なぜだろう? 大半の時間を余計な仕事に費やしているからだ。

 多くの人びとが一週間に六〇時間から八〇時間を仕事に費やしている。だが、そのうち、どれほどの時間を本来の仕事に使えているだろう? そのうちの何時間が会議で潰れ、メールや電話応対や同僚との会話などで消えていき、朝礼などのたいして役に立たない会社の習慣に費やされているだろう? そりゃもう、たっぷりの時間だ。

 これを解決する方法は、もっと長く働くことじゃない。つまらない用事を減らすことだ。生産性を上げるのではなく、無駄をなくすことだ。邪魔が減れば、ずっと抱えていた不安が消え、ストレスを減らすことができる。

 ストレスは組織から社員へ、社員から顧客へと伝わるものだ。それに、ストレスは仕事の場だけにとどまらない。あなたの生活に入りこみ、友人や家族や子どもとの関係に影響を及ぼす。

 次から次へと迫ってくる締め切り。さまざまな時間管理術。多様化するコミュニケーションの手段。どんどん積み重なる新たな要求。さまざまなツールで繰りひろげられる多くの会話に参加し、数分以内に返答することが期待される。スピードもますます加速していく。だがそれはなんのためなのだろう?

 つねに仕事で修羅場を味わっているあなたに、次の言葉を贈ろう。「もう、よせ」。それともうひとつ。「もう、充分じゃないか」

 企業はそろそろ、見栄だけで立てた根拠のない高い目標に従業員たちを駆り立てるのをやめるべきだ。質の高い仕事をするのに必要な邪魔のはいらない時間を確保すべきだ。クレイジーに働く人への称賛をやめるべきだ。

 二〇年近く、僕らは、自分たちの会社ベースキャンプを穏やかな会社(カーム・カンパニー)にしようと努力してきた。僕らの会社は、プレッシャーをかけたり、大至急という言葉でメンバーをせかしたり、追い立てたりもしない。夜遅くまでの残業や徹夜もない。果たせるはずのない無茶な計画や高い離職率もない。つねに破られる締め切りや、けっして終わりそうにないプロジェクトもない。

 拡大路線は取らないし、偽物の忙しさや、見栄だけで掲げられた目標もない。「ライバル会社に追いつけ」とハッパをかけることもないし、お尻に火がつくような状態もない。それでも僕らは、このビジネスをはじめてから毎年利益を上げている。

 僕らは世界的にみても、競合がとても多い業界で仕事をしている。ソフトウェア業界には、大企業に加えて、ベンチャー・キャピタルからなん億ドルもの支援を受けているスタートアップ企業がひしめいている。いっぽう僕らは、外部から一ドルも資金提供を受けていない。では、どこから資金を得ているのか? 顧客だ。時代遅れだって? いいたいヤツにはいわせておけばいい。

 僕らの会社はソフトウェアを製作している企業だから、シリコンバレーで伸るか反るかの競争を繰りひろげていると思われがちだけれど、シリコンバレーにいるメンバーはひとりもいない。実をいうと、メンバーは五四人いるが、世界中の約三〇カ国に散らばっている。

 僕らの会社の労働時間は、一年を通してだいたい一週あたり約四〇時間、夏は週たった三二時間だ。メンバーは三年に一回は一カ月の休暇が取れる。僕らはその期間を有給休暇にしているだけでなく、休暇中の旅行費用も会社で持っている。

 水曜の夜九時に仕事をする必要なんてない。木曜の朝九時まで待てるはずだ。日曜日はダメ。月曜日にしよう。

 ときにはストレスが溜まるときもあるだろうって? もちろん。それが人生ってものさ。毎日バラ色? そんなわけはない。そのとおりなんていったら、ウソになる。けれども、ストレスが溜まる仕事や残業はめったに起こらないよう、僕らはベストを尽くしている。いろいろ試した結果、僕らはカーム・カンパニーになることを選択し、実践してきた。あえてそれを目標とした。ほかの会社とはちがう決断をしたのだ。

 僕らは自分たちの会社を独自にデザインした。この本では、僕らがどういう決断を下したのか、なぜその選択肢を選んだのかを説明している。同じような選択をしたいと考える会社にとって、ためになる方法を示そうと思う。あなたはきっと、それらの選択肢を選びたくなるはずだ。そしてそれらを実践してみると、思っていたよりはるかにいい方法だと気づくだろう。あなたの会社もカーム・カンパニーになれる。

 現代の職場は異常だ。混沌を職場の日常にしてはいけない。不安は進歩の必須条件じゃない。成功に必要なのは、一日じゅう会議室にすわって過ごすことでもない。むしろ、それらはどちらも、あなたを本来の仕事から遠ざける障害物だ。不具合を抱えたモデルのありがたくない副産物であり、崖から飛び降りて死んだリーダーに続いて次々に飛び降りるレミングの群れみたいな最悪の習慣だ。そんな習慣はするりとかわして、ゴマすりたちに崖からジャンプさせておけばいい。

カームとは、人びとの時間と集中力を守ること。
カームとは、一週間あたりの労働時間を約四〇時間におさめること。
カームとは、現実的な見込みを立てること。
カームとは、充分な休日があること。
カームは、比較的小さい。
カームは、くっきりみえる境界線。
カームは、会議を最後の手段とする。
カームは、まずはメールなどの受動的なコミュニケーション・ツールで、その次にリア
ルタイムでコミュニケーションを取ること。
カームとは、みんなが独立していて、相互依存が少ないこと。
カームとは、息の長い持続可能な営み。
カームは、採算性が高い。

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『NO HARD WORK!──無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』(ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン/久保美代子訳/好評発売中)

著者ジェイソン・フリードが出演するTED動画

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