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【試し読み】全世界、熱狂! 話題作『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―』冒頭公開(その3)【絶賛発売中】

レベッカ・ヤロス『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―』(上・下)は、全世界で話題のロマンタジー。読者投稿型書評サイトGoodreadsでは、130万人が★5.0をつけたすごい作品です。その冒頭部分を第3章まで試し読みとして公開いたします。この記事では第1章の後半を公開します。

これまでの試し読みの記事はこちらからどうぞ
【試し読み】全世界、熱狂! 話題作『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―』冒頭公開(その1)【絶賛発売中】
【試し読み】全世界、熱狂! 話題作『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―』冒頭公開(その2)【絶賛発売中】

『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―(上・下)』
レベッカ・ヤロス 原島文世 訳
装幀/名久井直子
早川書房
単行本四六判並製/電子書籍版
ISBN: 上 978-4152103499/下 978-4152103505
各2,090円(税込) 2024年9月4日発売

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第1章(承前)

「父親が〈大反逆者〉だったんでしょ。反乱を率いた」わたしは静かに言った。「ゼイデンがここでなにをしてるわけ?」

「反乱軍を指揮した連中の子どもは全員、親の犯罪に対する処罰として徴兵されたの」ミラは列の動きに合わせて横向きに歩きながら言った。「リオーソンが橋を渡ってのけるなんてみんな予想してなかったって母さんが話してた。そのあとは、きっと誰か候補生に殺されるだろうって考えてたらしいけど、いったん竜に選ばれたら……」頭をふる。「まあ、そうなればほぼできることはないよね。騎竜団長にまで昇りつめたの」

「そんなのむちゃくちゃじゃない」わたしはいきりたった。

「ナヴァールへの忠誠は誓ってても、だからってあんたに手を出すのを控えるとは思わないよ。橋を渡ったら──必ず渡り切ってよ──デインを探して。同じ分隊に入れてくれるだろうから、そこがリオーソンから離れてることを祈るしかないね」ミラはいっそう強くリュックの紐を握りしめた。「あの男に近づかないこと」

「諒解」わたしはうなずいた。

「つぎ」騎手科の名簿が置いてある木の机の奥から声が呼びかけた。焼き印持ちの知らない騎手がわたしの知っている書記官の隣に座っていた。フィッツギボンズ大尉の白髪の眉が皺だらけの顔の上にあがる。「ヴァイオレット・ソレンゲイル?」

 わたしはうなずき、羽ペンをとりあげて名簿の次の空欄に名前を書いた。

「だが、君は書記官科にくるつもりかと思っていたよ」フィッツギボンズ大尉はそっと言った。

 そのクリーム色のチュニックがうらやましくて、言葉が見つからなかった。

「ソレンゲイル司令官がそうさせなかったんです」ミラが答える。

 年輩の男のまなざしに悲しみが広がった。「残念だ。あれほど有望だったのに」

「まさか」フィッツギボンズ大尉の隣にいる騎手が言った。「あんた、ミラ・ソレンゲイルか?」顎が落ち、姉を英雄視していることがここにいても感じとれた。

「そう」ミラはうなずいた。「こっちは私の妹。ヴァイオレット。1年生になるから」

「橋で生き残ればな」わたしの後ろにいる誰かが忍び笑いした。「風でそのまま吹き飛ばされるかもしれないぞ」

「あんた、ストリスモアで戦っただろう」机の向こうの騎手が恐れ入って口にした。「敵陣の奥にあったあの砲台を破壊して、鉤爪勲章を受けた」

 冷笑は止まった。

「いま言ってたんだけど」ミラがわたしの背中に片手をあてた。「これはわたしの妹、ヴァイオレット」

「道は知っているな」大尉がうなずき、小塔に入る開放された戸口を指さした。内部は不吉な暗さで、わたしは死にものぐるいで逃げたいという衝動と闘った。

「道は知ってます」ミラは請け合い、後ろのせせら笑ったばかが名簿に署名できるよう、わたしを連れて机の前を通りすぎた。

 わたしたちは戸口で立ち止まり、向かい合った。

「死なないで、ヴァイオレット。一人っ子にはなりたくないよ」ミラはにやっと笑うと、ぽかんと口をあけてみとれる対象者の列を悠然と通りすぎ、遠ざかっていった。姉が誰なのか、なにをしたのかという噂がざわざわと広がっていく。

「あれにこたえるのはたいへんだね」前の女の子が塔のすぐ内側から声をかけてきた。

「うん」わたしは同意し、リュックサックの紐をつかんで暗闇の中へ入った。螺旋らせん階段沿いに等距離で設けられた窓から薄暗い光が射し込んでいて、すぐに目が慣れた。

「ソレンゲイルってあの……?」死につながるかもしれない数百段の階段を上りはじめたとき、女の子は肩越しにふりかえって問いかけた。

「うん」手すりはなかったので、わたしは手を石の壁につけたままあがっていった。

「司令官の?」その前にいる金髪の男の子がたずねた。

「その本人」わたしは答え、ちらっと笑ってみせた。あんなにかたく抱きついていたお母さんがいるなら、そんなにいやなやつじゃないはずだよね?

「うわ。革の服もいいな」笑顔が返ってきた。

「ありがと。うちの姉の厚意なの」

「まだ橋にもたどりつかないうちに、この階段のふちから落ちて死んだ対象者が何人いるんだろう」さらに高く上りながら、女の子が階段の中央を見おろして言った。

「去年はふたり」女の子が見返してきたので、わたしは首をかしげた。「まあ、3人かな、そのうちのひとりが上に落っこちた女の子を数に入れれば」

 茶色い目がまるくなったものの、女の子は向き直って上り続けた。「いくつ段があるの?」と訊いてくる。

「250段」わたしは答え、次の5分間はみんな黙って上に進んだ。

「そんなに悪くなかった」てっぺんに近いところで列が止まったとき、女の子が明るくにっこりして言った。「ところで、あたしはリアンノン・マティアス」

「ディランだ」金髪の男の子が熱心に手をふって応じた。

「ヴァイオレット」友情を避けて同盟を結べというミラの忠告を露骨に無視して、わたしも緊張した笑みを浮かべた。

「生まれてからずっとこの日を待っていたような気がするよ」ディランが背中のリュックを動かした。「ほんとうにこんなことができる機会が手に入ったなんて信じられるかい? 夢みたいだ」

 だよね。当然のことながら、わたし以外の対象者は全員、ここにいることにわくわくしている。騎手科はバスギアス大学で徴集兵を受け入れない唯一の兵科だからだ──志願兵しかいない。

「待ちきれない」リアンノンの笑顔が大きくなった。「だって、に乗りたくないやつなんている?」

 わたし。もっとも、理論上は楽しそうに聞こえないわけじゃない。憧れはする。ただ、卒業まで生き残る可能性がぞっとするほど低いせいで、胃がむかむかするだけだ。

「親は賛成してるのかい?」ディランがたずねた。「うちの母さんは何カ月も気を変えてくれって訴えてたからさ。騎手のほうが昇進の可能性があるって言い続けたけど、母さんは治療師科に入ってほしかったんだ」

「うちの親はあたしがやりたがってるってずっと知ってたから、かなり協力してくれたよ。それに、うちには双子の妹もいるしね。リーガンはもう夢を実現してて、結婚してもうすぐ子どもが生まれるんだ」リアンノンはこっちに視線を戻した。「あんたは? あてさせて。ソレンゲイルなんて苗字じゃ、今年いちばんに志願したんでしょ」

「どっちかっていうと、志願させられた、って感じ」わたしの返答はやや熱意に乏しかった。

「なるほど」

「あと、騎手はたしかにほかの士官よりずっと待遇がいいよ」列がふたたび上に動き出したとき、わたしはディランに言った。さっき後ろで冷笑した対象者が汗だくで赤い顔をして追いついてきた。(ほら、いまは笑う余裕がなくなった)「もっと給料もいいし、服装規定も甘いしね」と続ける。騎手がなにを着ようが、黒でありさえすれば誰も気にしない。騎手に適用される規則は、わたしが法典から暗記したものだけだ。

「オレはすごいんだぜって自慢する権利とね」リアンノンが言い添えた。

「それもね」わたしは同意した。「革の飛行服と一緒に優越感まで支給してるみたい」

「それに、騎手はほかの兵科より早く結婚が許されるって聞いたな」ディランがつけたした。

「そう。卒業したらすぐ」もし生きのびたら。「血統をつなげたいってことに関係があるんだと思う」もっとも成功した騎手は、伝えていくべき財産だからだ。

「でなきゃ、ほかの兵科より早く死ぬからかもね」リアンノンが考え込んだ。

「ぼくは死なない」ディランはわたしが感じているより自信を持って言うと、鎖に指輪を通してぶらさげた首飾りをチュニックの下からひっぱりだした。「出発前に求婚するのは不運を招くって言われたから、ぼくらは卒業まで待ってるんだ」指輪にキスして鎖を襟の下に戻す。「これから3年は長いだろうけど、その価値はあるよ」

 わたしは溜息を胸にしまっておいた。もっとも、これはいままで聞いた中でいちばんロマンチックな台詞だったけれど。

「おまえは橋を渡り切るかもしれないがな」後ろの男がせせら笑った。「こいつは谷底からの風に吹き飛ばされるさ」

 わたしはあきれて天をあおいだ。

「黙って自分のことだけ気にしてなよ」石段をコツコツ鳴らして上に進みながら、リアンノンがぴしゃりと言った。

 頂上が見えてきた。出口はぼやけた光に満ちている。ミラの言うとおりだった。あの雲の群れは惨事をもたらすに違いない。そうならないうちに橋の向こう側にたどりつかないと。

 さらに一歩進み、リアンノンの足音がまた響く。

「その靴、見せて」背後の不愉快な男に聞かれないように、わたしはそっと言った。

 眉が寄り、茶色い目に当惑しきった色が浮かんだものの、リアンノンは靴底を見せた。わたしがさっき履いていたのと同じようにつるつるだ。ずしんと心が重くなった。

 列がふたたび動きはじめ、戸口からほんの数歩のところで止まった。「足の大きさは?」と問いかける。

「はあ?」リアンノンは目をぱちくりさせた。

「その足。大きさはいくつ?」

「8」眉間に2本の皺を寄せてリアンノンは答えた。

「わたしは7」すばやくそう言う。「死ぬほど痛いと思うけど、わたしの左足のブーツを履いてみて。とりかえっこしよう」右のほうには短剣が1本入っている。

「どういうこと?」頭がおかしくなったのかという目で見られた。実際そうなのかもしれない。

「これは騎手用の軍靴。石ですべりにくいの。足の指が押しつぶされて、全体にひどい履き心地だと思うけど、少なくとも雨が降ってきたときに転がり落ちない見込みがあるよ」

 リアンノンはひらいた戸口──と、暗くなってきた空──を見やり、わたしに視線を戻した。「靴を片方換えてくれるわけ?」

「向こう側につくまでね」わたしは開放された戸口の先を見た。すでに3人の対象者が両腕を大きく広げて橋を渡っているところだ。「でも、早くしないと。もうすぐ順番だから」

 リアンノンはつかのま悩むように口をすぼめてから、承諾した。わたしたちは左のブーツを交換した。なんとか紐を結び終わったのは列がまた動き出す直前で、後ろの男が背中を押したので、わたしは外気にさらされた台の上によろめき出た。

「行こうや。向こう側でやることがあるやつもいるんだぜ」

 その声はほんとうにしゃくにさわった。

「いまはあんたなんか相手にしてる暇はないし」わたしはつぶやき、真夏の朝の蒸し暑い空気のなか、肌に吹きつけてくる風に逆らって体の平衡を保った。(三つ編みはいい考えだね、ミラ)

 小塔のてっぺんはむきだしだった。円形の建造物に沿って、わたしの胸の高さの石の胸壁がでこぼこと続いていたけれど、視界がさえぎられることはない。ふいに、渓谷と下を流れる川がおそろしく遠く感じられた。あの下で何台の荷馬車を待機させているのだろう? 5台? 6台? わたしは統計値を知っている。橋は騎手対象者のおおよそ15パーセントの命を奪う。この騎手科の試験──これも含めて──はすべて、候補生の騎乗能力を試すためのものだ。風の中で細い石の橋を渡り切ることさえ無理なら、竜の背中で体勢を保って戦うことなんてできるわけがない。

 それに死亡率は? きっとほかの騎手はひとり残らず、栄光のために危険を冒す価値があると思っているのだろう──または、自分は落ちないと考える傲慢さがあるか。

 わたしはどちらでもない。

 吐き気がこみあげて、胃を押さえる。鼻から息を吸い込んで口から出しつつ、リアンノンとディランのあとから建物のへりを歩いていった。指で石材に触れながら、橋へ向かってぐるりと進んでいく。

 3人の騎手が待っている橋の入口は、小塔の壁にぽっかりと口をひらいた穴にすぎなかった。対象者たちが不安定な橋に足を踏み出す前に、袖のちぎれた服を着た騎手が名前を記録している。もうひとり、頭頂部の真ん中の細長い部分をのぞき、髪をすべて剃り落とした騎手が指示を出した。ディランは隠された指輪が幸運をもたらすかのように胸を叩くと、所定の位置に移動した。ほんとうに幸運がくるといいけれど。

 3人目がこちらを向き、わたしの心臓はただ……動きを止めた。

 背が高く、風に乱れた髪も、眉も黒い。暖かな淡褐色の皮膚に覆われた顎の輪郭は力強く、かすかにひげを剃った痕がうかがえる。体の前で腕組みすると、胸と腕の筋肉が波打って動き、わたしは唾をのみこんだ。それにあの目……黄金の散った黒瑪瑙めのうの瞳。その対照ははっとするほどで、衝撃的でさえあった──この男に関するすべてがそうだ。あまりにもけわしくてのみで刻んだように見えるのに、驚くほど完璧な顔立ち。まるで彫刻家が生涯かけて彫り込んだかのようだ。
しかも、そのうち1年は口もとに費やしたに違いない。

 こんな極上の男を目にしたのははじめてだった。

 軍事大学で暮らすというのは、山ほど男を見てきたということなのに。

 左の眉に交差して頬の左上に走っているななめの傷痕さえ、いっそう魅力を増しているにすぎない。ものすごい二枚目。やけどしそうな色男。関わったら厄介なことになるとしても、それがいい、という域に達している男前。急に、どうしてミラが同学年以外関係を持つなと言ったのか、正確なところが思い出せなくなった。

「ふたりとも、向こう側で会おう!」ディランが肩越しに昂奮した笑みを浮かべて言うと、両腕を大きく広げて橋の上に踏み出した。

「次のやつの準備はいいか、リオーソン?」ちぎれた袖の騎手が言った。

 ゼイデン・リオーソン

「あんたは覚悟ができてる、ソレンゲイル?」リアンノンが前に進みながらたずねた。

 黒髪の騎手が完全にわたしのほうを向き、ぱっと視線を合わせてきた。間違った理由で動悸どうきが激しくなる。螺旋や渦巻の曲線が織りなす反乱の証痕レリックは、むきだしの左手首から始まって黒い軍服の下に消え、襟もとでふたたび現れると、そこから首の上へ渦巻状にのびていき、顎の線で止まっていた。

「もう、最低」小声でつぶやくと、その目がきゅっと細まった。吹きすさぶ風がきっちり留めた三つ編みをもぎとろうとしている中で、いまの声が聞こえたかのようだ。

「ソレンゲイル?」男が歩み寄ってくる。わたしは顔をあげ……さらに見あげた。

 なんてことだろう、鎖骨にも届かない。大きすぎる。190センチは超えているに違いない。

 自分がまさにミラに言われたとおり──華奢──だという気分だったけれど、わたしは1度うなずいた。すると、きらめく黒瑪瑙の瞳が冷たい憎しみ一色に染まった。嫌悪が苦い香水のように漂ってきて、味わうことさえできそうだった。

「ヴァイオレット?」リアンノンが問いかけ、先へ進んだ。

「ソレンゲイル司令官の末っ子か」その声は低く、非難に満ちていた。

「あんたはフェン・リオーソンの息子でしょ」と切り返す。その厳然たる事実が骨の髄までみ込んできた。わたしはつんと顎をあげ、ふるえださないようにせいいっぱい全身で踏ん張った。

〝身許がばれたら、その瞬間殺されるよ〟ミラの言葉が頭の中を転がりまわり、恐怖に喉が締めつけられた。わたしを胸壁からほうりだす気だ。体をかかえあげて、そのままこの小塔から落とすつもりだろう。橋を歩く機会さえ得られないに違いない。母がずっとわたしに使わないよう注意していた言葉──弱さのせいで死ぬことになる。

 ゼイデンが深く息を吸い込み、顎の筋肉が動いた。1回。2回。「おまえの母親は俺の父を捕えて処刑を監督した」

 ちょっと。ここで憎む権利があるのはそちらだけだとでも? 憤りが血管を駆けめぐる。「あんたの父親はわたしの兄を殺した。おあいこみたいね」

「まさか」あらゆる細部を記憶しているか、どんな弱点でも見つけ出そうとしているかのように、怒りに燃えたまなざしがわたしをなでていく。「おまえの姉は騎手だな。革服はそのせいか」

「かもね」わたしはその視線を受け止めた。ゼイデンの背後の橋を越えるのではなく、このにらめっこに勝てば騎手科に入る資格を得られるかのように。どちらにしても、渡り切ってみせる。ミラはきょうだいをふたりとも失ったりしない。

 ゼイデンは両のこぶしを握りしめ、身をこわばらせた。

 わたしは攻撃に備えた。この塔から投げ落とされるとしても、そうやすやすとやられるものか。

「大丈夫?」リアンノンがゼイデンとわたしを交互に見ながらたずねた。

 ゼイデンが目をやる。「友人同士か?」

「階段で会ったんです」リアンノンは胸を張って答えた。

 ゼイデンが下を向き、ちぐはぐな靴に気づいて片眉をあげた。握ったこぶしから力が抜ける。

「おもしろい」

「わたしを殺すの?」わたしはさらに顎をもたげた。

 ふたりの視線がぶつかりあったときだった。空が裂けて猛烈な雨が降り出し、あっという間に髪も革の装備もまわりの石材もずぶ濡れになった。

 悲鳴が大気をつんざき、いっせいに橋へと注意を向けたリアンノンとわたしは、ディランが足をすべらせたところをちょうどまのあたりにした。

 わたしは息をのみ、心臓が喉まではねあがった。

 ディランはあやういところで石の橋に腕をひっかけ、存在しない足がかりを必死で探して両足をばたばたさせていた。

「体をひきあげて、ディラン!」リアンノンが叫んだ。

「ああ、お願い!」わたしはぱっと手で口もとを覆ったけれど、ディランは水に濡れた石をつかみきれずに転落し、視界から消えた。その体が下の谷でどんな音をたてたとしても、風雨がさらっていった。わたしのくぐもった叫びもかき消された。

 ぞっとしたまま視線を戻す。ゼイデンはずっとわたしから目を離さず、内心の読みとれない顔で黙ってこちらを見守っていた。

「橋がかわりにやってくれるのに、なぜこの手で殺して無駄な労力を費やす必要がある?」唇が物騒な笑みをたたえて弧を描いた。「おまえの番だ」

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【試し読み】全世界、熱狂! 話題作『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―』冒頭公開(その4)【絶賛発売中】

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・Vol.1 全世界が熱狂する"ロマンタジー"日本上陸!
・Vol.2 ロマンタジーの時代が来る! 発売前から大反響
・Vol.3 これがロマンタジーだ!
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