ハヤカワ・ノンフィクション
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本
なぜ人は自分の若いころの音楽がいちばんよいと思うのか……『ハマりたがる脳――「好き」の科学』訳者あとがき
「自分の好みを最もわかっていないのが自分である」……行動経済学をはじめとするいろいろな実験・研究結果をもとに人間行動の謎を考察する、現代人なら無視できない1冊、『ハマリたがる脳――「好き」の科学』が本日発売。本記事では、その内容をコンパクトに紹介する「訳者あとがき」を公開します。
訳者あとがき(桃井緑美子)
本書『ハマりたがる脳─「好き」の科学』(『好き嫌い─行動科学最大の謎─』を改題)
仏教が進化論的に「正しい」理由とは? 『なぜ今、仏教なのか――瞑想・マインドフルネス・悟りの科学』第1章全文公開【8/5発売】
1 赤い薬を飲む
人間のありようをドラマチックに表現しすぎるのを覚悟のうえで尋ねよう。映画『マトリックス』を見たことはあるだろうか。
主人公のネオ(キアヌ・リーブス)は、自分の住む世界が夢の世界であることに気づく。ネオが日々暮らしていると思っていた生活は実際には精巧な幻覚にすぎず、現実のネオの肉体は、ぬめぬめした液体に包まれて棺大のポッドにとらわれていた。ネオのポッドは、何列も何列もずらり
「オリヴァー・サックスの著作を読むたびに気になっていたことがある」『幻覚の脳科学』精神科医・春日武彦文庫解説
(書影はAmazonにリンクしています)
宙を舞う青いハンカチや楽譜、体長15センチの小人、光り輝く幾何学模様。話し声や音楽、悪臭、失った手足の感覚——現実には存在しないものを知覚してしまう「幻覚」。これらの多くは狂気の兆候などではなく、脳のメカニズムを解明する上で貴重な手がかりとなる現象であることを、脳神経科医サックス先生が豊富な実例を挙げながら解説してくれる『幻覚の脳科学』(大田直子訳