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ハヤカワ・ノンフィクション

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ハヤカワ・ノンフィクション文庫や、ハヤカワ・ノンフィクションなど。話題のノンフィクション作品の解説、試し読みを公開中。
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#行動経済学

行動経済学の新概念『スラッジ』「面倒だからやめておこう…」が生む経済損失とは?

行動経済学の新概念『スラッジ』「面倒だからやめておこう…」が生む経済損失とは?

人間の心のクセを利用して合理的な選択を促す「ナッジ」とは逆に、合理的な行動を阻む仕組み、いわば「負のナッジ」が「スラッジ」。
ユーザーにとって不利な選択を誘導するようなオンラインシステムや、膨大な書類が必要とされる給付金制度……などなど、あなたの周りにあふれるスラッジの実態と悪影響、さらに回避する対策を説くのが新刊『スラッジ 不合理をもたらすぬかるみ』(キャス・R・サンスティーン、土方奈美訳、早川

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「最も理解されていない思想家」の実像に迫る!『アダム・スミス 共感の経済学』序文

「最も理解されていない思想家」の実像に迫る!『アダム・スミス 共感の経済学』序文

 2月16日に『アダム・スミス 共感の経済学』(ジェシー・ノーマン:著、村井章子:翻訳)が発売されます。
 アダム・スミスは「近代経済学の父」として知られる一方、その思想があまりにも幅広い分野にまたがっていることもあり「世界で最も理解されていない思想家」と形容されることも。本書では「市場原理主義者」「不平等と利己主義の擁護者」「女性軽視」といったスミスにまつわる〝神話〟をそぎ落とし、経済学から政治

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闇のカーネマン!? 吉川浩満氏が語る、『NOISE』(ダニエル・カーネマン他)活用の可能性

闇のカーネマン!? 吉川浩満氏が語る、『NOISE』(ダニエル・カーネマン他)活用の可能性

畢生の〈ヒューマンエラー大全〉完結 ダニエル・カーネマンの前著『ファスト&スロー──あなたの意思はどのように決まるか?』(上下、村井章子訳、ハヤカワ文庫NF)は、ヒューマンエラーの源泉であるバイアスに関する百科全書的啓蒙書として、重要な意思決定に携わる人びとの必読書となった。

この本のおかげで私たちは自らのバイアスを多少なりとも気にするようになった。それになにより、バイアス研究にもとづいた行動経

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人事評価システムはなぜ機能不全に陥るのか? カーネマン最新刊『NOISE』から読み解く

人事評価システムはなぜ機能不全に陥るのか? カーネマン最新刊『NOISE』から読み解く

第23章 人事評価の尺度まずはちょっとした実験をやってみてほしい。友人でも同僚でもいい、あなたのよく知っている人を3人取り上げて、親切・知性・勤勉の3項目について5段階で評価する。5が最高で1が最低である。さて評価を終えたら、今度はその3人をよく知っている身近な人(夫または妻、親しい友人など)に同じことを頼む。

これは、自分と他人とで評価がどれほどちがうかを実際に知るよい機会だ。できれば、なぜ評

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難民認定が「賭け」である理由 ダニエル・カーネマン他『NOISE』解説・友野典男

難民認定が「賭け」である理由 ダニエル・カーネマン他『NOISE』解説・友野典男

『NOISE』解説(元明治大学教授 友野 典男)難民認定の許可は審査官によって大きく違い、アメリカでの調査によると、ある審査官は申請の5%しか許可しないが別の審査官は88%許可するという例があった。難民に認定されるかどうかは賭けをするようなものなので、この調査のタイトルは「難民ルーレット」である。

経験豊富な精神科医10人が参加した調査では、百人近い患者の診断を行なったところ、2人の医師の意見が

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年末年始の「衝動買い」を減らす方法とは? 「行動経済学」を実生活にいかすには…

年末年始の「衝動買い」を減らす方法とは? 「行動経済学」を実生活にいかすには…

解説 日々の暮らしの裏に「行動経済学」あり
(東京大学大学院経済学研究科教授 阿部 誠)1)行動経済学とは購買の5~9割は事前に予定されていなかった非計画購買(衝動買い)であると言われている。この割合は、消費者特性、商品特性、環境要因などによって異なるが、衝動買いは経済活動の半分以上を占めており、それらはビジネスにとって不可欠なものである。企業は消費者行動の原理に基づき、魅力的なマーケティング活動

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入山章栄、橘玲、松尾豊、アダム・グラント、アンジェラ・ダックワース、スティーヴン・レヴィット、フィリップ・E・テトロック、ロバート・B・チャルディーニ、エステル・デュフロ絶賛!
ダニエル・カーネマン他『NOISE:組織はなぜ判断を誤るのか?』発売中

入山章栄、橘玲、松尾豊、アダム・グラント、アンジェラ・ダックワース、スティーヴン・レヴィット、フィリップ・E・テトロック、ロバート・B・チャルディーニ、エステル・デュフロ絶賛! ダニエル・カーネマン他『NOISE:組織はなぜ判断を誤るのか?』発売中

『ファスト&スロー』のダニエル・カーネマンが、組織の判断にメスを入れた『NOISE:組織はなぜ判断を誤るのか?』(オリヴィエ・シボニー、キャス・R・サンスティーンとの共著、村井章子訳/早川書房)が大きな話題を呼んでいます。この記事では、各界の著名人から寄せられた絶賛コメントを紹介します!

本書の詳細については▶こちらから

著訳者紹介

■著者紹介:
ダニエル・カーネマン(Daniel Kahn

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デジタルマネーに気をつけろ。その理由を「行動経済学」で説明すると?

デジタルマネーに気をつけろ。その理由を「行動経済学」で説明すると?

「クレジットカードだとついムダ使いしてしまう」
「高いものは質がよいと思い込みがち」
「目先の欲求に負けて貯金できない」
……わかっているのになかなか避けられないお金のワナと対策を、現代の新常識である「行動経済学」からわかりやすく解説するのが、新刊『無料より安いものもある お金の行動経済学』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)。
毎日ちゃんと気をつけているはずなのに、ついつい無駄遣いしてしまう……私

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ついムダ使いしてしまう6つの理由とは? 『無料より安いものもある お金の行動経済学』からお金のしくじりエピソードを紹介(本文試し読み)

ついムダ使いしてしまう6つの理由とは? 『無料より安いものもある お金の行動経済学』からお金のしくじりエピソードを紹介(本文試し読み)

「クレジットカードだとついムダ使いしてしまう」
「高いものは質がよいと思い込みがち」
「目先の欲求に負けて貯金できない」
……わかっているのになかなか避けられないお金のワナと対策を、現代の新常識である「行動経済学」からわかりやすく解説するのが、新刊『無料より安いものもある お金の行動経済学』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)。
たとえば、「カジノで散財してしまう」なんて失敗は、自分とは無関係? も

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知識がない人ほど過激な意見をふりかざすのはなぜか? 各界の著名人が絶賛した『知ってるつもり』が文庫化【本文試し読み】

知識がない人ほど過激な意見をふりかざすのはなぜか? 各界の著名人が絶賛した『知ってるつもり』が文庫化【本文試し読み】

『知ってるつもり:無知の科学』への絶賛コメント!(敬称略、50音順)

池谷裕二(脳研究者・東京大学教授)「知的生物たるヒトはその高度な知性ゆえに無知の罠から逃れられない。気の毒すぎて「私」という生物がますまず愛おしく感じられます」

佐渡島庸平(株式会社コルク代表) 「中学生のときからずっと「無知の知」について考えてきた僕にうってつけ」

竹内薫(サイエンス作家)「AI時代に人間の「知」はどう進

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ムダ使いが止まらない! 6つの理由。『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金篇―』より抜粋

ムダ使いが止まらない! 6つの理由。『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金篇―』より抜粋



昨日発売の『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金篇―』(ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー/櫻井祐子訳)。
著者のアリエリー氏は、テレビでも人気の行動経済学者。『予想どおりに不合理』『不合理だからうまくいく』などのベストセラーで行動経済学ブームをつくりあげました。
そのアリエリー氏が、コメディアンのジェフ・クライスラー氏と組んで、これまでの研究のエッセンスをぎゅっと詰め込んだの書いたの

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人生100年時代…でもお金はどうすれば? 『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金篇―』訳者あとがき

人生100年時代…でもお金はどうすれば? 『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金篇―』訳者あとがき



ダン・アリエリー&ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門―お金篇―』を本日、早川書房より刊行します。
著者のアリエリー氏は、テレビでも人気の行動経済学者。『予想どおりに不合理』『不合理だからうまくいく』などのベストセラーで行動経済学ブームをつくりあげました。
そのアリエリー氏が、金融ネタを得意とするコメディアンのジェフ・クライスラー氏と組んで、お金に焦点を絞って書いたのが本書

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京大生の80%が陥る2つの認知バイアスとは? 『〔エッセンシャル版〕行動経済学』解説・依田高典(京都大学教授)

京大生の80%が陥る2つの認知バイアスとは? 『〔エッセンシャル版〕行動経済学』解説・依田高典(京都大学教授)

2021年2月2日、ついに文庫版が発売となった『〔エッセンシャル版〕行動経済学』より、京都大学教授・依田高典氏による巻末解説を公開します。

解説:腹応えある教養が楽しめる入門書依田高典(京都大学大学院経済学研究科教授) 

高まる行動経済学への注目

「いま、行動経済学に注目が集まっている」と、著者は書き出しで述べている。

仰せの通りで、書店には沢山の行動経済学の入門書が並んでいるが、玉石混淆

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ハーバード大学の名物教授の溢れんばかりのスター・ウォーズ愛? キャス・R・サンスティーン『スター・ウォーズによると世界は』訳者・山形浩生あとがき

ハーバード大学の名物教授の溢れんばかりのスター・ウォーズ愛? キャス・R・サンスティーン『スター・ウォーズによると世界は』訳者・山形浩生あとがき



 本書はCass R. Sunstein, The World According to Star Wars の全訳だ。訳にあたっては、原出版社から得たpdfファイルと、ハードカバー版を参照している。

 さて、本書についての説明だが……えー、なんと言うべきだろうか。本書はかなりユニークな本としか言いようがない代物ではある。

 まず著者について。著者キャス・R・サンスティーンは、アメリカの法

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