【劇場アニメ公開記念】『僕が愛したすべての君へ』冒頭試し読み
僕が愛したすべての君へ序章、あるいは終章
在宅死、という言葉を知ったのは、つい最近のことだ。
癌に冒されて余命幾ばくもない患者が、病院での治療やホスピスでの終末医療を拒否し、住み慣れた我が家で家族に囲まれながら最期の時を過ごす。その選択肢が、同居していた息子夫婦の口から提案されたことを僕は幸せに思った。
息子夫婦や孫に迷惑をかけるのも忍びなかったが、それ以上に、皆が僕と最期まで一緒に過ごしたがってくれているのだと、そうすんなり信じられたことが嬉しくて。
抗癌剤は使わ