見出し画像

”好きなものを追いかけてきた人生。でも、満たされないのは、なぜなんだ。” ――小説『ハイ・フィデリティ』(ニック・ホーンビィ)刊行

イギリスの作家、ニック・ホーンビィ『ハイ・フィデリティ』(原題 High Fidelity、森田義信訳)を2022年12月21日に刊行します。本書を原作とする映画も、世界中で話題となった名作です。

ハイ・フィデリティ
ニック・ホーンビィ/森田義信訳
2022年12月21日発売/文庫512頁/定価1,694円(税込)

◆あらすじ

ロブ、35歳、さえないレコードショップの店主、最近、恋人に振られたばかり。でも気にしない。弁護士の恋人は、出世してから変わってしまって、音楽の趣味も合わなくなったから。自分には店があり、家にも自慢のコレクションが並んでいる……それで満足だと思っていたのに、この寂しさはなんだろう? こじれた青春の行き着く果てにロブが出会ったものは?

◆担当編集者より

『ハイ・フィデリティ』は、1995年に原書が出版、99年に森田義信氏の訳で新潮文庫より刊行され、そして2000年にジョン・キューザック主演で映画化されると、世界中の人々の心に刺さった作品です。

刺さるのは、たとえばここ。主人公の店で働くバリー(33歳)を描いた一節――

 彼は容赦なくしゃべりつづける。バリーが口にするのは、ほとんど意味のないことばかりだ。音楽についてもよくしゃべるが、本についても(モンスターや惑星の出てくるもの――たとえばテリー・プラチェットのようなものだ)、映画についても、女についてもよくしゃべる。ポップ、ガールズ、エトセトラ。リコリス・コムフィッツの言ったとおり。しかしバリーの会話は、名前の羅列でしかない。いい映画を見ても、プロットを説明するわけでもなければ、どんな気持ちになったかを述べるわけでもない。ただ、今年のベストのどのあたりに位置するか、すべての映画のベストのどのあたりに位置するか、そして、この十年のベストのどのあたりに位置するかを発表するだけだ。彼は、トップ・テンとかトップ・ファイブとかいう基準でしかものを考えない。

『ハイ・フィデリティ』p.62-63

どうでしょう? 「こういう奴、いるいる……っていうか、自分で言ってた!?」と思う人も少なくないのではないでしょうか。そんなことないですか、そうですか。

ともあれ、本作は、2020年にも全世界配信でドラマ化されるなど、刊行から四半世紀を経てもその魅力はまったく色褪せていません。
このたびの復刊では、最初の翻訳の雰囲気はそのままに、訳文の細部を丁寧に調整しつつ、ドラマ化などの最新情報をフォローした三橋曉氏の解説が加わり、画家の落合翔平氏とwelle design 坂野公一氏により新たな装いとなりました。
紙の書籍、電子書籍ともに好評発売中です。

◆著者紹介

ニック・ホーンビィ Nick Hornby

(C)Parisa Taghizadeh

1957年、イングランドのサリー州レッドヒル生まれ。大学卒業後、テレビや映画の世界をめざしつつ、教師となる。30代半ばの1992年、サッカーに関するエッセイ『ぼくのプレミア・ライフ』でデビュー。1995年、初めての小説である本作『ハイ・フィデリティ』を刊行すると、英国だけで百万部を突破、世界的なベストセラーとなり、2000年には映画化された。その後も『アバウト・ア・ボーイ』、『ア・ロング・ウェイ・ダウン』などの話題作を発表。『15年後のラブソング』など著作の多くが映像化され、さらに『ブルックリン』といった映画に脚本家として関わる。2020年、本作は二度目の映像化となるドラマシリーズが配信され、批評家から高く評価された。

◆訳者略歴

森田義信(もりた・よしのぶ)
1959年生、翻訳家・文筆家。訳書『ぼくのプレミア・ライフ』『アバウト・ア・ボーイ』『いい人になる方法』『ソングブック』『ガツン!』ニック・ホーンビィ、『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』ジーン・シモンズ、他多数。

***

ハイ・フィデリティ』ニック・ホーンビィ著 森田義信 訳
2022年12月21日発売(紙・電子)/文庫512頁/定価1,694円(税込)


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!