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本で24時間を超越する――ハヤカワ五味さんが選んだハヤカワ文庫5選

毎年恒例の「ハヤカワ文庫の100冊フェア」。今年は4人のインフルエンサーの皆さんに、おすすめ本をエッセイやインタビュー、そして動画でご紹介いただきました。本欄では100冊フェア小冊子の中から、ハヤカワ五味さんによる推薦エッセイを採録します。

ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)

1995年、東京都生まれ。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科卒。大学在学中にアパレルブランド〝feast by GOMI HAYAKAWAを立ち上げる。2015年に株式会社ウツワを起業し、代表取締役に就任。株式会社ILLUMINATE代表取締役。

【動画で紹介!】


本で24時間を超越する

 人生は短すぎる。
 1日は24時間しかないし、寝てる時間を引いたら17時間しかありません。仕事以外の自由時間なんて1日5時間くらい。その5時間でできることなんて、近所の銭湯でスッキリして、瓶牛乳飲んでご飯食べて帰ってくるくらいです。でも、そのちょっとした風呂上がりの時間に本を開いてみると、東京都の銭湯にいながら、地球の裏側で誰かが研究した出来事や、知らない人の一生、もしかしたらあったかもしれない未来について知り、追体験することができます。本を読むって、楽しいですよね。
 ということで、今回は私の知的好奇心を刺激してくれたハヤカワ文庫の5作品を紹介します。
『国家はなぜ衰退するのか(上・下)』は尊敬する先輩がおすすめしていたので読みました。私は社会科の成績が恐ろしく悪く、難しそうな内容になんとなく抵抗感がありました。ただ、読み始めてみると普段自分が会社を運営する中で考えていること、体験してきたことと、これまでさまざまな国家が試行錯誤してきた「仕組み」や「制度」は実は繫がっていたんだと気づき、読み進める手が止まりませんでした。
『予想どおりに不合理』は、スタートアップ経営者の間で「一回読んだ方がいい!」と言われている実用的な本です。私も例に漏れず読んだし、むしろ読まずにサービス設計をしない方がいいんじゃないかくらいに思っています。仕事やセルフマネジメントに悩んだとき、この本に書かれている行動経済学や認知バイアスのエピソードが役に立ちました。特にECなどto C(対顧客)事業ではどのように伝えるか、見せるかについて人間の行動って不思議だよなあとながらく思ってましたが、こうやって整理されるとある意味一貫してるんですね。
 人間の不思議で言えば、『ヒトの目、驚異の進化』も読みました。人間の目が文明の進化に合わせてアップデートしてきたことが書かれているのですが、その理由がコミュニケーションや、相手のことをより理解するためだったという結論には驚きました。
 そういった新しい発見のある楽しい本をいっぱい読んでいると、思い出す一冊があります。『華氏451度〔新訳版〕』です。
 本が忌むべき禁制品となったディストピアを描いたSF小説。1953年出版の本なのに、むしろ現代について書かれているように感じます。今の私はこの小説の登場人物と一緒になっていないか。SNSや、アプリ、ゲームなど、インスタントな情報をなんとなく受け取って消費しているだけじゃないか――。知的好奇心とは何なのか考えさせられます。
 そんな時に読みたいと思うのは、『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』ですね。スマホやSNSを見ることで1日が終わってしまう人に向けて、それらを手放す方法を紹介した一冊です。スマホをやめたいのにやめられないといった状態は『予想どおりに不合理』の内容ともつながっている気がします。最近は、ネットで本を探すことも増えていたので、自分がいつも見ているような本ばかりサジェストされていて、あまり新しい本との出会いがなかったかもしれません。
 せっかくなのでこの機会に、100冊のリストを上から見てピンと来た本を、美味しいお菓子と、お茶でも淹れながら読んでみたいと思います。


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