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女たちが語るトロイア戦争。ブッカー賞作家による傑作歴史小説『女たちの沈黙』(パット・バーカー)、1月20日発売

早川書房は、イギリスの作家、パット・バーカー『女たちの沈黙』(原題 The Silence of The Girls、北村みちよ訳)を2023年1月20日に刊行します。

女たちの沈黙
パット・バーカー、北村みちよ訳
早川書房より1月20日刊行(紙・電子同時発売)
装画:サイトウユウスケ 装幀:名久井直子

◆あらすじ

トロイア戦争、最後の年。
トロイアの近隣都市リュルネソスが、ギリシア連合軍によって滅ぼされた。都市の王妃ブリセイスは囚われ、奴隷となった。
その主は、英雄アキレウス――彼女の家族と同胞を殺した男。

ブリセイスは、やはり「戦利品」として囚われたイーピスらと、新たな日常を築いていく。ところが事態は急変する。
アキレウスと不仲である総大将アガメムノンが、ブリセイスを無理やり自分のものにしようというのだ。男たちの争いは激化し、軍内部は混乱を極める。
そんななか、女たちに与えられた選択肢は、服従か死か。
だが、ブリセイスが選んだのは――。

数々の戦争小説を手掛けてきたブッカー賞作家が、西洋文学の起源にある暴力へ遡り、抑圧された者たちの声を高らかに響き渡らせる傑作歴史小説! イギリスで40万部突破。

英ガーディアン紙
「西洋文学の正典がホメロスに基づいているとしたら、それは女たちの沈黙に基づいている。奴隷となったトロイアの女たちの視点から『イリアス』の出来事を描き直すバーカーの見事な介入は、#MeToo運動や、抑圧された声を拾い上げるための広範な運動と調和した。依然として戦争のなくならない世界において、その試みは現代人にぞっとするような共感を与える」

「ヨーロッパ文学がどのように始まったか知ってるかい」彼は最初の授業で出席を取ってから、よくこんな質問を発した。「喧嘩からだ。すべてのヨーロッパ文学は戦いから始まったんだよ」。それから彼は『イーリアス』の本を手に取り、学生に向かって冒頭を読み上げた。「〝怒りを歌え、女神よ、ペーレウスの子アキレウスの呪わしき怒りを……強者たちの王アガメムノーンと尊いアキレウスが最初に争ったところから始めよ〟。この二人は何のことで争ったのかな、この荒々しく力強い二人は? これは酒場の喧嘩みたいな低俗なことなんだ。彼らは女をめぐって争ったんだよ。本当のところ、少女と言ってもいい。父親から誘拐された少女、戦争のときにかどわかされたんだ」――フィリップ・ロス『ヒューマン・ステイン』(上岡伸雄訳、集英社)

『女たちの沈黙』エピグラフ

◆著者紹介

パット・バーカー Pat Barker

Photo (C)Justine Stoddard

現代イギリスを代表する作家のひとり。
1943年、ノースヨークシャーにて労働者階級の家庭に生まれる。大学で国際関係史を学び、歴史と政治の教師となる。1982年に最初の小説『アイリスへの手紙』を発表すると、文学賞を受賞するとともに映画化され、一躍注目を集めた。作家としての地位を確立したのは、第一次世界大戦を題材とする〈再生 Regeneration〉三部作(1991年~1995年、未邦訳)。とくに第三作The Ghost Roadは1995年のブッカー賞を受賞し、2008年にはベスト・オブ・ブッカー賞の候補ともなった。
2000年、功績がたたえられ、大英帝国勲章(CBE)を受章した。
2018年に発表された本書『女たちの沈黙』は英国で40万部を超えるベストセラーとなった。批評家からも高く評価され、英ガーディアン紙による〈21世紀に書かれた最良の本の1冊〉にも選出された。2021年、本書の続篇となるThe Women of Troy(未邦訳)を発表している。

◆訳者略歴

北村みちよ Michiyo Kitamura
英米文学翻訳家。東京女子大学文理学部英米文学科卒。訳書『バーナデットをさがせ!』マリア・センプル、『ウィルキー・コリンズ短編選集』ウィルキー・コリンズ、『英語で聞く 世界を変えた女性のことば』ニーナ・ウェグナー、『エーリヒ・クライバー』ジョン・ラッセル(共訳)他


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