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新たな物語との出会い――けんご📚小説紹介さんが選んだハヤカワ文庫5選

毎年恒例の「ハヤカワ文庫の100冊フェア」。今年は4人のインフルエンサーの皆さんに、おすすめ本をエッセイやインタビュー、そして動画でご紹介いただきました。本欄では100冊フェア小冊子の中から、けんご📚小説紹介さんによる推薦エッセイを採録します。

けんご📚小説紹介

1999年、福岡県生まれ。TikTok等で小説を紹介する動画を投稿するインフルエンサー。2022年、『ワカレ花』で小説家デビュー。

【動画で紹介!】

@kengo_book

#PR 25年以上も上映禁止とされた大問題作。その原作小説はもっと凄まじいものでしたーー。『#時計じかけのオレンジ#本の紹介 #おすすめの本 #小説 #小説紹介

♬ オリジナル楽曲 - けんご📚小説紹介 - けんご📚小説紹介

新たな物語との出会い

 二〇二三年二月のことである。僕は『アルジャーノンに花束を〔新版〕』の紹介動画をTikTokに投稿した。海外文学作品の中で最もポピュラーといえる小説かもしれない。
 内心では「こんな大ベストセラー作品を今さら紹介したところで……」と思っていた。その不安は杞憂であった。動画はみるみるうちに再生数を伸ばし、今や五〇〇万再生を超えているのである。動画をきっかけに多くの人が作品を手に取ってくれた。
 そのおかげで、改めて気づくことがあった。どんなに有名な作品だったとしても、読んでいない人はいるのである。知らない人は大勢いるのである。
 ということで、今回は名作と呼ばれる海外文学作品を読んだことがない人に向けて、五冊紹介したいと思う。新たな物語との出会いのきっかけになれば嬉しい。
 三十二歳になっても幼児程度の知能しか持たない主人公が、手術により天才へ変貌を遂げる物語──それが『アルジャーノンに花束を〔新版〕』である。初めてこの作品を手にする方は読みづらいと感じるだろう。なにせ小説にもかかわらず、誤字だらけだからである。もちろんこれは意図的なものであり、文章であることの意味を最大限に活かした、画期的な手法だ。読後には作者だけでなく、翻訳者にも敬意の気持ちでいっぱいになるだろう。
『時計じかけのオレンジ』という作品を映画で観たことがある人は少なくないはずだ。暴力的で、過激な映像作品である。僕も観たことがあるが、何度も目を背けた。では、原作小説はどうだろうか。個人的な感想に過ぎないが、映画以上に凄まじいものであった。注目すべきは、主人公の独特な語り口調の一人称表現だ。映画は視覚的な衝撃が大きかった反面、小説では主人公の内面を深ぼる形の一人称で描かれているため、実験の苦しさや変化が生々しいほどに伝わってくる。そういう意味では僕は映画以上に凄まじいと思っている。唯一無二の文章表現を堪能していただきたい。
 SFに興味関心が少しでもあるなら強く推したい名著を紹介する。『夏への扉〔新版〕』だ。読む前に押さえておくべき事前情報が一つだけある。それは、この作品が世間に発表されたのは、一九五六年だということだ。主人公は、タイムトラベルにより物語上の三十年後、二〇〇〇年へと送り込まれる。これ以上言葉はいらない。きっと感銘を受けるはずだ。
 ディストピア小説の金字塔である『一九八四年』。ジョージ・オーウェルの代表作だ。では、彼のもう一つの傑作『動物農場〔新訳版〕』をご存知だろうか。動物たちが農場を経営する人間たちに反旗を翻すところから始まるのだが、これが非常にパンチの効いた物語で、読んでいて胸が苦しくなる。笑えるようで、全く笑えない話なのだ。親しみやすく、恐ろしい物語である。
 生きるとは──僕はまれに哲学的なことを考えてしまうことがある。そんなときに必ず思い浮かべるのが『わたしを離さないで』だ。もし、この世に生を受けた瞬間から死ぬ瞬間まで、全てが決まっていたとしたら全力で人生と向き合えるだろうか。この問いの答えを探しながら、ノーベル文学賞受賞作家の代表作を一度は味わってほしい。
 名作とは、いつなんどき読まれても色褪せることがないから「名作」と呼ばれるのだろう。これから先、どれだけ多くの人に読まれたとしても、読んだことがない人が名作に触れるきっかけになれるように、堂々と紹介し続けていきたい。


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